- 建物に入った瞬間、異国に来たような感覚になる。オリエントについて少し勉強してから来館するとより面白い。
世界で初めて農耕・牧畜を行い、人類最古の文明を築いたオリエント。現在の西アジア、エジプト地域を指し、高度な文化はやがて北アフリカ、ヨーロッパ、アジアへ伝わっていきました。岡山市立オリエント美術館は、西アジア、エジプトなどの考古美術品約5000点を所蔵し、オリエントの歴史と文化を理解できる公立として国内唯一の専門美術館です。
希少なのは「有翼鷲頭精霊像浮彫(ゆうよくしゅうとうせいれいぞううきぼり)」。世界で初めて古代オリエントを統一したアッシリア帝国の宮殿内壁を飾っていたレリーフで、これに隣接するものが大英博物館などにわずかに存在するのみです。教会などの床を飾っていたモザイクや、シリアのパルミラ遺跡から出土したとされる彫刻もあり、それらを現地の風土を体感しながら見られるのがこの美術館の素晴らしいところです。薄暗い石造りの建物の中で、中央ホールの天窓や壁から自然光が差し込み、刻一刻移ろう光で空間や美術品の見え方が変化します。まるで現地に佇んでいるようで、異国に思いをはせ、普段感じられない世界をのぞける場所です。