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情報誌「瀬戸マーレ」

徳島・阿南海岸の夏休み

ブルーマリンの夢時間

徳島の南部にある室戸阿南海岸国定公園は、その澄んだ海の美しさで名を知られている。
自然の起伏に富んだ海岸線を車で走れば、潮風が呼んでいるようだ。
浜辺へ降りると、打ち寄せる波の光がウインクしてくれた。

竜宮城へワープする

徳島県南部の海は、四国の中でもことのほか美しい。竹ケ島にある海中観光船ブルーマリン号から、海のサンゴを眺めていると、それが本当だと分かる。ボクは一人でうなずいていた。

ここ海陽町は、ウミガメで知られる美波町を越え、海岸線を走る南阿波サンラインを過ぎた先の、県最南にある町だ。全国有数のサーフポイントやダイビングスポットがあるほど、海の透明度が高い。今、目の前でガラス越しに見ている海もまた、穏やかな波の下で輝いて、美しさを煌めかせている。

船は、さらに進んで行った。緑色のサンゴが群生している。目を凝らしていると、その間からまず青の、続いて黄、赤と熱帯魚の鮮やかな色がチラチラと見えてきた。おお!縞模様のヤツもいるぞ。マリンルックの魚じゃないか。

大小さまざまの魚たちは、口がとんがっていたり、尾ひれが二股になっていたりと見ていて飽きない。ときどき、クラゲがトボけた動きで通りすぎていく。海底にはナマコやウツボも見える。アカエイが隠れていたりすることもあるらしい。群れとなった魚たちがスピードを上げて横切っていった。右に左にダンスしているようにも見える。まるで、竜宮城に来たみたいだなあ。

カラフルな熱帯魚を見つけると、童心に戻ってしまう大人たち続出
カラフルな熱帯魚を見つけると、童心に戻ってしまう大人たち続出。季節によって魚の種類も様々で、真夏は100種類以上になる
海中観光船ブルーマリン

住所/徳島県海部郡海陽町宍喰浦字竹ケ島28-45
海洋自然博物館「マリンジャム」内
TEL/0884(76)3100
営業時間/1日8便で、午前9時~午後4時までの間、各1時間ごとに出航。ただし正午12時~の便は、日曜祝日のみ運航。出発5分前までにチケットを購入すること。季節・天候によって海の透明度は変わる
休航日/火曜
乗船料/大人1,800円、小学生900円。運航時間は約40分
URL/http://www.kaiyo-kankou.jp/index.php/marine-home
※マリンジャム内に「クマノミ館」もあり。入館料は大人300円、小学生以下200円

海中観光船ブルーマリン

海辺のペンションで、ごろり

宍喰を代表する景勝地、水床湾を訪れた。岬や入り江が入り組んでいる。大小さまざまの小島が浮かび、海の青さに点在する島の緑が映えて、瀬戸内海の多島美を思い出す。

今宵の宿「ペンションししくい」は、水床湾のほとりにあった。緑に囲まれたコテージのログハウスを見上げると山に来たのかと錯覚するが、振り返ればすぐそばに静かな入り江が広がっている。一目見て、すっかり気に入ってしまった。穏やかな波音も心地よい。

ビーチパラソルの下に座り、ぼんやりと海を眺める。白い砂浜が目にしみる。何もしなくていい、というぜいたくさ。こんなときこそアレじゃないか。暑さをひととき忘れる、冷えたビールをキュッと飲みほした。

「音楽をかけましょうか」とペンションのオーナー西口哲浩さん。本館の喫茶室兼プレイルームで、現地で購入したというハワイアン・ミュージックのCDを選んでもらう。ゆるやかなテンポの曲がハートにしみる。これ、いいなあ。アットホームな空気に安らいだ気分になって、うとうとと昼寝を楽しんだ。

ペンションの目前にあるプライベートビーチ
ペンションの目前にあるプライベートビーチ。白砂の遠浅で泳ぎやすい。本館の喫茶&プレイルームでは、コーヒーやチーズケーキもあり
ペンションししくい

住所/徳島県海部郡海陽町宍喰浦字古目84-18
TEL/0884(76)2130
営業時間/喫茶&プレイルームにて立ち寄り可
昼食=正午12時~午後1時30分、喫茶=~午後5時
休み/なし
料金/●本館(全室フロントオーシャンビュー、1~5名)
1泊2食付、大人9,000円~、小学生7,000円~
●コテージ(全5棟、2~8名。夏季は4名~)
1泊2食付、大人11,000円~、小学生9,000円~
※全室3歳以下3,000円~5,000円
※夏季、連休などは特別料金で2,000円アップ。バーベキューは別料金
URL/http://www.p-shishikui.com

