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情報誌「瀬戸マーレ」
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せトラベル 大自然とアートにふれるサイクリング島旅

「神の島」で不思議な空間を体感しよう

大三島は、しまなみ海道で最も大きな島である。
海道はこの島の東岸に沿って走っている。
島の西端にあるミュージアムへは、自転車で行くことにしよう。
多々羅しまなみ公園でレンタサイクルを借りて、さあ、島旅のスタートだ。

みかん畑の中のミュージアム

多々羅しまなみ公園から西へ、島を横断する峠道に入る。後ろを振り返ると、多々羅大橋の主塔がわずかに見えた。峠を越すと、大山祇神社だ。この神社は古来、日本総鎮守として崇められ、大三島は「神の島」として畏敬の地だった。かつては漁も禁じられていたという、この島の神秘的なパワーに魅せられる人は多い。建築家の伊東豊雄氏と彫刻家の岩田健氏もこの島の魅力にひかれて2年前、ほぼ同時期にミュージアムを開館している。大山祇神社から8㎞ほどの所だ。拝殿で交通安全を祈願してから、出発した。

大山上神社

境内の中央で、樹齢2600年!という巨大なクスノキが周囲を圧倒している。神の居ます森、そんな不思議な感覚がごく自然にわいてくる。息を止めて3周すれば願いがかなう、らしい。

【Data】
住所/今治市大三島町宮浦3327
TEL/0897-82-0032

40分ほど走ると、素晴らしい眺望が開けた。マリンブルーと緑の島々、急傾斜のみかん畑が広がる。その中に異様な存在感を示しているのが、伊東豊雄建築ミュージアムだ。今春、建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞を受賞した伊東氏の、建築に対する考え方が開示されている。多面体の建物には、垂直な壁面が全くない。壁や天井に建築模型を配した展示ルームは瞑想室のよう。床に寝転んでみる。人と建築空間の関係性など難解な話を、専門員の東浩章さんが分かりやすく解説してくれる。大自然の中でこの建物が放っている不思議なパワーを、ほんの少しだけ感じ取ることができた。

多面体のスティールハット棟には、作品模型や東日本大震災復興に向けて設計された「みんなの家」のコンセプト等を展示。伊東氏の自邸を再築したシルバーハット棟では、ワークショップやセミナーを開催。入館者は、伊東氏の建築設計図面を自由に閲覧できる。

【Data】
住所/今治市大三島町浦戸2418
Tel/0897-74-7220
開館/9:00~17:00
休館日/月曜・年末

母子像の無限の優しさにひたる

昼さらに西へ。海を眺めながら10分ほどで、岩田健母と子のミュージアムに着く。目の前は海。小学校の校庭だった所に直径約30mの、円形のコンクリートの壁がめぐらされている。内部は、天井は無く半屋外となっていて、円い中庭に40体を超す彫像が思い思いの方向に展示されている。観る人は、周囲のどの角度から眺めてもよく、また、芝生に入って好きな像の近くで鑑賞しても構わない。彫像は、ほとんどが母子像、あるいは子どもの像である。中央の石のベンチに座っていると、子どもたちの歓声や、母親が我が子に語りかける優しい声が聞こえてくるようだ。

岩田氏は、戦争で兄を亡くし悲嘆に暮れる母親を見て、平和への願いを込めた作品を多く手がけてきた。教育者でもあった氏が作品展示の場として、この廃校跡を選んだ。建物の設計は、伊東豊雄氏。

【DATA】
住所/今治市大三島町宗方5208-2
Tel/0897-83-0383
開館/9:00~17:00
休館日/月曜・年末

こんな楽しみも

すりぃ~わぁ~るど

とり皮チャーハンは、このお店オリジナル。どのメニューもボリューム満点で、島の人気スポットだ。店を切り盛りするのは、今年74歳の国定静子さん。忙しい合間をぬって陶芸教室や手描き友禅の教室にも通う、元気で笑顔の素敵なおばあちゃん。

住所/今治市大三島町明日176-2
Tel/0897-82-1212
営業時間/9:00~14:00、17:00~21:00
定休/日曜


すりぃ~わぁ~るど
しまなみの駅御島

島の地産品が人気。柑橘類は、観光客から宅配発送の依頼が多く、リピーターは全国に広がっている。レンタサイクル・ターミナルを併設。シャワールームで汗も流せる。

住所/今治市大三島町宮浦3260
Tel/0897-82-0002
営業時間/8:30~17:00
年中無休


レストラン アルブル
しまなみの駅御島
多々羅しまなみ公園

多々羅大橋の美しい姿が間近に見える。特産品センター、レストラン等のほかレンタサイクル・ターミナルも併設。自転車を借りて島めぐりへ、出発!

