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情報誌「瀬戸マーレ」
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瀬戸内海を制覇した伝説の海賊に、会いに行こう!

隠し砦を設営して、食材調達に出陣だ!

カツオの旬は春と秋、春先の「初鰹」と秋の「戻り鰹」がよく知られている。
ところが、ほかにも"日戻りカツオ"というのがあるらしい。
これがまた旨いと聞いたので興味津々、カツオの本場、高知は土佐佐賀漁港にやって来た。

高知県西部、四万十川に近い土佐佐賀漁港は、江戸時代からカツオ漁が盛んだった。伝統的な土佐の一本釣りの漁法は400年以上受け継がれていて、今もこの港を母港とする一本釣り漁の船団はフィリピン沖から九州、東北、北海道近海までカツオを追って操業している。一度、母港を出ると半年以上は戻らず、行く先々の港に獲れたてのカツオを水揚げしながら移動していくのだという。

一本釣り漁の船団はフィリピン沖から九州、東北、北海道近海までカツオを追って操業している。一度、母港を出ると半年以上は戻らず、行く先々の港に獲れたてのカツオを水揚げしながら移動していくのだという。

日戻りカツオを求めて、港に建つ「カツオふれあいセンター黒潮一番館」を訪れた。ここには、元漁師のおじさんや漁師の奥さんたちがいて、カツオのタタキづくり体験をさせてくれる。ここで、日戻りカツオの正体を教えてもらった。小型船で高知県沖の漁場に朝早く出て、その日のうちに港に戻り水揚げしたのが日戻りカツオだという。さすが、カツオの本場、話を聞いているうちに頭の中は新鮮なカツオを頬張る妄想でいっぱいだ。早く食べたいと喉が鳴る。


カツオの一本釣り
イワシを撒き餌にして魚群を引き寄せ、疑似餌を付けた竿で一本釣りする

カツオの水揚げ・出荷
船から揚げたカツオは、その場ですぐに1本ずつケースに入れられ、トラックで高知市や県外へ直送される

カツオふれあいセンター黒潮一番館では、60㎝ほどの大きなカツオの頭を落とすところから、元漁師のおじさんが包丁に手を添えて、さばき方を教えてくれる。焼く時は、ドラム缶に藁束をドッと放り込んで炎を上げ、焼き加減を調整してくれた。その間、カツオの習性から新鮮なカツオの見分け方、タタキの語源まで楽しい話を聞かせてくれる。タタキとは、皿に並べた身の上に天日塩や醤油を握った手の甲で身を軽くたたきながら味を馴染ませることからきたと教わった。藁で焼くのは、土佐独特のやり方。自分で焼いてみて分かったが、魚が新鮮なので、強い火勢で短時間焼くだけで良く、藁焼きの火力がちょうどいいのだ。

自分でつくったタタキを食堂で食べる。タタキの薬味はネギだけ、新鮮なのでポン酢も使わない。塩だけでいけるが、好みで、醤油と味醂を煮詰めたタレを少量つけて食べてもいい。柔らかいけど弾力がある身と、塩が引き出した濃厚な旨味が口の中で広がった。「これがカツオなんだ!」と一人うなずいた。

①大きなカツオを一本丸ごと、左右の胸ビレのところに包丁を入れて頭を落とす
①大きなカツオを一本丸ごと、左右の胸ビレのところに包丁を入れて頭を落とす
②背ビレは包丁を打ち付けるようにして、引きはがす②背ビレは包丁を打ち付けるようにして、引きはがす ④大きいフォークのような道具にのせて火の上に。藁が燃え上がると一瞬で身の色が変わる④大きいフォークのような道具にのせて火の上に。藁が燃え上がると一瞬で身の色が変わる
③腹と背から包丁を入れて三枚におろす
③腹と背から包丁を入れて三枚におろす

⑤たらいの水でさっと熱をとってから、1㎝程度の厚みに切る
⑥皿に盛ったら天日塩を振って、手でなじませる⑥皿に盛ったら天日塩を振って、手でなじませる
カツオふれあいセンター黒潮一番館
【DATA】住所/高知県幡多郡黒潮町佐賀字海雲寺374-9、Tel/0880-55-3680、営業時間/11:00~15:00、定休/火曜日(祝日営業)
カツオのタタキづくり体験
【DATA】実施期間/3月中旬~11月(3日前までに要予約)、受入人数/3名~200名(詳しくは電話にて問合せを)、体験料金(税込)/4名までは1人4,000円、5名以上は1人3,200円、所要時間/約2時間(食事の時間を含む)

現役漁師が営む漁家民宿「おおまち」を訪れた。
「お客さんが来るその日の朝、漁に出て夕食に出す魚を釣ってくるんよ」と
話してくれた明神好久さん。あたたかい心づかいがうれしい。

数多くの伝承が今も息づいている

明神さんは、おもに足摺岬の沖の漁場に出ている。午前2時頃(!)に出漁して、午後3時頃に帰港する。カツオを期待して来るお客さんがほとんどだから、季節にもよるが、カツオは欠かさない。この日は食卓に、カツオの刺身とキハダマグロや港近くで獲るアサヒガニが出た。
このカツオは、そう、明神さんが今朝釣り上げた、正真正銘の日戻りカツオなのだ!

