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本を愛するあの人が教えてくれた、DEEPな高松

立ち読みならぬ、座り読みもOK。宝探しをしているような気分を味わうことができる「なタ書」。この雰囲気と藤井さんに惹かれて、遠方からリピート来店する人も多い店だ

香川県高松市

本を愛するあの人が
教えてくれた、
DEEPな高松

完全予約制の書店やイベントで賑わう書店、
そして独自の文学賞を創設したブックカフェなど
本や文学とのユニークな出会いがある高松市。
それぞれの店主が教えてくれた場所を訪ねながら
ほんの少しDEEPなまち歩きを楽しもう。

高松市 MAP

本の洪水に圧倒されつつ 独特の人と世界観に浸る

所々に錆(さび)が浮き出た波板に囲まれた店舗外観。右手のドアから入り、靴を脱いで急な階段を上ると店内だ。時折、予約なしで入店できる日もある(オープン情報はSNSで発信)

所々に錆(さび)が浮き出た波板に囲まれた店舗外観。右手のドアから入り、靴を脱いで急な階段を上ると店内だ。時折、予約なしで入店できる日もある(オープン情報はSNSで発信)

今やすっかり定番となった「さぬきうどんめぐり」だが、ひと味違う高松旅を楽しみたいという人におすすめなのが、本にまつわるスポットめぐり。このまちにはユニークな書店やブックカフェがある。1軒目に訪ねたのは、年季の入った建物で営業する「なタ書」。完全予約制の書店で、今や海外からもこの店を訪れる人がいるそう。店主の藤井佳之(ふじいよしゆき)さんは、東京の出版社勤務を経て、中学時代に暮らしていた高松市へUターンし、2006年に店を開いた。

「こんな本が読みたい」と言えば、藤井さんが選書をしてくれる。香川や四国にまつわる書籍も充実しており、地元情報の収集のために立ち寄るのもおすすめだ
「こんな本が読みたい」と言えば、藤井さんが選書をしてくれる。香川や四国にまつわる書籍も充実しており、地元情報の収集のために立ち寄るのもおすすめだ

急な階段を上ると、目の前に広がる世界が圧倒する。四方につくられた書棚には本がぎっしり並び、まさに本の洪水だ。扱っているのも古書から古雑誌、新刊、ZINE(ジン)※やリトルプレスまでと多彩で、総数は藤井さんすら把握できない。完全予約制にしているのは、選書や執筆活動、イベントプロデュースなどフリーランスで仕事を掛け持ちしているため。「予約時間以外は、そうした活動をしています」と話す。
飄々(ひょうひょう)としながらも、独特の感性をもつ藤井さんのファンは多い。彼と話し、本を漁っていると時間はあっという間に過ぎ去る。カオスな書店と店主の余韻を味わいつつ、藤井さんおすすめの古着店「FUZZ(ファズ)!」に向かった。
※ZINE・リトルプレス…いずれも個人や団体が少部数発行する出版物

本を通して、人との出会いを楽しんでいる藤井さん。ときには人生相談を受けることもあるそう。また予定が合えば、まち歩きの案内もしてくれる
本を通して、人との出会いを楽しんでいる藤井さん。ときには人生相談を受けることもあるそう。また予定が合えば、まち歩きの案内もしてくれる
なタ書と同様に、店内には古着や雑貨がギッシリ並ぶFUZZ!。商品は1960年代後半から70年代前半のアイテムを中心に扱っており、海外からやってくるお客さんも多い。藤井さん曰く「1999年にオープンしたこの店は、店主が自然体。それでいて常に若い世代を惹きつける魅力に満ちています。最高にカッコいいし、僕の目指すスタイル。この店が受け入れられている高松というまちの、懐の深さを感じますね」。看板猫の出迎えも楽しみ
なタ書と同様に、店内には古着や雑貨がギッシリ並ぶFUZZ!。商品は1960年代後半から70年代前半のアイテムを中心に扱っており、海外からやってくるお客さんも多い。藤井さん曰く「1999年にオープンしたこの店は、店主が自然体。それでいて常に若い世代を惹きつける魅力に満ちています。最高にカッコいいし、僕の目指すスタイル。この店が受け入れられている高松というまちの、懐の深さを感じますね」。看板猫の出迎えも楽しみ
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なタ書

住所/香川県高松市瓦町2-9-7 2階
TEL/ 070-5013-7020
営業日/完全予約制
駐車場/なし
HP/ https://natasyo.com/
Instagram/ 藤井 佳之

なタ書

FUZZ!

