高知県は林野率が84%を占める「森の国」だ。
だから、木にまつわる逸品がたくさんある。
たとえば、日本唯一の竹細工品や四万十ヒノキの水まわり品、山仕事用の鎌づくりから発展した土佐打刃物、天然木の良さを生かした玩具など。
ここに共通しているのは、県産の素材と手仕事へのこだわり。
土佐の風土がはぐくんだ人・ものが醸し出す、素朴で温かい逸品に触れる旅に出てみよう。
高知県西南部の須崎市安和地区は、日本唯一の虎斑竹自生地である。虎斑竹とは、表面に虎皮のような模様が浮き出た竹で、古くからこの地区にしか自生せず、その美しさから珍重されて土佐藩に年貢として納められていた。そんな貴重な竹を使って、明治時代から120年以上もこの地区で竹製品づくりをしてきたという竹虎本店を訪ねた。本店展示場に入ると、竹細工のオンパレード。美術品レベルのものから日常生活用品、竹とんぼや竹炭まで考え得る限りの竹製品が展示されている。その数、5千種を超すというからすごい。
虎斑竹は、生の状態では普通の竹とさほど変わらない。生竹を炎であぶり、竹から滲み出してきた油で拭き上げると、あざやかな虎皮の模様が浮き出てくるのだ。そして、同じ虎斑竹でも美しい模様が出るA級品は全体の2~3割程度、それを見極めるのはまさに職人技だ。その竹を割き、模様を生かした精巧な細工をするのも、この里の人たちの間で継承されてきた熟練の技である。「竹は刈っても刈っても生えてくる。継続して利用可能な貴重な天然資源です」と言うのは、竹虎四代目当主の山岸義浩さん。伝統の技を受け継ぎ、次代に伝えていくのが竹虎の使命だと、熱い心意気で虎斑竹のさらに多様な利用法を研究中。「新しい竹文化を創造し、竹のある暮らしを提案したい」と、虎斑竹の美しさを発信し続けている。
安和地区内の東西1.5kmの範囲にしか生えない理由は、気候や潮風、土中のバクテリア説などが挙げられているが、いまだに謎である。他所の土地に移植すると模様は出てこない。海外マスコミも世界唯一の虎斑竹を「ミラクル」と報道した。
住所/高知県須崎市安和913-1 TEL/0889(42)3201
営業時間/9:00~17:00 定休日/日曜
料金/本社展示場で購入可
高知県は日本一のヒノキの産地。その代表格が県西南部の四万十川流域で育つ四万十ヒノキだ。ヒノキ材は香りが高く、油脂分が多いので水切れが良く乾くのも早い。この特質を生かして、キッチン用品やバス用品への活用を早くからすすめてきたのが㈱土佐龍の池龍昇社長である。 30数年前に最初に手掛けたのは、ヒノキのまな板だった。生活が洋風化し、家屋の構造も変わって台所が生活シーンの大きな要素となり、それまで金物屋や荒物屋で売られていた台所用品は、おしゃれな生活雑貨に変身した。そのブームの先駆けとなったのが、ヒノキのまな板。いま、同社のまな板は日本一のシェアを持ち、海外8か国に輸出されている。
池社長が使うヒノキ材は、建築用に伐採された材木の端切れである。それをいかに無駄なく有効活用し、四万十ヒノキを育ててくれた地域経済に貢献できるかを模索してきた。現在の商品アイテムは300種。新商品の開発は止むことなく続いている。
住所/高知県須崎市浦ノ内東分2830 TEL/0889(49)0111
営業時間/9:00~17:00 定休日/不定休
料金/本社店舗で購入可
香美市土佐山田町には江戸時代から鍛冶職人が集住し、山林開発に必要なカマ・ノコギリ・ナタ・チョウナ等をつくってきた。それが土佐打刃物の始まりという。土佐打刃物は、今も伝統的な手法でつくられている。鍛造して成形し、焼き入れ・焼き戻し・研磨といった一連の作業が変わることなく継承されていて、一部で分業化はあるものの、基本的には一人で鍛造から仕上げまで行うのが土佐打刃物の特長である。用途や、使う人の要望に応じて成形するので、大量生産では不可能な一品ものをつくることができる。また、実用第一に鍛えられるので、よく切れる割には手頃な価格で販売され、一時は全国を制覇した。
製作工程を見せてもらった山下哲さんは、今も一人ですべての作業をこなす。くじらナイフは、子どもが鉛筆削りに使える安全なナイフがほしいという母親の要望に応えてつくったもの。先端を丸くして、持ち手も工夫しているうちに自然とクジラの形になったという。遊び心で始めたのだが好評で土産用にと種類を増やし、いまでは6種類まで増えている。
住所/高知県香美市土佐山田町新改184 TEL/0887(53)4508
料金/工房は製造のみ。商品の購入は、土佐刃物流通センターまたは県内の刃物店、土産物店や高知市の日曜市などで
家庭用・プロ用包丁や、園芸用のカマ・剪定用ノコギリ、農林業用のオノ・造林カマ、アウトドア向けのレジャーナイフなど3000点以上を展示。土佐打刃物の良さを知ることができ、購入も可。土佐打刃物の歴史を知る展示などもあるので、立ち寄ってみたい。
住所/高知県香美市土佐山田町上改田109 TEL/0887(52)0467 時間/平日8:30〜17:00(土日祝)10:00〜16:00 定休日/年末年始
安芸市内の古民家の中で作られているのは、木の香りとぬくもり、自然のやさしさが詰まった木の玩具だ。使われている木は、ヒノキ・ケヤキ・サクラなど。すべて高知県産の木である。脱サラで田舎暮らしをめざした萩野和徳さん夫婦が、子どものために試行錯誤しながら玩具作りを始めた。
素人だからできること、自然のよさにこだわり、安全で安心できる玩具をつくることにこだわってきた。天然木のつやや香りを大切にしたいから、材料となる木材は丸1年かけて自然乾燥させている。「玩具の遊び方は子どもたちが決める」と思っているので、大人の発想で既成の玩具はつくらない。オリジナルが基本だ。商品は子どもが持ちやすく、怪我をしないようにすべて丁寧に削って丸みをもたせている。子どもがなめても良いように塗装には食用の亜麻仁油を使う。木組みには、クギなどの金具は一切使わない。
子どもたちが木のぬくもりを通して大自然と触れ合える、そんな玩具を追求している。
住所/高知県安芸市川北甲1967番地 TEL/0887(34)4500
営業時間/9:00〜16:00 定休日/土日祝、年末年始
料金/商品は高知空港、高知県立美術館のほか県内観光施設で販売。本社でも購入可