ケーブルの架設

ケーブルは、ハンガーロープを介して、桁の重量、ケーブル自身の重量、自動車や列車の重量を支えています。最も太い南備讃瀬戸大橋では、ケーブルの直径は107cmあり、約45,000tの張力を担っています。吊橋の工事は、このケーブル工事の段階から点から線へと移っていきます。

写真:パイロットロープの渡海

パイロットロープの渡海

塔と塔の間に、ケーブルを張り渡すには、何らかの足掛かりが必要です。この足掛かりとなるものが、二つの塔の間に最初に架け渡す、細いパイロットロープです。過去に建設された吊橋では、航路を閉鎖したうえで、ロープに多数の浮きをつけ、海面に浮かべてボートで引き出す方法が用いられましたが、瀬戸大橋では、航路の閉鎖が困難なことから、クレーン船を用い、常にロープを高い位置に保ちながら渡海しました。写真は、下津井瀬戸大橋のパイロットロープ渡海状況です。

写真:キャットウォークの架設

キャットウォークの架設

キャットウォークは、ケーブルを架設するための空中足場のことです。最初に架設されたパイロットロープを利用して、より太いロープを10本程度架設し、この上に金網、二重の繊維ネットを被せることによって幅4.5mの床面をつくり、さらに1.4mの高さの手すりを設けました。このようにしてキャットウォークを架設しました。キャットウォーク間で行き来ができるよう横断通路(クロスブリッジ)も設けました。

写真:リールに巻かれたケーブルストランド

リールに巻かれたケーブルストランド

南北備讃瀬戸大橋では、ケーブルは、下記「南備讃瀬戸大橋のケーブル」に示すストランド毎に架設されました。高強度の素線から構成されるストランドは、その製作に時間がかかることから、架設の4年以上前から製作が始められました。完成したストランドは写真のような巨大なリールに巻かれ、重量が40t近くになったことから、陸上では貨車によって輸送を行いました。

写真:ケーブルストランドの引き出し

ケーブルストランドの引き出し

現地に輸送されたリールは、アンカレイジ上にセットされます。ストランドの先端をキャットウォーク上空に設けられている曳索駆動装置に取り付け、曳索を駆動することにより、ストランドがアンカレイジ間に展開されます。

写真:ローラー上のストランド(写真右側)

ローラー上のストランド(写真右側)

引き出されたストランドは、ローラー上を正規の位置まで移動します。移動が終わると、定着部にソケットを定着します。

写真:空中交差するストランド

空中交差するストランド

北備讃瀬戸大橋の234本、南備讃瀬戸大橋の271本のストランドが交差する共用アンカレイジで、世界初の構造です。

写真:ケーブルバンドの取付け

ケーブルバンドの取付け

ケーブルバンドは、ハンガーロープの荷重をケーブルに伝える役目を持っています。鋳物工場で二つ割りにして製作したバンドは、ケーブルの左右から合体し、上下を多数の特殊ボルトで締め付けて取り付けます。このボルトの締め付け力により生じた摩擦力で、ハンガーロープの力をケーブルに伝えます。

写真:ハンガーロープの架設完了

ハンガーロープの架設完了

ハンガーロープは、ケーブルバンドに2本ずつ鞍掛け(くらかけ)して補剛桁を吊るし、長いものでは100mにもなります。このため、小さい半径で曲げることができ、しかも伸縮の小さい特殊なワイヤーロープを使っています。写真は、補剛桁の架設を待つ南備讃瀬戸大橋です。

南備讃瀬戸大橋のケーブル

上の写真は、南備讃瀬戸大橋の本物のケーブルと同じ模型で、ハンガーロープが架かっている部分です。直径は約1mありますが、一つの大きなものではなくて、直径約5㎜の素線ワイヤ(ピアノ線)を、よらずに平行に束ねたものです。ワイヤ1本で、約3t=小型の乗用車なら約3台分をつり上げることが出来ます。模型の断面は、分かり易いように六角形に色分けしています。127本のワイヤをきれいに重ねて束ねると、ちょうど六角形になります。この一束をストランドと云います。