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「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 兵庫県・神戸市立博物館 写真

鳥取市 伊藤さん(女性)

2014年3月18日

昨年の春、広島県立美術館で開催された「夏目漱石の美術世界展」を観に出掛け、漱石が愛した画家ターナーを知った。そして、小説「坊ちゃん」に登場するターナー島の松とはこの絵の松だろうというような解説が付いた絵も鑑賞し、以来、今回の「ターナー展」をとても心待ちにしていた。

最初に目を引いたのは、作品リストナンバー3「ウォリスの岸壁付近のエイヴォン川」。手前の木がしなり、岸壁とともに円を描いている構図が面白い。少し足を進めて、作品リストナンバー10「月光、ミルバンクより眺めた習作」は、モネの「印象日の出」を思い出させる。ターナー(1775~1851)は風景画家であるが、戸外で作品を描き仕上げたのだそうだ。印象派をずっと先駆けていると言える。

今日、出品されていた作品の中で好きなものを3つ上げるとすれば、作品リストナンバー99「サン・ベネディット教会、フジーナ港の方角を望む」(1843年ロイヤル・アカデミー展出品)、作品リストナンバー71「黄色い砂浜の上の青い月影」(1824年頃)、作品リスであるトナンバー108「荒れた海とイルカ」(1840~45年頃)である。いずれも、ほとんど対象の形がはっきりしていない。ナンバー99は、レモンイエローの輝きが印象的な作品であるが、ロイヤル・アカデミー展に出品しているくらいであるから、完成されていることは間違いない。反対に未完と言われているのがナンバー108。私はこれを完成作品として心を動かされた。

ターナーというと、最初に紹介したアカデミックな傾向の風景画を思い浮かべていたが、晩年の何を描いたかも分からないような作品にその真価があるのではないだろうか。ターナーは、いつもパトロンやアカデミーや鑑賞するだろう人を意識していたことだろう。しかし、これらの人を意識しなければ、もっと自由に自分を表現できただろうことが想像できる。例えばナンバー108のように。

広島市中区 重藤さん(男性)

2014年1月29日

今回、神戸市立博物館で開催されている「ターナー展」を観覧しました。一昨年11月に「真珠の耳飾りの少女」を見たくて訪問して以来です。9時30分の開館前に到着したことから、厳寒の中、待つこと30分、枕草子の「冬はつとめて」の言葉を思い浮かべながら、ターナーへの期待はいやがうえにも高まりました。

そして、余分な話ですが、待っている間に、神戸市立博物館の建物をじっくりと観察することもできました。私が美術館を訪れる楽しみの一つは、建物の外観や内部空間を体感することにあります。国の登録有形文化財にも指定され、威風堂々とした建物である当館は、元々、旧東京銀行神戸支店だったとの由。いろいろ調べたところ、設計者はあの旧丸ビルや地元広島県にある旧呉鎮守府司令長官官舎(現在の入船山記念館)を設計した桜井小太郎とのことです。

さて、主題のターナーですが、副題に英国最高の風景画家とあるように、いずれの作品も期待にたがわず、見てよかった、来てよかったと思わせる内容でした。もちろんターナーについては、風景画家としてとても有名であり、私自身もよく知っているつもりでしたが、改めて天才の名がふさわしいと感心することしきりでした。

多くの展示作品の中でも、とりわけ印象に残った作品は、一瞬の光をとらえた「レグルス」、大胆な構図の「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」、夏目漱石の「坊っちゃん」にも引用された松が描かれている「チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア」、大自然への畏れを描いた「グリゾン州の雪崩」などです。しかし、何といってもターナーの素晴らしさは、絵を描く技量が類まれなだけでなく、題材や画題の特異さ、面白さにもあるのではないかと、たくさんの作品を見比べながら思いました。

やはりターナーは、今日なお英国最高の巨匠と称賛されるだけのことはあると、つくづく納得させられた訪問になりました。

鳥取市 伊藤さん(女性)

訪問日:2013年9月28日

「プーシキン美術館展」を鑑賞しました。

この美術展は、当初2011年に開催される予定で準備が進められていたところ、3月に東北大震災が発生し一度は中止になったものです。今回の開催は多くの方の熱意と努力と理解と協力の賜物であると思います。ありがとうございます。

