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情報誌「瀬戸マーレ」

ほぃさぁー!神楽にときめく広島

神話を描いたパワフルな舞

広島県安芸高田市には、22もの神楽団があり、
土地の人々によって今も受け継がれている。古事記編纂1300年のこの秋に、
懐かしい匂いのする広島北部の神楽門前湯治村で、
日本の古い神話や物語をひも解く、迫力ある舞台を体感した。

郷土芸能「神楽」鑑賞へ

広島北部の山間地域では、郷土神楽が人々の生活に深く根付いている。祭事に限らず、週末に「神楽」を気軽に見ることができると知り、安芸高田市へやって来た。ここ、神楽門前湯治村では22もの神楽団が、交代で舞台を見せてくれるのだ。笛に太鼓のお囃子に、面をつけて舞う「神楽」。秋のエンターテインメントにぴったりではないか。

神楽は、神さまへの奉納舞楽。古事記・日本書紀で描かれた女神の舞が起源といわれ、平安時代には宮中文化として貴族にもてはやされた。その後、庶民が楽しむようになり、時代を経て今に伝わっている。最近では、若い人たちの活躍も目覚ましいと聞くので、ことさら楽しみだ。

神楽で面をつけるようになったのは能の影響
神楽で面をつけるようになったのは能の影響。演目や所作も能から取り入れられた

オロチ退治の舞にドキドキ

日曜の午後。湯治村にある神楽ドームで、ボクは舞台が始まるのを待っていた。昔ながらの桝席に観客がひしめいている。演目は「八岐大蛇※」。スサノオ神によるオロチ退治、記紀神話で有名な物語だ。

華やかなお囃子の音色に合わせて、スサノオが軽快に舞い始めた。翁と媼のユーモラスな掛け合いに、お姫さまの優美な所作も美しく、神楽の世界へ引き込まれていく。

クライマックスはスサノオが8体のオロチと戦うシーン。剣をふるうスサノオに、火を吐いて立ち向かうオロチたち。太鼓や手打ち鉦のリズムが速くなってくる。笛の音もスピードアップし、見ているボクの心も盛り上がってくる。「ほぃさぁー!」と掛け声が上がる。オロチの首が次々と切り落とされ、グッと手を握りしめた。拍手が沸き起こる。まさに血湧き肉躍る、迫力の舞台だ。

終演後、楽屋にお邪魔して衣装を見せてもらった。間近で拝見すると、その豪華さにあらためて驚く。姫の衣装を肩にかけてもらうと、まるで畳を背負っているような感覚。これを着て、あんなにもたおやかに舞うなんて。広島の神楽パワーを、まさに肌で感じた瞬間だった。

※八岐大蛇:「八岐大蛇」では、高天原を追われたスサノオが出雲の国に降り立つと、嘆き悲しむ老夫婦と一人の姫に出会う。理由を聞けば、八つの頭をもつオロチが毎年姫を生贄にさらっており、最後の一人となった奇稲田姫を差し出そうとしていたのだった。そこでスサノオは、酒に毒を混ぜてオロチに飲ませ、眠ったところを剣でやっつける、という筋立て。

「神楽ドーム」でスサノオ神がオロチに剣を振るう見せ場
「神楽ドーム」でスサノオ神がオロチに剣を振るう見せ場。安芸高田市の神楽は出雲神楽の流れをくむもので、広島に伝わったのは江戸後期
神楽ドーム(神楽門前湯治村内)

住所/広島県安芸高田市美土里町本郷4627
TEL/0826(54)0888(代)
【ひろしま安芸高田神楽上演】
1.神楽ドーム定期公演昼神楽(入替なし)
日時/4月~11月の日曜・祝日午後12時30分~、2時30分~の2演目。
料金/大人700円、小中学生300円。ただし1回目終了後の入場は大人500円、小中学生200円

2.かむくら座夜神楽(同村内)
日時/金・土曜午後8時30分~。但し、12月~3月の金曜は休み(終了後、衣装試着体験、記念撮影タイムあり)
料金/大人500円、小中学生200円

3.かむくら座昼神楽(入替制)
日時/12月~3月の日曜・祝日午前11時30分~、午後2時~。
料金/2回通し券=大人700円、小中学生300円。1回券=大人500円、小中学生200円
※上演はいずれも30~60分。
URL/http://www.kaguramonzentoujimura.com