ペンションししくい
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出羽島へタイムトリップ

出羽島は、牟岐港から南へ3.7㎞ほどの沖合に浮かぶ島。
周囲4㎞の小さな島では、昭和にタイムトリップしたような漁港と家並みが残っている。
『向う出羽島なつかし処 船に蝶々もついて行く』と童謡詩人・野口雨情がうたった情景は、
ノスタルジーにあふれていた。その懐に紺碧の海をはべらせた、ここは小さな王国だ。

ノスタルジックな島の朝

翌日は、出羽島を目指した。牟岐駅近くの港から船で15分、波しぶきを上げて沖に進むと、石積みの防波堤が見えてきた。出羽島へとたどり着く。朝の8時半だった。

阿南海岸に数ある島のなかでも、特にノスタルジーを誘う島。明治から昭和初期の建物も現存しており、これだけまとまった漁村集落が残るところは大変珍しいと言われている。

港には、幾台もの漁船が停泊していた。早朝に出航した漁師さんたちが少しずつ帰港している。何がとれたのかと尋ねてみるが、見せてもらったのは、ほとんど空っぽの箱。魚は牟岐港で出荷して、自宅の分のみ持ち帰るようだ。網の手入れをしている人もいる。餌のエビを手にしていた漁師さんに、「それ、はえ縄ですか」と聞いてみると、「延べ縄だよ。海底に沈めてね、春秋にはタイも釣れるよ」と教えてくれた。まさにエビでタイを釣るわけだ。

民家の集落へと歩けば、軒先が同じ高さで並んでいる。島独特のミセ造りと呼ばれる縁台で、老夫婦が並んで座ってやはり網の手入れをしていた。きっと何年も変わらずこうやって暮らしてきたのだろう。仲睦まじい様子に甘やかな気持ちがこみ上げてきた。

出羽島港を一望
出羽島港を一望。港口には大波止「石積みの防波堤」があり、これは明治4年頃に海岸の丸石などを建材として築造されたもの
連絡船「大生丸(おいけまる)」

一日往復6便。牟岐港発=午前7時、8時20分、11時、午後1時30分、4時、5時20分
出羽島港発=午前6時30分、7時25分、9時、午後12時20分、3時、4時35分
乗船料は、片道大人=220円、小人=110円(8月~9月30日は、各10円アップ)
乗船時間は約15分。なお、出羽島へ車の乗り入れはできないので、牟岐港に駐車場(10台)あり

島巡りで見つけたものは

出羽島名物、それはトコロテンの材料になる天草だ。春から初夏にかけて海岸の岩場に流れついてくる。

そう教えてくれたのは、防波堤の上で出会った原田素子さん。何やら大きな袋を持って「もうすぐ小学生たちが島にやってくるのよ。トコロテンの体験学習をするから、その準備でね」。袋の中身は薄いベージュ色の天草。初めは紅色をしているという。「色がね、何度も洗っていくうちに抜けてくるの。これを煮詰めて、透明のトコロテンにするのよ」。気さくに話をしてくれる、島の人はあたたかい。

集落をぶらついていると、おしゃれな戸口に行き当たった。巻き貝が飾られた扉がどことなく洗練されていて、OPENと書いたプレートが下がっている。ここが出羽島帆布工房だ。

京都から移住して一年になるという佐々木敦生さんが、帆布のオリジナルバックを作っている。「ここは工房にしようと改築しました。海が大好きなので、帆布で何か作れないかと考えたんです。島オリジナルのバックを通じて、出羽島の魅力を全国に伝えられたら」と、はにかんだ。

とったばかりの天草を干しているところ
とったばかりの天草を干しているところ。岩から採取した天草は、まず並べて干す。ゴミを取り除き、水で洗い、再び干して乾燥させる。この行程を5回ほど繰り返すと、紅色だった天草が白くなってくる
出羽島帆布工房

バックの持ち手に漁船の係留ロープを用いているのが特徴。ロゴや内ポケットの柄も可愛い、ベーシックな白のトートバック4,200円、赤のショルダー7,500円、ミニバック3,000円。北海道から九州まで日本全国から注文が殺到中。


住所/徳島県海部郡牟岐町出羽島20-4
TEL/090(6248)9666

出羽島帆布工房
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島ならではの海レジャー

出羽島に1軒だけあるゲストハウスでは、海レジャーをサポートしてくれる。
出羽島の周囲にある無人島へ、秘宝探検のごとく繰り出した。
見つけたのは、エメラルドグリーンに光る無人島の小さな入り江。
出羽島で体験した、とびきりの夏。

