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情報誌「瀬戸マーレ」

ビバ盆栽!讃岐が生んだ日本の宝

香川県の松盆栽はニッポンイチ

うどんで名高い香川県。実はもう一つの顔を持つ。
松の盆栽生産量、日本一を誇るのだ。
高松市西部の鬼無町では、明治の頃から黒松の栽培が盛んに行われている。
海外での人気も高い、香川のBONSAIを求めて歩いた。

讃岐うどんで盆栽スタンプラリー

香川に来たなら、まずはうどんだ。セルフ形式の讃岐うどんを、お腹いっぱい食べる幸せ。いくら食べても飽きないのは、かけ、ぶっかけ、釜揚げなど、食べ方も様々にあるからだろうか。エビや野菜の天ぷらなど、自分でトッピングするのも楽しい。

「中西うどん」で満腹ゴキゲン、店を出ると緑の松が目に飛び込んだ。これはもしかして、あの盆栽?だが、なぜうどん屋に置いてあるのだろう。

よく見てみると『うどん盆栽スタンプラリー』と記されている。高松市内のうどん店に、盆栽が飾られているようだ。香川県は松盆栽の生産が日本一だという。知らなかった!

この盆栽、小さいながら立派な松の木だ。黒松、と記されている。他にも種類があるのだろうか。盆栽について、もっと知りたくなってきた。

中西うどんの「かけ」は一玉230円~
中西うどんの「かけ」は一玉230円~。セルフ形式で、天ぷらほか、おでんやいなりもプラスできる。座敷席もあって家族連れにうれしい
うどん盆栽スタンプラリー

高松市内のうどん店、約60店舗にて実施。
期間は、2012年10月1日(月)~2013年2月28日(木)。スタンプの数に応じて、抽選により「盆栽」をプレゼント!
応募用紙は「うどん盆栽スタンプラリー・食べ歩きMAP」に付帯
(設置場所:高松市観光交流課・観光案内所等)

うどん盆栽スタンプラリー

盆栽の里、鬼無町へゴー

盆栽園が多く点在する高松市鬼無町に赴いた。山と畑に囲まれた牧歌的な雰囲気だ。よく見れば、野菜ではなく松が畑に植わっているではないか。

香川の盆栽の歴史は江戸後期にさかのぼる。瀬戸内海の島々や沿岸の山に自生する松を掘り、鉢植えにしたのが始まりだ。稲作には不適切だった土地も、水はけの良さから松の栽培には最適であったという。松の盆栽の生産は、今も日本一なのだ。

盆栽通り、と看板のある道沿いで、「神髙松寿園」にお邪魔した。森のごとく、あるいは海の波のごとく、盆栽がずらりと並んでいる。大きい松にまず目がいった。黒松のほかに五葉松や錦松がある。堂々とした姿に感心しつつ、もしも自分が持つならと、小さな松に目を落とした。しかし何を基準に選んでよいやら。迷っていると、「盆栽の基本の形は三角形です。枝が先へ行くほど細いものが良い盆栽ですよ」と、園主の神髙恵二さんが教えてくれた。

小さい鉢で、大きな松の木を表現する盆栽は、限りなく自然へと近づける究極の人工美。10年ものから100年、200年という盆栽もある。じっと見つめていると、時代を超えて松が語りかけてくるようだ。

鬼無町のあちこちで見かける盆栽畑(花澤明春園)
鬼無町のあちこちで見かける盆栽畑(花澤明春園)。全国でも名木といわれる松のほとんどが、瀬戸内海一体の岩山より産出されたもの
神髙松寿園

住所/香川県高松市鬼無町山口428-1 TEL/087(881)2852
営業時間/午前9時~午後4時 休み/なし
URL/http://www.kinashi-bonsai.com/shojuen/
※園内では、針かけの体験もできる。まずは手頃な鉢から育ててみるのもいい。針かけ体験は約90分、3,000円~、要予約。詳細は問い合わせを

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もっと身近に感じるBONSAI

伝統の盆栽に触れたあとは、若手の盆栽家を訪ねてみた。
若い女性や外国人による作品を目にすると、盆栽がぐっと身近に感じられる。
新しい盆栽の登場は、讃岐の伝統に広がりと深みをもたらすに違いない。

時代に合った感性の発露

次に、業界ではまだ珍しい、若い女性の盆栽家を訪ねた。花澤明春園の花澤美智子さんは、苔玉を用いた松の盆栽や、山野草の鉢など、伝統にとらわれない新しい作品を生み出している。苔玉の上の黒松は、アラビア数字やハート型、星型だ。1から9まで並ぶ姿も愛らしい。

山野草の盆栽は、父である3代目園主の登人さんから始めたもの。美智子さんは、それをさらに現代の感性で進化させたのだ。「父から習った盆栽を、みなさんと一緒に楽しめたら」と、盆栽の指導にも力を入れている。