感動のご対面。すごい、都会ではこんな具合に刺身で食べられる機会はめったにない。腹身の銀色の皮がきらきらと光っている。口に入れると、すっきりとした食感で、これは初めての味だ。アサヒガニは、土佐佐賀でも獲る人が限られている。身は真っ白で淡泊な味わい。これを目当てに、通ってくる常連のお客さんも多いという。
釣りが好きだったから漁師になり、一本釣りのカツオ漁船に20年乗ったというベテラン漁師の明神さんが、一本釣りの擬餌針やカニ漁の網、漁場付近の海図などを手に、漁の話を面白く話してくれる。

「ワシらの楽しみは美味しい言うて、お客さんが魚を食べてくれることじゃき」と言う明神さんご夫婦と話し込んでいると、まるで久しぶりに帰省した大家族のようだ。
「そうそう、いっぺん来たら、家族や」という温かい言葉にひかれて、家族連れや魚好きの人たちがリピーターとなっている。


ぷりぷりの刺身
日戻りの魚を食べられるのは究極の贅沢!

アサヒガニ 地元でもめずらしい、明神さん自慢の美味しさだ

明神さんご夫婦 ご主人の優しさと奥さんのほがらかな笑い声に癒やされる
漁家民宿「おおまち」
【DATA】
住所/高知県幡多郡黒潮町佐賀796-1、Tel/0880-55-2353、宿泊予約/1週間前までに要予約、宿泊料/(1泊2食付)大人7,000円、小人5,000円、宿泊人数/6人まで(1日1組限定)。12月~2月はお休み。(詳しくは電話にて問合せを)
 

こんな楽しみも

太平洋の海水から、天日製法で天日塩「海一粒」をつくっている、「ソルトビー」で製塩工程を見学・体験した。
南国の太陽光と風にさらして塩分濃度を上げた海水(かん水)を、温室の中に運び入れて20日間ほど、かくはんを繰り返す。そのあと、水分を分離して塩の結晶を採取する。ほとんどが手作業で、全工程には夏でも1ヵ月、冬なら2ヵ月以上もかかるという。大変な手間をかけて作られた、天日塩には60種類ものミネラル分が含まれている。口に含むと、塩辛さよりも先に甘味がくる、いろんな味が混ざった複雑なやさしい辛さだ。
体験を終えると、小さな瓶に詰めた塩をお土産にもらった。

企業組合ソルトビー
【DATA】
住所/高知県幡多郡黒潮町熊野浦90-4、Tel/0880-55-2040、営業/9:00~16:00、定休/土日祝日(体験予約がある場
合は営業)、体験予約/3日前までに要予約、所要時間は60~90分、参加費/1人1,500円(塩のお土産付き)

こんな楽しみも

古くからの漁師町の風情が残る土佐久礼のまち。明治時代から続くという大正町市場の人気は、「久礼丼」だ。1,000円分の食券(要予約)を手に、市場内の協力店に並べられた季節の魚貝や天ぷらのパックを選び、自分だけのお好み海鮮丼をつくることができる。新鮮な魚を、あれもこれもと欲張りたい人にはぴったり。


市場には、漁師の奥さんたちが出す露店が並んでいてにぎやかだ。土佐の漁師町の雰囲気が満喫できる

久礼丼は、季節によって魚も惣菜も変わるので、この写真は盛り付け例です
久礼丼の予約(久礼大正町市場)
【DATA】
Tel/0889-52-2729(田中鮮魚店)、久礼丼体験時間/11:00~14:00、定休/第4火曜日、料金/1,000円(ご飯・味噌汁券、おかず券5枚)、予約は前日までに。年末年始(12月中旬~1月中旬)は、久礼丼はお休み(詳しくは電話にて問合せを)・住所/高知県高岡郡中土佐町久礼6382

自然の生物、恐竜などの精巧な模型やフィギュア等を企画・制作している、海洋堂のミュージアムだ。入館すると、50年の歴史をもつ同社がこれまで手掛けてきた造形作品が所狭しと並んでいる。館内は、どこから見ようかと迷うほど。大きな帆船や恐竜から、指の先ほどの小動物たちに囲まれて、不思議の国に迷い込んだ気分だ。

四万十町からも、周囲の他の町からも奥深い山道を数十分間走らないと、たどりつけない。この不便さがワクワク感を高めるのかも
海洋堂ホビー館四万十
【DATA】
住所/高知県高岡郡四万十町打井川1458-1、Tel/0880-29-3355、開館時間/10:00~18:00(11月1日~2月28日までは17時閉館)、休館日/火曜日・年末年始、入館料/一般800円、小中学生400円

■イベント情報

まあ来とうせ、うまいもんが待ちようき
「第11回 土佐さがのもどりガツオ祭」
開催日時:2014年10月18日(土)9:30~15:00
カツオの一本売り・藁焼き体験・旨いもの早食い競争・ゲーム等、家族で楽しめる、美味しいイベントです。
■問合せ先:Tel/0880-55-3115(黒潮町役場佐賀支所・海洋森林課水産振興係)
ふるさとの想い出をモチーフにした作品が魅力
「四万十の詩」友永詔三展
期間:2014年9月13日(土)~2015年1月12日(月)
四万十町出身の、造形作家。NHK連続人形劇「プリンプリン物語」で製作した人形を展示するほか、木彫、木版画、オブジェなども出展。(注)ホビー館の休館日は入場不可。
■問合せ先:Tel/0880-29-3355(海洋堂ホビー館四万十)
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