多島の恵みを目前にする

「出羽島の周囲には、他にも小さな島が色々あるんです」と話すのは、島唯一の宿泊施設、出羽島ゲストハウスの西和彦さん。大阪から移住した、やはり海大好き人間だ。

離島なら、出羽島行きの船からも点在する姿を目にしていた。その島へ行ってみようとボートクルージングをお願いする。青空のもと、ライフジャケットを着て出発した。

ボートの上から、あらためて出羽島を眺める。「出羽島港にある石碑をご覧になりましたか?『舟で廻れば出羽島一里 島にゃ大池 蛇の枕』。童謡詩人の野口雨情が島を訪れて作った歌で、島の見どころなんですよ」と西さん。さらに「ここから室戸岬が見える日もあります。東には津島、大島などの無人島、南は太平洋、北は牟岐や浅川の海岸と、自然しか目に入らないのが気に入ってます」と島の魅力を語る姿は誇らしげだ。

津島に近づき、海上でエンジンを止める。運が良ければウミガメが顔を出すことがあるそうだ。「信じてもらえないこともあるんですけど」そう話している先から、ちゃぷん、と甲羅がもぐる姿を目にした。おお!これって、すごいラッキーだ! 

驚くほど透き通った大島の入り江
驚くほど透き通った大島の入り江。周辺は釣りのメッカとしても名高い
出羽島ゲストハウス

住所/徳島県海部郡牟岐町出羽島45‐2
TEL/090(7574)7898、0884(72)3510
休み/不定(3日前までに要予約)
料金/1泊2食付き5,500円、小学生以下4,500円。1名~5名まで。体験料金は、港釣り2,000円、遊覧(ボートクルージング)4,000円~、魚料理体験1,500円、トコロテン作り1,500円、島散策1,500円、シュノーケリング4,000円。3日前までに要予約。
URL/http://tebajimass.blogspot.jp/

出羽島ゲストハウス

秘密のパラダイス

「大島まで行きましょう。ちょっとスピードを上げますね」と西さん。

波しぶきがはじけ飛んでいく。周囲は海があるのみ。本島も離島もすごく遠くに見える。不意に、大海原に投げ出されたような心もとなさを感じた。海の上でちっぽけな人間が一人。だが、そう思ううちに不思議に心がやわらかくなってくる。体の力が抜けていくのが分かる・・・気持ちいい!これが自然に抱かれるってことかもしれない。

やがて、目前の島がどんどん大きくなって、大島に近づいた。

「おお!」楽園のごとくエメラルドグリーンに光る、小さな浜辺。岩場の間にひっそりと、その入り江は佇んでいた。

大島は切り立った奇岩も多く、人が近づくことを望んでいない気もする。それがかえって、こんなにキレイな海を守っているのかもしれない。

翡翠色の波の下で青や赤の熱帯魚が泳いでいるのが、船の上からでも目にできる。見知らぬ国の、誰も知らないリゾートへやってきた…。

すごい、すごいぞ、出羽島!

津島、小津島を左右に、その奥、中央に見える大島
津島、小津島を左右に、その奥、中央に見える大島。神々しさも感じられる光景を、初めて島に来たときに目にした西さん。「聖域のように見えて」と、その強い印象が出羽島移住のきっかけになったそう

みどころ

●竹ケ島シーカヤック

穏やかな海のシーカヤック。竹ケ島コースのほか、多島美の水床湾コースもあり。


住所/徳島県海部郡海陽町宍喰浦字竹ケ島28-45 海洋自然博物館「マリンジャム」内
TEL/0884(76)1401
時間/午前10時~正午、午後2時~4時 料金/竹ケ島コース=1人乗用2,500円、
2人乗用4,000円。水床湾コース=1人乗用3,000円、2人乗用5,000円
休み/火曜
URL/http://www.bluemarine.v-town.jp/

竹ケ島シーカヤック
●SUP(スタンダップパドルボード)

ロングボードの上に立ち、パドルで水面を漕いで水面散歩する、パドルボード。「ペンションししくい」駐車場がツアーの集合場所。要予約。


住所/徳島県海部郡海陽町宍喰浦字古目84-18  TEL/050(5536)8717
開催時間/1:午前9時30分~11時30分、2:午後4時~6時。開始15分前に「ペンションししくい」集合。
休み/不定
料金/一人6,000円。1名で参加の場合+1,000円。ウエットスーツレンタルあり(別途有料)
URL/http://www.courant-marin.jp/trip_other/trip_other_sup.html

SUP(スタンダップパドルボード)
●クラブノアむぎ(ダイビング・シュノーケリング)

牟岐町にあるダイビングサービス。ファンダイブから体験ダイビングまで可能。大島への無人島体験ダイビングや、シュノーケリング、クルージングもあり。要予約。


住所/徳島県海部郡牟岐町灘下浜辺198-1
TEL/0884(74)0100
営業時間/問い合わせ=午前9時~午後7時 料金/体験ダイビング13,500円~
休み/不定
URL/http://www.tk2.nmt.ne.jp/~noah2000/

クラブノアむぎ(ダイビング・シュノーケリング)
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