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「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 広島県・広島市現代美術館 写真

広島市中区 重藤さん(男性)

2014年2月23日

今回の広島市現代美術館は、建築家が公共空間で観察、実践してきた事例を作品にした展示会ということで、大変楽しみにしていました。元々、建築めぐりが好きで、美術館訪問は絵画鑑賞とともに、美術館の建築や空間を体験することが目的の一つにもなっているわけです。

先ず、最初に、「マイクロ・パブリック・スペース」のタイトルに惹かれました。直訳すると、とても狭い、小さな公共空間といった意味合いになりますが、日本のように国土が狭く人口の多い国にとって、また、人口が密集している大都市にとって、とても興味深いテーマに感じられました。

会場に入るなり、いきなり感動的な作品にお目にかかることができました。「スクール・ホイール」と「ファーニ・サイクル」は、西洋的な合理性とは、また違った東洋的な町場の知恵や工夫に満ち溢れており、まさにタイトルに相応しい作品でした。

次の展示室では、いつもの見慣れたチラシが置かれた棚が、このたびは「マンガ・ポッド広島」という作品として展示されていました。また、「人形劇の家」ではパネルシアターや人形劇が開催されており、実際に体験できる作品となっています。1階から地下1階につながる吹き抜けには、「山水主義・広島」と題した作品があり、さすが建築家の発想らしい立体構造物で広島の風土が表現されていました。

この立体構造物の中の階段を下りて地下1階の展示室に入ると、大きく曲線を描く壁面いっぱいに「ふるまいの庭」というタイトルの映像作品が放映されていました。その中で、バンコク、香港、重慶、ソウルの各都市における市井の人々の行動が映し出されている映像は、私には特に興味深いものでした。作者は人々の行動の中に共通する背景やパターンを抽出しているのではないでしょうか。そして、この背景やパターンこそ、作者が今回の作品展を通じて伝えたいことだったのではないかと思いました。

とかくわかりにくいとされる現代美術を対象とする美術館ではありますが、このたびの展覧会では、身近な事例とフィールドワークによる調査がベースになって作品がつくられ、実際に使用されているものもあるだけに、極めて説得力のあるわかりやすい展覧会になっており、大変楽しむことができました。

鳥取市 伊藤さん(女性)

訪問日:2013年8月23日

「サイト-場所の記憶、場所の力-」を鑑賞した。

丹下健三が平和記念資料館を含む平和公園を設計したことは有名である。イサム・ノグチが平和大橋及び西平和大橋をデザインしたこと、イサム・ノグチの手による幻の原爆死没者慰霊碑案があったことは、広島では同様によく知られたことである。広島県外ではどうであろうか。私は、是非、この特別展を広島県外の多くの方にご覧いただきたい。幻の原爆死没者慰霊碑の模型をはじめ、平和大橋の図面などが展示されている。そして、せっかく広島に足を運ばれるのなら広島市現代美術館のほか、同館と連携して「アート・アーチ・ひろしま2013」を開催している広島県立美術館とひろしま美術館にも立ち寄られることをお勧めする。

印象に残ったのはイサム・ノグチばかりではない。「見えない敵などいるはずがない(再発見,行方不明,盗難シリーズ)」と題する作品は、中東の包装紙や新聞紙を使って,イラク国立博物館から略奪された美術品を現し専門家らがコメントを付したものである。戦争等で文化遺産を失うことは、人類にとって、とても残念なことである。

ドイツ在住の若手芸術家が空き地に小屋を建て住まいする映像は、廃材を資材として集めるところから次第に人が集まりにぎやかにグラスを傾ける夜まで(正確にはそこで終わりではないが。)を撮影したもので、覚悟さえすれば人間はいろんなことができるということを考えさせられる内容であった。

目録に本来なら60.0×160.0×20.5㎝などとするところ、サイズ可変とした作品があった。桂離宮を撮影した写真(過去に作家の父が撮影したもの)、フレーム、観葉植物などで桂離宮を再現したもので、なるほどサイズ可変である。その表現を面白く思った。