早速、初日に出掛けました。

待ちわびて待ちわびて、やっとその絵の前に立つことができたルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」は、期待どおりの笑顔で私を迎えてくれました。モネの「陽だまりのライラック」の木の下には、日傘を差す女性と足を伸ばして寛ぐ女性が草木に溶け込むように描かれています。そう言われなければ風景にしか見えません。もう一枚のルノワールの絵である「セーヌの水浴」、ドガの踊り子を描いた作品、セザンヌの「水浴」、「パイプをくわえた男」、ロートレックの「窓辺の女」はそれぞれそれらしい特徴的な作品です。

新古典主義とロマン主義を対比させた第2章の展示は、それらの主義の違いがとても分かりやすい展示となっており、興味深く鑑賞しました。

思わず笑みがこぼれてしまったのは、第1章に展示されていた「猫の勝利」です。女性に抱きかかえられた猫、その様子を女性の足元かいうら見上げる犬・・・私はそっと犬を手招きしたくなります。

最後の第4章「20世紀-フォーヴィスム,キュビスム,エコール・ド・パリ」では、マティス、ピカソ、アンリ・ルソー、キスリング、シャガール、レジェらが紹介されています。表現の多様性が花開いたと表現してよいでしょうか。これから未来に向かって,ますます多彩な表現方法が発見され、発表されていくことでしょう。そう思うとわくわくしてきます。

エカテリーナ2世、そしてシチューキン、モロゾフのコレクションに更にどのようなコレクションが加えられていくのでしょうか。辿る時代が長くなると楽しみも長くなります。

松山市 豊嶋さん(女性)

訪問日:2012年11月17日

息子は今年、12歳、年男になる。この子が2歳のころより、毎年のように「神戸市立博物館」を訪れている。
元来、夫婦で美術館巡りは好きなのだが、子供連れとなると足も遠のく。

息子が2歳の時、どうしても見たい作品があり、不安に駆られながらの初めての鑑賞に行くことになった。

肩身の狭い小さい子供連れでの鑑賞。息子が大きな声を出したり、突然走り出したりはしまいかと、どきどきしながら息子の手をしっかりと握っていた。そんな不安を知ってか知らずか、博物館で一人のご婦人に話しかけられる。にっこり笑いながら話しかけられてはいるが、やはり子供連れでは・・と私は思い、うつむいたままでいた。ところが、そのご婦人は息子にも私たち夫婦にも展示会について優しく語りかけてくださり、なんと一緒にお茶までしてくださる。私たち夫婦の緊張を子供なりに察していた息子にもやっと笑顔が見られ、博物館をふたまわりもしながら鑑賞した。私たち親子の初めて鑑賞は、至福のうちに終わったのは言うまでもない。 

それから、10年後、今年もフェルメールの作品鑑賞だった。子供たちと事前にフェルメールについての絵本を読んだり、以前見た作品を話したりしていた。

博物館に着くと、「真珠の耳飾りの少女」の前で、下の子どもが「お母さん、かわいい!」と無邪気に言いながら再び長い列に並んで、少女に会いに行っていた。息子は、「ごしきひわ」にくぎ付けだった。それぞれに堪能していたようだった。その姿に子供の成長を感じた。

帰り際、まだ小さい下の子は、「真珠の耳飾りの少女」のぬいぐるみを握りしめていた。私はというと、恥ずかしながら、少女の大きなパネルの横で、少女と同じポーズをとって写真におさまった。こうして、今年も私たち親子の「神戸市立博物館」鑑賞を終えた。

同じことを感じたのか、夫が「来年も連れてこよう。」と言った

広島県福山市 伊藤さん(女性)

訪問日:2012年10月7日

今年、最大の楽しみにしていた「開館30年記念特別展 マウリッツハイス美術館展-オランダ・フランドル絵画の至宝-」を鑑賞した。

以前、テレビでマウリッツハイ美術館を紹介する番組を視聴したことがあった。贅沢な建物の壁狭しとコレクションが飾られている。元オランダ領ブラジルの総督をつとめたナッサウ伯ヨーハン・マウリッツ(1604~79)の邸宅で、コレクションはオランダ総督ヴィレム5世と、その子のオランダ初代国王ヴィレム1世の収集が中核となっているという。行ってみたいなあと思っていた。