盆栽への親近感が増してきた。ボクも一つ手にしたい。好きな数字にしようか、それともハートの形がいいか、迷うのも楽しいなあ。

数字の形が目をひく苔玉の盆栽
数字の形が目をひく苔玉の盆栽。ほかにハート型や星型も作り、ギフトに最適と人気が高い
花澤明春園

住所/香川県高松市鬼無町鬼無748-3 TEL/087(881)2847
営業時間/午前9時~午後4時 休み/不定
URL/http://www.hanazawa-bonsai.com/
※月1回、盆栽教室「草木で遊ぶ小さな風景」を開催。1年かけて1鉢を作る。1日だけの飛び入り参加も可能。要予約。
日時・内容は問い合わせを。HPより通販も可

粋でモダンなBONSAI

木田郡三木町氷上にフランス人の盆栽家が住んでいると聞き、車を走らせた。

ザビエ・ブルセさんが、フレンドリーに出迎えてくれる。「ふつう黒松は、男性的な強い線にする。それを女性的な赤松のように、柔らかいラインにしました」と、樹齢20年の松の盆栽を見せてもらった。日本人にはない発想だ。そこが面白い。「本来なら使わない植物や器を用いることで、若い人の盆栽への入り口になればいいと思う。別物です」。

子どもの頃から木が大好きだったザビエさん。小学生のときにプレゼントされた盆栽を見て、「本物の木と同じエネルギーを出している!」と感激したことが、盆栽家としての原点だという。伝統ある盆栽をどこまでも尊重してこそ、辿り着いた新しいカタチ。

フランスの少年の思いは、今も静かに燃えている。

「海外で若者に人気の高い盆栽が、日本でももっと広まってほしい」とザビエさん
「海外で若者に人気の高い盆栽が、日本でももっと広まってほしい」とザビエさん。フランスで園芸と生物学を学び、盆栽好きが高じて日本へ留学。東京の盆栽家に弟子入りした後、松の本場・香川で修業を重ねた。現在は「zazu」にて、盆栽の販売や盆栽教室など多彩に活躍中
zazu(ザズ)

住所/香川県木田郡三木町氷上1970-5 TEL/087(816)8833
営業時間/午前9時~午後5時 休み/月曜、第3日曜日
URL/http://zazubonsai.blogspot.jp/ ※盆栽の展示販売ほか、カフェも併設

栗林公園にて多彩な松を愛でる

盆栽の魅力をもっと感じたい。そう思ったボクは、松の名園である栗林公園を訪れることにした。380年の歴史を持つ大名庭園で、1,400本もの松があるのだという。

公園入口で、ガイドさんに「松をテーマに」とお願いしてみた。「園内の95%が黒松です」とガイドさん。1肌、2振り、3姿といって、幹の肌、枝ぶり、全体の形の3点が松を見るポイントだという。年月を経た幹が、亀甲模様になって初めて、松は一人前になるのだと、教えてもらった。

池と築山を配した回遊式庭園の松を、あらためて眺めてみる。「箱松」や「夫婦松」など、その枝ぶりや姿形のなかに、教わったばかりの特徴を見つけてうれしくなった。究極の盆栽といわれる美しさの裏に、どれほどの人の手と時間が積み重なっているのか。讃岐の匠の技は素晴らしい。江戸から続く文化への審美眼を、少し持てた気がするなあ。

亀甲模様が見事
亀甲模様が見事。松のほか、栗林公園全体で172種3万2千本の植物が四季を彩る
栗林公園

住所/香川県高松市栗林町1-20-16 TEL/087(833)7411
営業時間/午前5時30分~午後7時(季節変動あり)
休み/なし 料金/入園料400円
※ガイド料は無料。チケット売り場横のガイド詰所で依頼を
URL/http://ritsuringarden.jp/
※南湖周遊千秋丸の乗船料は大人600円、小中学生300円。3歳未満は乗船不可

園内には、6つの池と13の築山が配され、南湖周遊千秋丸では30分の周遊を楽しめる
高松産業観光

鬼無盆栽センターと栗林公園を巡る「盆栽と松を知る」観光モデルコースが、10人より催行。詳細は問い合わせを
TEL/高松商工会議所 087(825)3505
URL/http://www.sanukibito.com

みどころ

同日開催の盆栽イベントで盛り上がろう
●第25回グリーンフェスタ国分寺

盆栽教室から販売ほか、子どもみこし奉納やもちなげ、国分寺名物どじょう汁の販売も。
場所/香川県高松市国分町新名2069-1「橘ノ丘総合運動公園」 TEL/事務局 087(874)1215
日時/2012年10月19日(金)~21日(日)、午前9時~午後5時

●第30回きなし盆栽植木まつり

組合員生産盆栽・植木等即売から、盆栽の名品展、オークションまで。診断コーナー、針金かけ体験コーナー、うどんコーナーなど多数出店を予定。
場所/香川県高松市鬼無町山口333-1「香川県鬼無植木盆栽センター」 TEL/087(882)4091
日時/2012年10月19日(金)~21日(日)、午前9時~午後4時30分

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