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情報誌「瀬戸マーレ」

アートのすすめvol.22 個人コレクターの審美眼が生んだ名品揃いの美術館

個人が収集した作品を主体につくられた美術館は、その人のこだわりや好みが反映され、ひと味違う面白さがあります。今治出身の実業家・河野信一によって収集され、日本の文化と歴史の美を堪能できる今治市河野美術館。東洋古美術を愛した岡山の実業家・林原一郎の遺志をついで岡山市初の美術館として開館した林原美術館。どちらも審美眼の高さにうならされる名品にあふれ、作品が放つ美や息づかいに圧倒されます。

日本の多彩な美や文化に触れられる贅沢な空間 今治市河野美術館

今治市河野美術館
1968年に「河野信一記念文化館」として開館。1988年に改築され、現代美術も展示できるようになった

見るほどに味わいが深まる書、一瞬で画の世界に引き込まれる屏風…。今治市の中心地にある河野美術館を巡れば、コレクションの素晴らしさと多彩さに魅了されます。その数は一万点余りにのぼり、平安時代から現代にいたる画人、俳人、茶人、武将、政治家が遺した掛軸、屏風、古文書、原稿などが展示替えしながら披露されています。松尾芭蕉、小林一茶、北原白秋、山田耕筰といった著名人の書、茶席に掛ける禅語の書、源氏物語の写本、土佐派や狩野派の屏風など、見ごたえたっぷり。加えて掛軸の形状の違いや、屏風の表具の美を楽しめるなど展示に工夫が盛り込まれ、観る面白さが倍増します。
これらの作品を長年かけて収集した実業家の河野信一は、文化の振興を願い、出身地の今治市に寄贈しました。東京の河野邸にあった茶室も移築され、美を愛でながら豊かな気持ちに浸れます。

DATA

住所/愛媛県今治市旭町1-4-8
TEL/0898-23-3810
開館時間/9時〜17時 
休館日/月曜日(祝日の場合は原則翌日)、12月29日~翌年1月3日
料金/大人 300円、大学生150円、高校生以下または18歳未満無料

MAP

イベント情報

■館蔵品常設展「あらかると展」

期間/常設 時期により入れ替えします。 狩野常信の屏風、白蓮・龍介の短冊、与謝野寛・晶子の書、谷崎潤一郎のはがき、菊池容斎、歌舞伎役者・尾上梅幸、岡本一平の絵、山口淑子、猪熊弦一郎の生原稿など。

■館蔵品企画展「芭蕉にかかわる人たち」

期間/平成26年12月16日(火)~平成27年3月31日(火)
芭蕉の生誕370年にあわせ、芭蕉自筆の作品をはじめ、芭蕉の絵の師匠・英一蝶、芭蕉が影響を受けた貞門派、団林派の俳人など、芭蕉にかかわる人たちの軸物や刊本の絵や書を選抜し展示。

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大名家の伝来品や優れた東洋古美術の宝庫 林原美術館

岡山城内堀の西隣に堂々と構える長屋門をくぐれば、林原美術館です。岡山を代表する実業家・林原一郎は文化への造詣が深く、いずれ美術館を作ろうと東洋古美術を精力的に収集。岡山藩主池田家の大名道具も一括して引き受けました。
林原美術館のコレクションはこの2つを柱にしていて、国宝3件、重要文化財26件を含む名品の宝庫です。桃山時代の華やかな能装束をはじめ、国内で唯一現存を確認されている完本の「平家物語絵巻」などの絵画、国宝の「太刀 銘 吉房」といった刀剣や刀装具など、時間を忘れて見入ってしまいます。さらに最近確認された「石谷家文書」も戦国時代の研究に欠かせないものとして注目を集めています。展示室で開かれるコンサートなどのイベントも盛りだくさんで、何度訪れても感動が色あせることはありません。

DATA

住所/岡山県岡山市北区丸の内2-7-15
TEL/086-223-1733
開館時間/10時〜17時(入館は16:30まで)
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間(不定期、平成27年1月中旬から3月中旬は館蔵品の調査・研究のため休館)
  料金/企画展:一般500円、高校生300円、中学生以下無料 特別展・特別企画展:料金はその都度異なります。

MAP

イベント情報

■開館50周年記念特別展
 「林原美術館 All Stars~すべて魅せます
  国宝・重文全公開」

期間/平成27年1月12日(月・祝)まで
※12月22日~1月1日、4・5日休館
平成26年に開館50周年を迎えることを記念し、収蔵資料の中から国宝・重要文化財全29件をPARTⅠとPARTⅡに分けて展示。開催中のPARTⅡでは、刀剣類や「平家物語絵巻」の一部、初代岡山藩主池田光政の娘輝子が嫁ぐ際に調えられた「綾杉地獅子牡丹蒔絵婚礼調度」などを楽しめます。

■友の会会員限定熟覧会
 「作品を間近に見て、聞いて、味わおう!」

館蔵品の調査・研究のために休館となる平成27年1月中旬から3月中旬までの期間中に開催。友の会会員限定で、普段はガラス越しに展示されている資料を学芸員の解説を聞きながら身近に鑑賞できます。
※友の会の入会や限定熟覧会などの詳細は、電話でお問い合わせください。

 

せとうち美術館ネットワークとは

瀬戸内の美術館が相互にネットワークを形成して、地域全体としてのアートの魅力を発信する組織が「せとうち美術館ネットワーク」です。今回紹介した2つの美術館を含め、魅力ある53の美術館・博物館が参加しています。ネットワークでは「子どものアート感想文」募集などを通じて、教育普及活動にも力を尽くしています。
HP/http://www.jb-honshi.co.jp/museum/

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