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せとうち美術館紀行 第13回 大原美術館

幅広い作品群を収集し、成長を続ける、日本初の私立の西洋近代美術館

第2回大原美術館に関しての対談1

オーギュスト・ロダン作「カレーの市民」彫像イメージ

◆第2回~成長し続ける大原美術館

大原美術館の歴史を見守り、子どもたちの感性を育む彫刻の数々

山木:
今日は前回の対談でお話に出なかったことをうかがいたいと思います。まず大原美術館の入口に置かれているオーギュスト・ロダンの「カレーの市民」の圧倒的な存在感が印象に残ります。ロダンはこの他にも何点か置かれていますね。

副館長:
開設当初から本館の入口にロダンの「カレーの市民」と、「洗礼者ヨハネ」の2体があり、大原美術館の歴史を全部見ているような感じです。

山木:
素晴らしい表現ですね。大原美術館の歴史をすべて見ている彫刻であると。

オーギュスト・ロダン作「洗礼者ヨハネ」彫像イメージ

副館長:
余談ですが、「ロダンの『考える人』があったはずだ」と言われる方が非常に多いのですが、昔から本館の入口にあるのは今ある2体なのです。それだけロダンとの結びつきでイメージをされている方が多いということですね。分館の前の芝生の庭にはロダンの「歩く人」があります。庭は自由にお入りいただけるスペースで、通行される人も作品を見ることができます。もちろん展示室にも彫刻作品がございます。

山木:
展示室には高村光太郎と荻原碌山(守衛)がありました。いずれもロダンの活躍していた時期に影響を受けて切磋琢磨した方々という位置づけでよろしいかと思います。そういう意味で言うと、西洋美術のロダンという大きな大樹と、影響を受けて切磋琢磨していた当時の日本の若者たちの作品が見られる、魅力的な展示の方法だと思います。

そして分館の入口のところには、ヘンリー・ムーアの「横たわる母と子」もありました。美しい作品で、いろいろな角度から見られるのが魅力的ですね 。

副館長:
分館の入口前の芝生には数体の彫刻があり、面白い場所になっています。当館は芝生の中に入ることを許可していますので、入って見ていただいてかまいません。

そういう形であの場所を利用しているのが、毎年夏に行っている「チルドレンズ・アート・ミュージアム」です。子どもたちのいろいろなワークショップを美術館全体に張り巡らし、分館の前の芝生では子どもたちのダンスワークショップとして、彫刻に触れながらダンスを楽しむプログラムをやっています。もちろん彫刻に触れるときは指輪や時計などを外していただき、学芸員が指導しながら子どもたちも楽しめるものを考えています 。

竹本:
「チルドレンズ・アート・ミュージアム」は2002年から始まり、毎年8月末の土日を使って2日間でやっています。

オーギュスト・ロダン作「歩く人」彫像イメージ

山木:
そうですか。左側にロダンの「歩く人」という立像、右側にヘンリー・ムーアの「横たわる母と子」の横たわっている姿があり、どちらも動きがあってダンスというイメージと重なってきます。素晴らしい場所でワークショップが行われていると感じました。ブロンズの色合いも芝生ときれいに調和し、後ろの分館の壁ともきれいに呼応しているように感じました。

「チルドレンズ・アート・ミュージアム」では、どういうダンスの音楽をかけるのでしょうか。曲はかけないのですか 。

副館長:
バックグラウンドミュージックみたいなものです。音楽に合わせて踊るというよりも、「動いて!」とか「止まって!」という感じです。

ダンス イメージ

山木:
ダンスよりも動きに焦点を当てているようなワークショップなんですね。

竹本:
そうです。彫刻からイメージを受けて体で表現してみようというものです。

山木:
年齢はどのくらいの層ですか。

竹本:
特に年齢制限はしていませんが、未就学児童から小学生が一番多いですね。その日来たメンバーで受付をして行っています。毎回、2回は普通にしていますが、1回は親子で参加してもらって一緒にダンスを楽しんでいます。

山木:
ここでも親子ですね。せとうち美術館ネットワークでも「橋を渡って親子でアート鑑賞」というバスツアーをしていますが、親子というのは非常に良いですね。

板谷:
はい。作文などでも「親子で美術館にはめったにこない」「親は好きでも子供を連れて来ない」という感想を寄せていただいていますので、そういう機会をつくるのはいいことだと思っています。

山木:
彫刻を見て刺激を受けたというのは感じられますか?

竹本:
すごく暑い時期に開催するのですが、暑さなんか吹っ飛ばして、スタッフに持ち上げてもらったり、全身を使って遊んだり、満足して帰られています。

山木:
それをきっかけに彫刻というジャンルに興味、関心をもってもらうといいですね。

板谷:
立体作品なのでどうやって鑑賞するかという手助けになるのだと思います。ただ見るだけでなく、「体で表現してみて!」「形の気持ちになってみて!」というように。

山木:
気持ちになるって大事ですよね。この(彫刻の)モデルの方がどういう気持ちをもっているのか、やってみると少し近づけた気持ちになります。

板谷:
顔の表情もそうですね。

 

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