神楽ドーム
神楽ドーム

かむくら座
かむくら座
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懐かしの異空間へ迷い込む

神楽ドームから温泉に向かって続く道は、神楽門前湯治村のメインストリート。
不思議な世界へ迷い込んだような、郷愁を誘う軒並みをさまよってみた。

下駄の音が似合う道

山の緑に囲まれた神楽門前湯治村では、昔懐かしい木造家屋が軒を連ねている。格子戸の旅籠に駄菓子屋さん、団子屋さんなど、日本情緒でいっぱいだ。神楽のお囃子がBGMに流され、祭りのワクワク感に浸ることもできる。カラコロと下駄を鳴らして歩けば、道の脇からひょっこり異形の何かが飛び出してきそうだ。

そう思いながら通りの店を冷やかして歩いていると、小腹がすいてきた。店頭に並ぶお土産品も魅力的だ。

安芸高田市産の大豆「あきしろめ」を用いた岩豆腐に、近くの山奥で育てられた桑田米のお酒。郷土性の強いものに惹かれてしまう。極めつけは、夜叉うどん。鬼より辛いと伝わると聞けば、食べてみないわけにはいかない。お店の人の親しみやすい笑顔にも釣られてしまう。参ったなあ。

食事処の「ふくすけ」では、山里の妙味、ワニの刺身をいただいた。なめらかな食感に、さっぱりした風味。ワニといっても爬虫類のあれではなく、サメのことをワニと呼ぶのだ。備北地方の郷土料理である。鹿肉のタタキも珍しくて、喜んで口に入れた。

ドームのそばには「体験工房」があり、神楽面の絵付けや、わら細工に竹細工などを楽しめる。面の種類は、えびす大黒からひょっとこまであったが、ここはやっぱり般若面だろうか。これ、部屋に飾ると魔除けになりそうだな。

夕暮れの門前町は、提灯の火がともり、ひときわ美しく見える
夕暮れの門前町は、提灯の火がともり、ひときわ美しく見える。浴衣姿のお客が往来して風情満点

「駄菓子めじろや」どれ選ぼ?
「駄菓子めじろや」どれ選ぼ?

湯治村のファンタジー

この湯治村では、言い伝えをもとにした「屋号ばなし」がいくつもあり、村のコンセプトになっているのが面白い。話をたどって店を散策すると、楽しさも倍増するようだ。

例えば、ラドン温泉の「岩戸屋」はその昔、スサノオに成敗されたオロチが、ここから湧き出す水で傷を癒したのだという。岩を一つ剥がして湧いた水だったことから、村人たちは「岩戸湯」と呼ぶようになった。

また、その昔「正直ふくすけ」と呼ばれる美土里福助さんは、ホトトギスのお告げによって山中の淵にヤマメを見つけ、その年の神楽を無事に行うことができたといわれている。以後、ヤマメはふくすけの名物料理になったそうだ。

そんな物語に描かれたような、のどかな光景が目の前にある。旅籠の浴衣に身を包んだ人々が満足げに歩いている。通りを楽しそうに走りまわる子どもたち。見知らぬ土地が、ふるさとのように感じられて心がほどけてきた。さて、そろそろ温泉へ入りに行くとしよう。

何かが始まりそうな予感のする、神楽門前湯治村の表御門
何かが始まりそうな予感のする、神楽門前湯治村の表御門
神楽門前湯治村

住所/広島県安芸高田市美土里町本郷4627
TEL/0826(54)0888(代)
営業時間/店舗により異なる
URL/http://www.kaguramonzentoujimura.com


お食事処 ふくすけ

営業時間/午前11時~午後2時、5時~9時(L.O.8時30分)


体験工房

営業時間/午前10時~午後4時。神楽面の絵付けなど各工房、事前に要予約
料金/天狗面2,500円~、般若面3,500円~ほか


うどん・そば 権兵衛

営業時間/午前11時~午後10時(L.O.9時40分)、金・土曜は~午後11時(L.O.10時40分)

体験工房では、家族みんなで面の絵付けに夢中
体験工房では、家族みんなで面の絵付けに夢中。丁寧に指導してもらえるので安心

権兵衛の夜叉うどん
権兵衛の夜叉うどん
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天然温泉と旅籠でほっこり

天然ラドン温泉「岩戸屋」で、豊かなお湯のぬくもりに寛いだ。
旅籠でゆっくりと時を過ごして、体の元気を呼び覚まそう。

歌いたくなる心地よさ

いい湯とはこのことだ。思わず鼻唄を口ずさみたくなる。天然ラドン温泉「岩戸屋」で、まずは大浴場に浸かってから、露天風呂、寝湯に蒸気サウナ、薬湯と順番に巡ったあと、ふたたび露天へ戻った。ここには打たせ湯もあるので試してみることに。立って湯を浴びていると、山の景色がよく見えていい。

