友人が最初に案内してくれたのは、不思議な形をした岩だった。真っ黒の巨大な岩板を、縦に何枚も重ねたような形で、まるでクリスタル・クラスターのように天に向かってそびえている。「岩じゃなくて、これは地質なの」と説明してもらう。タービダイト層というらしい。頭上高くから地球の息吹が聞こえてきそうな存在感がすごい。この地層に囲まれて、今、地球の胎内に戻ったことになるのだろうか、なんて感じた。
次に、東へ向かう海岸線の「乱礁遊歩道」を歩いていく。道沿いにはサボテンやウバメガシなど、亜熱帯植物があちこちに自生して、南国に来たという実感が湧いてきた。「ジオパークって岩ばっかりかと思ってたわ」と一人が言えば、「変わった植物が多いわね」と感心し、「あ!あの岩、人の顔みたい!」なんて一人が叫ぶ。
やがて、巨大な老木にたどりついた。からみつくような根の上に、四方八方に手を伸ばした「アコウの大木」が堂々とした姿で立っている。
室戸では海から激しい風が吹く。一年を通して吹きつける風の力は半端ではないらしい。その強風から身を守り、踏ん張って根を張るうちに、アコウはねじれたタコ足のようになっていった、という話だ。大地に根を張る姿は、どこか女たちのたくましさを表している気がする。「母は強し、女は気高し」なのだ。
そこから国道へ戻り、山側にある「御厨人窟」を訪ねた。若き日の弘法大師がここで生活しながら、悟りを開いたという洞窟だ。室戸から見る果てしない空と海が、空海の名の由来とも。現在より海岸線が迫っていたというから、波の上がる臨場感は凄まじかったことだろう。