同館が改修工事をするということで、この度の特別展が実現したようだ。日本にいながら、コレクションの一部を楽しむことができる。なんと嬉しいことだろうか。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、「ディアナとニンフたち」、レンブラントの「自画像」。ヤン・ステーンの「親に倣って子も歌う」も面白かったし、フランス・ハルスの「笑う少年」の活き活きとした表情には、こちらの口元も緩んでしまう。なるほど、貿易による経済発展で市民が台頭し,教会や貴族だけでなく,市民も絵画を楽しみ支援したということが分かる。

神戸市立博物館を訪れる度に思うのは、阪神淡路大震災のことである。長く同館に勤められ、現在は他の美術館の館長である方からお聞きしたところでは「同館の池長コレクションがどうなっているかとても心配した。地震対策は十分でなく損害は大きかったけれども、特に重要な所蔵品である「泰西王侯騎馬図」「聖フランシスコ・ザヴィエル像」は無事であったということだ。いずれも今年春に開催された「南蛮美術の光と影-泰西王侯騎馬図屏風の謎-」に展示され、鑑賞できたことを心から感謝する。そして桐の箱に収納された工芸品などは被害が少なかったことを聞き、先人の智恵に頭が下がる。

震災後これまでの関係者の方のご苦労ご努力はいかほどであっただろうか。ホームページに公開されている同館の使命の一つには、「震災での教訓を生かし、震災とその復興のなかで得た知見を全国に、世界に発信する」ことが掲げられている。多くの人のお陰で私たちや子孫たちは、心揺さぶる文化に触れ、歴史を学ぶことができるのだ。深く感謝してこれからも鑑賞に励みたい。

姫路市 矢代さん(女性)

訪問日:2010年8月6日

日本のアニメーション美術の創造者である「山本二三展―天空の城ラピュタ、火垂るの墓、時をかける少女―」を見てきました。まさしく、美術館という「トンネルのむこうは、不思議の町」で、屋久島の縄文杉の森をイメージして描かれた「もののけ姫」の獅子神の森は圧巻でした。

この博物館は居留地にあるので、新古典主義様式の堂々たる建物自体が美術品です。また、神戸市立南蛮美術館と神戸市立考古館が統合して現在の博物館になっているため、この土地で出土した銅鐸や銅戈などの考古学資料をはじめとして、ザビエルの肖像画や南蛮屏風などの南蛮美術品も展示されています。

私は神戸の今昔(変遷)を写した写真展示がお気に入りです。さすがに国際文化交流都市・神戸。東西文化の接触と変容が、この博物館の中に凝集しています。

10月8日からは「和ガラスの神髄展」が始まります。「びいどろ」という響きに魅せられて、また足を運ぶ予定です。

姫路市 矢代さん(女性)

訪問日:2010年8月28日

ジブリ作品が大好きなので、うきうきと「山本二三展」に行ってきました。

天空の城ラピュタ、もののけ姫、時をかける少女、そして火垂るの墓などの背景画やイメージボードが多数展示されていて、「これはあのシーンだ」と作品を思い出しながら楽しむことが出来ました。

使われている色彩がとても美しく、画面の奥にこんな世界があったのだなと驚きます。以前に兵庫県立美術館に「男鹿和雄展」を見に行った時も思ったのですが、たとえ作品を知らなくても背景画を一つの絵として鑑賞することは十分可能ですし、一見の価値はあると思います。絵の世界は深いなぁと感じます。

ところで、個人的には「くじらぐも」のアニメのボードが「あぁ、これ小学生の時に習ったな~」と、とても懐かしく感じました。みんなでジャンプしてくじらぐもの上に上がるシーンは、イメージとぴったりで嬉しくなりました。

夏の終わりに心豊かな時間を過ごすことが出来ました。

神戸市 有田さん(女性)

訪問日:2010年11月19日

版画家、川西祐三郎展を見て、神戸市立博物館を出ると、カップルが正面入り口前で写真を撮っていた。

確かに。写真スポットだ。正面の円柱なんて、ヨーロッパの美術館に来たような感じで、旧外国人居留地という場所とともになんとも神戸らしい。

ここで、すばらしい作品を鑑賞できるのかと思うとワクワクさせる建物なのだ。今度訪れたときは、私も写真を撮らなくては!

それから、展覧会の感想を少し。10代~20代の頃の作品が色合いも絵もすばらしかった。こんな版画が一枚、自宅に飾れればなあ・・・。