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情報誌「瀬戸マーレ」

あ!見つけた 瀬戸内の味【神戸淡路鳴門エリア】伝統

船場の「箱すし」が伝える 二寸六分の懐石は上方の味

かつて大阪の商家が並んだ地「船場」では、財力と審美眼を兼ね備えた旦那衆によって、
食文化や芸能が花開きました。押し寿司の「箱寿司」もその一つ。
上方文化の人形浄瑠璃とも縁が深く、今も人々に愛される味が受け継がれています。

大阪船場で生まれた上方らしい「箱寿司」

宝石が散りばめられたように美しい「箱寿司」。大阪の船場で、100年以上の間、親しまれてきた上方の味です。

元来、大阪の寿司は、江戸前のにぎり寿司とは異なって、「押し寿司」が主流でした。
シャリを箱に入れ、その名の通り、手で押して作ります。

この押し寿司を、「箱寿司」として、明治末期に今の形に完成させたのが、大阪市中央区淡路町に店を構える「吉野寿司」の三代目です。江戸時代より続く老舗店で、箱寿司のネタは、アナゴや小鯛などの高級魚。これが船場の旦那衆を中心に人気を呼び、現在に至っています。

箱寿司は、ほんのりと甘いシャリが、ぎゅっとつまって、見た目よりもボリューム大。ネタはもちろん、シャリの間に入った椎茸や昆布の味つけが上品で奥深く、上方ならではの風味を醸し出しています。

桧の木型に入れ、手で押して作り出される、上方伝統の味
桧の木型に入れ、手で押して作り出される、上方伝統の味

箱寿司と巻き寿司、ちらしなど、一度に味わえる「デラカルト」
箱寿司と巻き寿司、ちらしなど、一度に味わえる
「デラカルト」

芝居見物の弁当は丁稚の憧れの一品

芝居見物の幕間弁当としても好評の箱寿司。歌舞伎や文楽に落語など、今も観劇のお供に持参する人の姿が多く見られます。

大阪は、江戸時代より人形浄瑠璃が盛んで、庶民の間で人気がありました。吉野寿司と同じ淡路町にある御霊神社境内では、「御霊文楽座」が開かれ、盛んに上演されていたといいます。この時代の娯楽といえば、何はともあれ芝居見物。神社周囲には夜店もひしめき、料亭や小料理屋など、食文化も共に発達しました。

そんな時代の中で、箱寿司も一級のごちそうとして愛されてきました。味はもちろん見た目もきれいで、食べやすい形から、楽屋見舞いにも人気。高価なネタを用い、洗練された味は、商家に奉公する丁稚たちが「いつか食べたい…食べてやる!」と憧れる一品でもあったといいます。

御霊文楽座の石碑の残る、御霊神社
御霊文楽座の石碑の残る、御霊神社。吉野寿司は、文楽を機縁として、御霊神社とのゆかりが今も深い

明治17年から大正15年まで現存した「御霊文楽座」
明治17年から大正15年まで現存した「御霊文楽座」。客席数は600席ほどあり、文楽200年の歴史の中で、最も賑わった時代といわれています

二寸六分の懐石はシャリに六分の味

箱寿司は、二寸六分の懐石とも呼ばれます。見た目の繊細な美しさに加え、具材に煮物、焼きもの、酢の物と揃うこと、熟練された職人技が必要なことがその理由です。
吉野寿司6代目大将の橋本英男さんは「箱寿司は、仕込みに技が要りますし、手間も時間もかかります」と話します。

お米の量の多い箱寿司は、シャリに六分の味ともいいます。
それだけ米へのこだわりが強く、時間が経ってもおいしいようにと、硬質米を使用。噛みしめれば噛みしめるほど味が出る、近江の近州米を用いています。

3代目が作り上げた箱寿司を、今も守り続けるのは「変わる世に変わらぬ物を」をモットーとしているから。現在は7代目の卓児さんが、大阪らしい「まったりした、ええお味ですな」と称賛される伝統を継いでいます。

