ホーム > 瀬戸マーレ vol.8 > アートのすすめ vol.7
情報誌「瀬戸マーレ」

アートのすすめvol.7 画家が愛した自然や、感性に触れられる 日本画の巨匠・平山郁夫の芸術の原点を発見

現代を代表する日本画家・平山郁夫。その生地・瀬戸田町にある「平山郁夫美術館」には、幼少年期の作品から最近の作品までが貴重な資料とともに展示され、その魅力や足跡をあますところなくたどることができます。

和風の落ち着いた空間でゆったりと鑑賞

周囲の自然と調和する和風の外観と日本庭園
周囲の自然と調和する和風の外観と日本庭園

しまなみ海道のほぼ中央に位置する生口島。ここ瀬戸田町で生まれ育った日本画家・平山郁夫は、美しい瀬戸内の海や島々の緑に抱かれながら豊かな感性をはぐくみました。「平山郁夫美術館」はその生地にある美術館として、平山郁夫が呼吸していたのと同じ空気、匂い、景色を体感しながら作品を鑑賞できます。

「ゆったりと見てほしい」という画家の願いを受けて設計された切妻屋根の平屋建てのたたずまいは、落ち着いた雰囲気を醸しだし、広々とした空間に3つの展示室が設けられています。
第一展示室には、小学校低学年の頃に描かれたクレヨン画や、東京美術学校入学前に描かれた歴史画の模写などが展示され、小さな頃から絵を描くのが好きだったという原点を知ることができます。第二・第三展示室では企画展が開催され、多様な切り口で作品を楽しめます。

本画だけでなく下図や日記も公開 制作の裏側をのぞける

ミカン畑から帰ってくる3人の妹と弟(館長・写真右)を描いた「家路」
ミカン畑から帰ってくる3人の妹と弟(館長・写真右)を描いた「家路」

同館が収蔵しているのは初期作品から近作まで幅広い内容です。シルクロードシリーズの代表作「求法高僧東帰図」「絲綢の路 パミール高原を行く」、地元のベルカントホールの緞帳デザインとして描かれた「瀬戸田曼荼羅」、しまなみ海道の風景を描いた「しまなみ海道五十三次」など。 家族や近隣の人々、故郷の風景を描いた作品も多く、館外に出れば同じ風景を眺めることができます。

制作のための貴重なスケッチも見逃せません。
圧巻は、完成作品の本画と同じ大きさで作られた下絵の大下図。本画と見比べて、貴重な制作過程をのぞくことができます。
ほかにも読書記録を連ねた日記や、日本画の着色に使用される岩絵具の原石などを展示。ハイビジョンでは画業や生い立ちを振り返ることができます。

瀬戸田町の自然に肌で触れ、作品の世界観を体感

平山郁夫の人となりや歩みがわかる資料がいっぱい
平山郁夫の人となりや歩みがわかる資料がいっぱい

素晴らしい作品を鑑賞でき、そのうえ声をかけて時間が合えばいつでも実弟である館長や学芸員が、制作の裏側や興味深いエピソードを交えて作品解説をしてくれるのも楽しみの一つです。受付で用具一式を借りて、館内で作品の模写をすることもできます。

来館する際は、駐輪場が駐車場内にありますから、ぜひサイクリングや徒歩でしまなみ海道や瀬戸田町をゆっくり肌で感じてみてください。
5月頃には島内で、ミカンの花が満開になり、館内を一歩出ると甘い香りが漂うほど。そんな豊かな自然や街並みに触れると、平山郁夫がなぜこの地を愛したかがわかり、作品の世界観にどっぷり浸れます。

取材/せとうち美術館ネットワークアドバイザー 山木朝彦

TOPに戻る

PROFILE

平山郁夫

1930~2009年。広島県瀬戸田町生まれ。1952年、東京美術学校日本学科卒業。1953年、「家路」で院展初入選。
1998年、文化勲章受章。文化財保護にも積極的に取り組む。

展覧会情報

平山郁夫美術館では、2011年は「故郷とシルクロードをつなぐ文化の懸け橋」をテーマに展覧会が企画されます。
■特別展

「ふるさと瀬戸内とシルクロードⅠ」
しまなみ海道を描いたシリーズや、箱根・芦ノ湖成川美術館所蔵の大作「敦煌鳴沙・三危」「鄯善国妃子(楼蘭の王女)」、砂漠を行くらくだの代表作「流沙浄土変」などを展示。

期間/2011年3月19日(土)~7月14日(木) 会期中無休

DATA

住所/〒722-2413 広島県尾道市瀬戸田町沢200-2
TEL/0845(27)3800
開館時間/午前9時~午後5時(入館は4:30まで)
休館日/原則無休 ※展示替えなどのため、臨時に一部展示室がご覧いただけない場合があります。
料金/一般700円~、高・大学生400円、小・中学生200円
※企画展の内容によって料金が異なります。
アクセス/本州方面よりご利用の方…西瀬戸自動車道・生口島北ICより約10分
四国方面よりご利用の方…西瀬戸自動車道・生口島南ICより約15分
HP/http://www.hirayama-museum.or.jp/

平山郁夫美術館 アクセスマップ

せとうち美術館ネットワークとは

瀬戸内の美術館が相互にネットワークを形成して、地域全体としてのアートの魅力を発信する組織が「せとうち美術館ネットワーク」です。ネットワークでは「子どものアート感想文」募集などを通じて、教育普及活動にも力を尽くしています。

せとうち美術館ネットワークの詳細については、ホームページにてご紹介しています。
http://www.jb-honshi.co.jp/museum/

TOPに戻る