住所/今治市上浦町井口9180-2
Tel/0897-87-3866
営業時間/9:00~17:00
年中無休


多々羅しまなみ公園
多々羅しまなみ公園
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島でみつけた、とっておきの時間

大三島から伯方島を経て、大島へ。ここで昼食にする。
夏には、ことのほか宮窪のウニが旨いと聞いたからだ。
贅沢だったが、今日流した汗はこのときのためと、
もっともらしい理屈をつけて、サイクリングコース沿いの店を探す。

旅の楽しみは、旬の美味

宮窪漁港の近く、知人に教えられていた店の暖簾をくぐった。活魚「雅」。若い頃に潜水夫としてウニや貝を採っていたという、店主の藤本雅郎さん。「このへんのウニは8月9月がいちばん旨い」と言う。ムラサキウニだ。産卵前の夏場に大きくなり、味も濃厚になる。

待望のウニ丼が目の前に。ひと箱分のウニがのった真ん中に卵黄が落としてある。この島の食べ方だという。まずは、ウニだけを口に含む。きめの細かい滑らかな口当たりだ。旨い。次に、卵黄をつぶしてウニと混ぜてみる。こってりとして、なるほどこれは、また別の味わいになる。好みはそれぞれだろう。夏場おすすめのタイも、この宮窪近辺のものが絶品とか。店の前のサイクリングコースを通るサイクリストが、よく来店しているというのもうなずける。アコウ、メバル、カサゴなど新鮮な魚介が揚がる宮窪漁港で月1回開かれている漁師市には、福山・広島方面からも買い物客が訪れているようだ。

うに料理
活魚「雅」
【DATA】
住所/今治市宮窪町宮窪5166、Tel/0897-86-2688
営業時間/11:30~14:00、17:00~21:00
定休/火曜日
メバルの煮付け
メバルの煮付け
ウロコをとっただけで内臓は取り出さずに、水から煮る。地元の料理法だ。新鮮な魚が手に入らないと、こんなことはできない。醤油だけのすっきりした煮汁で魚本来の旨味が堪能できる。記事中のウニ丼は、2,100円。昼は、あら煮定食(1,500円)もある。

ゴールをめざして天空を行く

こんな話が聞けるのも、旅の楽しみの一つだが、いつまでも座り込んでいては今治市街へ明るいうちにたどりつけない。「お気をつけて」の、店主の声を背に店を出た。あとは、来島海峡大橋を渡るだけだ。

来島海峡大橋は、途中に2つの小島をまたぐ全長4㎞の3連吊橋だ。見上げるとその高さに驚く。島のサイクルロードと橋の高低差は、この来島海峡大橋が最も大きい。最後の元気を振り絞ってスタートした。しかし、これだけの高さとなると、自転車・歩行者道はじゅうぶんに距離をとって大きくカーブさせているので、意外にも無理なく上がることができた。

橋の上は、高層ビルに匹敵する高さだ。眼下は来島海峡、前方には巨大な主塔とケーブルが連続して見える。夕暮れでかすむ島影が美しい。スゴイ! まさに天空を行く心地だ。めったにできない経験だろう。一度は車を置いて是非この、しまなみ海道サイクリングコースを自転車で走ってみることを、おすすめする。

道の駅「伯方S・Cパーク」で、伯方・大島大橋を眺めながらひと休み。塩アイスをなめながら、熟年サイクリストや若い人たちと話が弾む。こんな、ふれあいもサイクリングの楽しさだ。
塩アイス
道の駅「伯方S・Cパーク」で、伯方・大島大橋を眺めながらひと休み。塩アイスをなめながら、熟年サイクリストや若い人たちと話が弾む。こんな、ふれあいもサイクリングの楽しさだ。

こんな楽しみも

食堂みつばち

ライトブルーのペンキがリゾート気分。小鳥の声を聞きながら目の前の海を眺めていると、時間が経つのも忘れそう。島暮らしをしているみたいだ。

住所/今治市吉海町仁江1876-1
Tel/0897-84-3571
営業時間/11:00~17:00(ランチL.O.14:30)
定休/火・水曜日


食堂みつばち

店主の田中敦さん

「松山市から移住して始めました。ランチのお魚セットは、宮窪の漁師さんから獲れた魚を譲ってもらっているので、どんな魚が出てくるかお楽しみですよ」と店主の田中敦さん。サイクリストの来店も増えている。

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