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せとうち美術館紀行 第13回 大原美術館

幅広い作品群を収集し、成長を続ける、日本初の私立の西洋近代美術館

第2回大原美術館に関しての対談3

幼稚園児から大学生、社会人まで気軽に足を運べるシステムを工夫

山木 イメージ

山木:
前回の対談で幼稚園との関わりが多く出ていましたが、最近はどうですか。

竹本:
今年度は28園、延べ3000人を超える園児が来て下さいました。夏休みの時期と忙しい10月、11月は避けて年間で90回ぐらいプログラムを提供していて、4分の1ぐらいは園児が来ている感じです。年間1回というところがあれば、5回も6回も来て下さる園もあります。

山木:
素晴らしいですね。どんな印象を子どもたちは持っていますか。

竹本:
5歳児が対象なので、知識とかではなく感覚で作品を見ていただいています。現代アートは大人が見たらわからないと言われることがありますが、想像力豊かな子どもたちですのでいろんなことを言ってくれます。

山木:
一緒に見て回る先生方はどんな反応ですか。

竹本:
慣れていない先生は、美術館で粗相をしてしまったらどうしようと、最初はそればかりを気にされますが、美術館のスタッフもいますし、マナーの話をしてから始めますので、子どもたちはそんなに困ったことをするわけではありません。先生たちも最後のほうは一緒になって作品鑑賞を楽しまれています。

山木:
敷居を高くしないことが美術館が繁栄する鍵だろうと思います。小さな頃から美術館に行くのが楽しい体験として記憶に残っていくことが、大人になったときにもう一度美術館に行こうというきっかけになるんじゃないかなと思います。そういう意味で教育普及を大原美術館はかなり精力的にされていますね。

対談 イメージ

副館長:
館長の高階が来る前から取り組んでいます。未就学児のプログラムは長く続いておりますし、小学生はここまで来る交通機関が大変なのであまり遠くからはだめですが、歩いて来られる2つの小学校は「学校まるごと美術館」というプログラムを実施しています。休館日に半日美術館を開け、1年生から6年生まで学年ごとのプログラムを行っています。毎年同じころにやっていて、6年生になるまで少なくとも6回は美術館に足を運ぶことになります。

山木:
この地域に住んでいるからこその素晴らしい経験ですね。学級の担任は勿論のこと、その学校の校長、教頭もみんな大喜びでしょう。

副館長:
未就学のときにも何回か来ているし、小学校でも最低年1回は来ています。低学年のときに自分が好きだった作品と、高学年になって好きな作品が変わってきて、それが不思議というとおかしいのですが、「昔はこれが良かったけれど今はこっちの方が良い」という見方を子どもたちがしてくれます。

山木:
素晴らしいですね。青年や大学生にも発信していきたいということを前回の対談でおっしゃっていました。

竹本:
倉敷芸術科学大学は模写の授業で来館し、館内で実際に模写をしています。

副館長:
学校との交流でいうといろいろな切り口があります。ひとつは学校メンバーズというかたちで生徒数に応じて学校から年会費をいただき、学生証を提示すれば無料で入館できるようになっています。岡山大学、倉敷芸術科学大学、作陽大学、就実大学、山陽大学、岡山商科大学、岡山理科大学などこの周辺の大学の学生はほとんど無料です。

山木:
それはすごいですね。

対談 イメージ

副館長:
発端は岡山大学です。今はほとんどの学生が県外からで全国から来るそうですが、その学生たちが4年間せっかく岡山市、倉敷周辺に住んでいるにもかかわらず美術館へ寄らずに帰ってしまうと。大学としてもなんとか彼らに美術館に無料で入れるような方法がないかということでした。

山木:
私も美術コースに所属する大学生だった頃があるのでわかるのですが、美術好きな学生にとって、学生証を見せれば年間何回でも入館できるというのは夢のような話です。

副館長:
好きな方は何度も繰り返し来られます。若手アーティストの作品制作の展覧会を開きますが、一部屋か二部屋で行い、それだけ見るのも正規料金になりますからその展覧会だけを見に行こうと思ってもなかなか行けないのですね。無料で入館できると、そうした若手アーティストの企画展にも気軽に来られます。利用される方は頻繁に来られているようです。

山木:
調査したわけではないですが、そういう学校メンバーズというのは全国でも珍しいと思います。

副館長:
大原美術館の場合はジャンル別に展示している館が分かれているので、工芸館を見たいと思っても全部のチケットを買わないと見ることができないのですね。学校メンバーズや、社会人の方は後援会に入って年会費を払っていただくとフリーパスをお渡ししています。自由に入館できるとなると時間を気にせず短時間でも入れ、利用頻度が増えます。周辺の方々はぜひその制度を利用していただいて、寒いときに喫茶店に入らなくても美術館で時間をつぶしてください、というおすすめをやっております。

 

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