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せとうち美術館紀行 第4回 今治市玉川近代美術館

今治市玉川近代美術館 世界の美術館を楽しもう!

今治市玉川近代美術館に関しての対談4

心豊かになる癒しの場
作品を自由に楽しむ空間作りへ

井上:
初めてこちらの美術館を訪れる方へのメッセージをお願いしたいのですが。

白石:
少し話がずれるかもしれませんが、当館では、当初、キャプションはもちろん、解説文もペタペタと貼っていました。そんなときもあったのですが、かえって邪魔になるかな、と思ったので、親切すぎる(貼りもの)のを止めたんです。一時は、キャプションまでを取り去ったときもありまして、全部ではないんですが、もう、知識から見ないで、作品を見てもらって、『どう感じるか』、という、インスピレーションなりイマジネーションなり感性を呼び起こしてもらいたい、と思ったんです。子どもさんも、年配の方もみなさんに・・・。
そうやって色々やってみるんですけれど、やっぱり、つい知識の方から入って、それから確認で絵を見てしまうんですね。習慣なのか何なのか分かりませんけれど。それで、なるべく「感じて」、作品にどっぷりと浸かってもらいたい、という気持ちがあります。ですから、BGMなんかも最初はあったんですが、全部取り去って、静かなところで感じてもらいたいんですね。ということになりますと、展示方法に非常に苦労するわけで。すーっと見て、疲れない。いつのまにか「ああ、よかった」とホッとするといいますか、何かこうちょっと気持ちが豊かになっていただけるような、展示方法なり、環境なりを作りたい、たくさんのお客さんが押し寄せてくる館ではないので、来られたお客さんが100%心から満足した上で帰っていただきたい、という思いがあります。
そのためには、展示の工夫とか、テーマを決めて興味を呼び起こしていただくとか色々あるんですが、「この美術館にきてよかった」と思っていただければ、一つ成功かなと思っているんです。ひんぱんに変える、というのも良いようで悪いような、というところがあると思うので、ただ、「前と同じだね」とは言われないように、ちょっとした掛け替えはしています。決して多くはない館蔵作品の中で、作品群にブレないよう関連させながら、興味を持ってわかりやすいように展示していきたい、というのをこれからやっていきたいです。

井上:
こちらの美術館での基本理念にかなったと言いますか、これからやりたいこともはっきりされているので、それを形にしていくことなのかな、と感じました。
思うのですが、美術館での経験がすばらしかった!と感想を持つときというのは、決してすごく著名な絵だったから感動するとは限らなくて、人が思うのは、例えば、疲れたときにベンチに座れたとか、窓から見た景色がよかったとか、一緒に連れていった孫が彫刻を見て喜んだとか、家族でゆっくりお弁当を広げる場所があってよかったとか、そういった物理的な設備面も美術館体験の一部なのかな、と。なのでそれも含めた場をここで作っていただきたいな、とか、ぼおーっと寛いでもらえる場所づくりをするとか、小さなしかけとして何か書いてもらったり、じわじわと長時間滞在していただける工夫もあるかな、と。

白石:
長時間といえば、お昼前くらいから来られて、5時すぎまでいらっしゃる方もいますよ。

井上:
それはすごいですね。

白石:
地元の方なんですけれど。よく来られるのですが、来られなかったら心配になったり(笑)

井上:
市民の方の声を聞くのも大事かもしれませんね。

白石:
ええ。良いことばかりでなく、こちらが気付かなかったこと、灯台下暗しといいますか、悪いことも言っていただいて、ハッとしたりします。

井上:
やはり地元の人に(何度も)来ていただきたいですよね。自治体レベルで新しいこともできるかもしれませんし、地元の方の口コミの力とか。

白石:
ええ、やはり口コミの力はすごいですね。

井上:
子どもさんを呼ばれたときに、『今度また来てください券』というのを発行して、子どもは無料でまた来ていただけますし、親御さんも一緒に来ていただける、そんな方法をとられている館もあります。半券を回収できるようにすると、割合も分かりますし。

白石:
合併前には、町の広報誌に、館蔵作品と、その説明書きを載せたりしていました。各戸に配るものなので、広く知っていただけたかと思います。1冊の本になるくらい続きました。

井上:
貴重な財産ですね。私が歴史の博物館にいましたときに、好評だったのが、先ほど、敢えて解説は置かない、と仰ってたんですけど、何かこう、可愛らしいキャラクターなどを用いて、子ども向けの解説を『ここがすごいんだよ』『ここが面白いよ』『当時はこんな時代だったんだ』などと記すことで、それを見て『ああ、そうなんだ』と新たな、頭の中のインスピレーションが広がる、ということがあったりしました。それが毎回変わっていると、今度はこうなんだ、と楽しみにしてもらえたり。
やはり、たくさんの作品がある中で、単調になってしまうのを、ちょっとアクセントつけてみたりするのも一つの方法かな、と思います。
子ども向け、と言いながら、実は喜んでいるのは大人だったり(笑)。安心して読める、と。

白石:
子ども向けのパンフレットは、簡単な解説をつけて置いているんですよ。ただ、どうしても、子どもの来館は少なくて。

井上:
やはり、子どもだけ単独では来れないですからね。

白石:
ええ。ここはちょっと田舎ですし、バスに乗ったりしないといけないですから、親御さんが連れてこられる、というのでないと、難しいですね。

井上:
家族の決定権は、やはりお母さん…そのお母さんが、連れてきてくれるようになると、いいと思うんですけど。

白石:
高校生以上になると、来てくれるんですけど、どうしても小中学生は難しい。

井上:
子どもだけだとそうですね。ショッピングセンターとかだけでなく、別の時間も過ごしてもらえたら、と思います。

井上:
最後に、こちらのPR点、ぜひおいでませ!という点について教えてください。

白石:
ここは・・・癒されます(笑)。癒しの場ですね。ここで癒されて、心豊かになって帰っていっていただければ、と願っています

館長:
できるだけ多くの方に来ていただいて、鑑賞していただきたいですね。

井上:
本日は有難うございました。

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