一つ一つ全ての作品について触れたくなる。

そして、どんなに伝えようとしても,実際に観た私の感動そのものを表現することは難しい。

広島市東区 藤井さん(男性)

訪問日:2012年8月28日

ただ絵画を壁に展示するだけでなく、立体的な作品を展示するためには美術館側にも相当な覚悟が必要でしょう。

今回のス・ドホの作品展は、彼と美術館の並々ならぬ努力が感じられるすばらしいものでした。吹き抜けを利用するなど展示スペースを立体的かつ大胆に利用し、今までの作品を発展させた試みも見受けられました。床材を取り除き、コンクリート床地を見せた展示室に設置された「墜落星」という巨大な住宅模型など、その細部の精緻さにも驚かされます。

今回の展示の後、金沢の21世紀美術館で展示が予定されているそうですが、これほどの展示は美術館の構造上再現できないのではと思いました。美術館の建築としての可能性も実感しました。学芸員の方にその苦労の幾つかを聞くことができたのも有意義な体験でした。すばらしい時を過ごせたことを感謝しています。

広島県尾道市 中川さん(女性)

訪問日:2012年5月27日

地図を道案内に行きました。グラヴァー邸を思い出す長いエスカレーター、そして長~い歩く歩道。かなりな道のりなのに多くの人が歩いています。自然に囲まれて風がとっても気持ちいい。美術館への途中や周囲にもいろいろ展示物があり、中に入るまでにも鑑賞しながら歩きました。

特別展が開催されていて、人間の創造力ってすごいなぁ!と感心させられました。その後、順路のとおり進むと、『天空の赤』が上映されており、これを観て展示作品の本当の意義を痛感したのです。それぞれに事情があり、絵を描くための教育を受けていないのに、また教育を受けていないからこそあのような特別な表現が、自身の中から迸るような物ができたのか、と。作者の言葉に表せないものが、そこに具現されているのだ、と思いました。

身体と精神(こころ)の洗濯ができました。又、機会を作って行きたいと思います。

広島市 藤井さん(男性)

訪問日:2012年2月28日

帰省していた娘と「シャルロット・ペリアンと日本」展に行ってきました。11日にあった関連プログラムの建築家伊東豊雄さんの講演にも参加。先着160名ということで、開場前に長蛇の列、満員でした。震災以後の取り組みを含めて、氏の真面目な人柄に触れることもできました。

展示では、ペリアンの作品もですが、太平洋戦争前に訪日した頃の写真・書簡などの資料がとても興味深く、ペリアンの若く生き生きとした姿に時間を忘れるくらいでした。戦後の再来日も含めて、日本との関わりが深かったことを嬉しく思いました。コルビュジエ・チェアLC1やLC4に座って、ペリアンが自ら回想する自伝の映像を観て、女性デザイナーとしての彼女の強い生き方を感じることができました。彼女の言葉に娘もとても感動していたようです。

広島市 重藤さん(男性)

訪問日:2011年10月30日

現代美術は一般的になかなか理解できない作品が多々あります。

こうした中、現代美術を専門に展示する広島市現代美術館では、現在も活躍中の作家を取り上げた展覧会が多くあり、作品制作に込めた想いや背景を出展作家から直接、話が聞けるイベントをいつも開催しており、より深く作品を理解することができるよう工夫されています。

このたび、観覧した「秋山祐徳太子+しりあがり寿 ブリキの方舟」においても、二人の出展作家によるアーティスト対談があり、そのひととなりを話の端々に垣間見ることができ、作品を鑑賞していく上で大変参考になりました。

ところで、この美術館は黒川紀章が日本の伝統的な蔵をイメージして設計した建物ですが、豊かな緑に包まれた自然環境と相俟って、現代美術の発する不思議なパワーに浸れるとても魅力的な美術館です。