吉野寿司6代目大将の橋本英男さん
「船場は、古くは天下の台所、質素倹約の時代から、明治になって船場の商家の隆盛へ続き、職住一体で大金持ちが住んでいたという土地柄です」と、橋本英男さん
吉野寿司

船場本店では、お持ち帰りのほか、店内でいただくことも出来ます。座敷席、宴会場もあり。


住所/大阪府大阪市中央区淡路町3-4-14
TEL/06(6231)7181
営業時間/午前9時~午後9時
休み/土日祝
URL/http://www.yoshino-sushi.co.jp/

石碑吉野寿司店内
店の前には、人形浄瑠璃「冥途の飛脚」で描かれた淡路町の名を誇り、主人公、遊女・梅川(うめがわ)と飛脚屋・忠兵衛の名を刻んだ石碑が建てられています

老舗「本二鶴」で人気の巾着寿司

創業明治10年の「本二鶴」では、押し寿司の「巾着寿司」が人気です。黄金色の巾着から、昆布の紐をほどくと、焼き穴子にエビ、グリンピースが愛らしく顔をのぞかせて、食欲をそそられます。

同店では、現在6代目の伊藤宗嗣さんが活躍しています。鮮やかな手つきで、椎茸と海苔のちらし寿司を型に入れ、手早く押すと、型をコンとたたいて取り出し、薄焼き玉子で、あっという間に包んでいきます。手土産や、芝居の楽屋見舞いにも人気が高く、かつては浪速の喜劇王・藤山寛美さんも足繁く通ったとか。

気になる食べ方は、「丸かぶりをお勧めしています」と伊藤さん。元は料亭だったという自慢の味は、大阪の街に元気な風を運んできてくれそうです。

型から取り出したところ
型から取り出したところ。130年の伝統の味です

本二鶴

ボリュームたっぷりの巾着寿司。うす焼き玉子を折り返した形が上品です。包みを開いて、お箸でもどうぞ。


住所/大阪府大阪市中央区宗右衛門町5-25
TEL/06(6211)4576
営業時間/午後3時~深夜0時
休み/日曜・祝日
※持ち帰り専門店で、予約がベター。日時は相談に応じてもらえます

ボリュームたっぷりの巾着寿司
ボリュームたっぷりの巾着寿司
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おすすめ

●OSAKA STATION CITY(大阪ステーションシティ)

2011年5月4日(水・祝)、関西最大の交通拠点、JR大阪駅にてグランドオープン。
駅を挟んで、南北に2つのビルがオープンします。
JR大阪三越伊勢丹や、レストラン、映画館など注目が集まっています。


所在地/JR大阪駅直結
営業時間・休み/店舗によって異なります

OSAKA STATION CITY(大阪ステーションシティ)
●国立文楽劇場

2011年4月文楽公演は、4月2日(土)~24日(日)。午前11時~は「源平布引滝」ほか竹本源大夫と鶴澤藤蔵の襲名披露口上など、午後4時~は「碁太平記白石噺」「女殺油地獄」を上演予定です。(14日(木)より第1部と第2部が入替)


住所/大阪市中央区日本橋1-12-10
TEL/06(6212)2531(代表)

国立文楽劇場
●大阪歴史博物館

大阪の歴史を研究・紹介する博物館。
中近世のフロアでは、ミニチュア模型で船場の町を再現。
なにわの町人たちの生き生きとした暮らしぶりが、ジオラマから伝わってきます。


住所/大阪市中央区大手前4-1-32
TEL/06(6946)5728
営業時間/午前9時30分~午後5時、
金曜=~午後8時(共に入館は閉館の30分前まで)
休み/火曜・年末年始
料金/大人600円、高・大学生400円、中学生以下無料


大阪歴史博物館
●大阪城公園

大阪のシンボル、大阪城を中心に広がる、広大な都市型自然公園。都会のオアシスとして、市民から愛され、国外からの観光客も多く見られます。


所在地/大阪市中央区大阪城
問い合わせ/東部方面公園事務所=06(6941)1144

大阪城公園
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