飽きずに何度も湯に入る。なめらかなお湯が肌を優しく包み込み、体の芯まで温まる。山から吹いてくる風も気持ちいいぞ。傷を癒したオロチも、こんな気分だったんだろうか。古代ロマンを心に描きながら、暮れゆく秋の空と虫の音と共に楽しんだ。

居心地のよい露天風呂
居心地のよい露天風呂。周辺の山には岩が多くあり、露天風呂に使われている岩は全て近隣の山にあったもので組まれている。館内ではほかに寝湯や蒸気サウナ、薬湯、風呂上がりにくつろげる休憩室もあり

のんびり部屋食の旅籠屋

温泉を存分に堪能したあとは、今宵の宿、旅籠「千両萬両」へ。食事処ふくすけの2階にあるので夕食が楽しみだ。季節の和会席コースで、地元食材のごちそうである。見た目にも色鮮やかで豪勢な内容だ。

野菜は地元のもので、和え物に焼き物、茶そばに添えられていたりと、新鮮な味がうれしい。ナスの肉味噌田楽はとろりと口中でほぐれた。豆腐は福助トーフ店のもの。お造りも鯛を中心にいただく。食べごたえたっぷりの鯨カツに、牛肉の陶板焼きは文句なし、だ。

もう食べられないとお腹をさする。木のぬくもりを感じる部屋で、いい夢が見られそうだ。よし、明日は早起きして朝風呂に入るぞ。

山里の幸を味わえる、季節の和会席コース(イメージ)
山里の幸を味わえる、季節の和会席コース(イメージ)。「翠の間」等では、部屋でいただくことができる
天然ラドン温泉 岩戸屋

営業時間/日帰り利用=午前10時~午後9時30分(受付は9時まで)
宿泊利用=チェックイン~深夜0時、午前6時~8時。但し、午後9時30分~10時は、清掃・男女入れ替え作業のため入浴不可。季節によって臨時休業、時間変更あり


料金/大人700円、こども(4才~小学生)400円、幼児無料。65才以上の高齢者と身障者は600円。タオル別売り


旅籠 千両萬両

料金/2名1室で1泊2食付き12,000円~。このほか、湯治宿泊スタイルとして自炊もできる「山や」「里や」「やまや別館」もあり。2名1室の1泊素泊り5,000円~


※問い合わせは全て神楽門前湯治村へ 0826(54)0888

旅情たっぷりの旅籠「千両萬両」
旅情たっぷりの旅籠「千両萬両」

みどころ

広島に来たらやっぱりお好み焼き!
●ひろしまお好み物語駅前ひろば

「食べてきんさい」「待っときんさい。焼いてあげるけん」そんな声の飛び交う、ひろしまお好み物語「駅前ひろば」。広島駅前のビルの1フロアに15店舗が大集合した、活気ある屋台スタイルが心憎い演出だ。豊富な具材とパリッと焼き上がる生麺、キャベツの甘みに香ばしいソースがたまらない。イカ天やチーズなどのトッピングも多彩だ。広島ならではのお好み焼きを、たっぷりとご堪能あれ。


住所/広島県広島市南区松原町10-1 広島フルフォーカスビル6F
TEL/082(568)7890
営業時間/午前10時~午後11時
休み/なし
URL/http://www.ekimae-hiroba.jp

ひろしまお好み物語駅前ひろば
●BOSS

名物店長が人気のBOSSには、ひっきりなしに人が訪れる。広島の食材にこだわって、特別メニューも多彩にそろう。
「月見風お好み焼き(1,200円)」は、豚バラや天かす、生めんに卵と、お好み焼きの基本を忠実に守りながら、技をさりげなく駆使した一品だ。最後にのせる温泉玉子と牡蠣しょう油が利いていて、思わずうなってしまう味わい。

月見風お好み焼き(1,200円)
●電光石火

若いスタッフによる元気いっぱいの店、電光石火。店名と同じメニューの「電光石火(1,050円)」は、オムレツのように包んだ卵の中に、お好み焼きが入っている。フワフワ食感の卵と、具材には大葉やネギがアクセント。もちろん焼きそばにイカ天が入っているのもポイントが高い。ボリューム満点なので、ハーフサイズも作ってくれるのがうれしい。

電光石火(1,050円)
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