宮島に行ってみたい。いつだったか、そうつぶやいたのを娘が覚えていた。「今度の週末に行ってみる?お父さんの好きな温泉もあるみたいよ」。歴史や史跡が好きな私に、娘がつき合ってくれるとは。気が変わらないうちにと、早速出かけることにした。
島へ渡る連絡船へ乗ろうと宮島口で車を預ける。出航してすぐ、水面の向こうに嚴島神社の大鳥居が近づいてきた。山の尾根は、観音さまの寝姿とも言われているが、確かにそう見えないこともない。さすが世界遺産、神秘的な光景だ。
桟橋から海沿いの道を歩くだけで心が躍る。船から見た大鳥居が間近に迫ってきた。海の青、松の緑に映えて美しい。そしていよいよ、神社へと進む…
海に浮かんでいるような建物。これが平清盛ゆかりの社殿か。廻廊へ足を踏み入れると、ギシギシと木の床が鳴った。水面の光が赤い天井に反射して、ゆらゆらとこちらまで揺れている気がしてくる…平安朝の貴族たちが行き交う廻廊。麗しい姫君が向こうから手を振っている…と思ったら、先を歩いていた我が娘ではないか。いつまでも子どもと思っていたのに、なぁ。
- 2012年の大河ドラマ「平清盛」で注目が高まっている嚴島神社。海上の廻廊もあでやかな寝殿造りの社殿は、平清盛によって造営されたと伝えられる。
安芸守に任命された清盛の夢枕で「嚴島の宮を造営すれば必ずや位階を極めるであろう」とお告げがあったといわれている