住所/香川県高松市亀井町12-18
TEL/ 087-832-4801
営業日/12:00〜20:00
休業日/無休
駐車場/なし

FUZZ!

※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。

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気づけば足が向いている「まちの本屋さん」

店の奥にある階段状の座席。気になる本は、座り読みして吟味することができる。このスペースでイベントが行われることも

店の奥にある階段状の座席。気になる本は、座り読みして吟味することができる。このスペースでイベントが行われることも

ここ10年、いわゆる「まちの本屋さん」が、次々と閉店している。反比例するように増えてきたのが独立系書店とも呼ばれる小さな本屋。小ぢんまりとした店内には、店主が厳選した本を置き、カフェスペースを設けている店もある。2017年にオープンした「本屋ルヌガンガ」は、中村勇亮(ゆうすけ)さん、涼子さん夫妻が、当時住んでいた愛知県で通っていた小書店に惚れ込んで開いた店。「特に好きだったのは、本について語り合う読書会。私たち夫婦の出会いも、読書会がきっかけでした」。
本を買うだけならネットショップでも適(かな)うが、「実店舗でしか得られないモノやコトを提供したい」というのが中村夫妻の考え。約30坪の店内には、階段状の座席や大テーブルがあり、著者によるトークイベントや映画の上映会などさまざまなイベントも開催されている。定期的に行われている読書会は、本や同じ著者を愛する者同士の出会いの場として好評だ。
本屋ルヌガンガは、週刊誌や漫画雑誌も扱っており、ご近所さんが気軽に足を運べる雰囲気も持ち合わせている。勤め帰りにコーヒーを飲んだり、待ち合わせをしたり。時間潰しに立ち寄るのも大歓迎。ここはいろいろな人のサードプレイスとなっている。
カフェコーナーでは、コーヒーやお菓子を提供。購入した本とともに、ゆっくりと過ごす人も多い
カフェコーナーでは、コーヒーやお菓子を提供。購入した本とともに、ゆっくりと過ごす人も多い
雑貨屋さんのような洒落た雰囲気の店構え。店内では、本をこよなく愛する中村夫妻が出迎えてくれる
雑貨屋さんのような洒落た雰囲気の店構え。店内では、本をこよなく愛する中村夫妻が出迎えてくれる

本屋ルヌガンガ

住所/香川県高松市亀井町11-13
TEL/ 087-837-4646
営業日/10:00〜19:00
休業日/火曜
駐車場/なし
HP/ https://www.lunuganga-books.com
Instagram/ 本屋ルヌガンガ

本屋ルヌガンガ
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果物や野菜、民藝小物など香川らしさに出会う場所

「ゆったりとできる店。時間に余裕のあるときにぜひ立ち寄ってほしい」と中村さんのおすすめ1軒目は、築70年の家具店をリノベしたカフェ「藤塚町マルシェ」。店主の中木(なかき)大輔さんが目利きした、香川県産野菜や果物を使ったドリンク、地物ジビエのフードを提供している。昼夜の区切りなく、同じメニューを提供しており、遅めのランチにもふらりと立ち寄りやすい。

注文を受けてから季節の野菜や果物を搾る「季節の生フルーツカクテル(ノンアルコール)」(各700円)
注文を受けてから季節の野菜や果物を搾る「季節の生フルーツカクテル(ノンアルコール)」(各700円)
柔らかく煮込んだ猪の肉を、スパイスを効かせた野菜たっぷりのスープとともに味わう「イノシシ肉のクスクス」(1,000円)
柔らかく煮込んだ猪の肉を、スパイスを効かせた野菜たっぷりのスープとともに味わう「イノシシ肉のクスクス」(1,000円)

藤塚町マルシェ

住所/香川県高松市藤塚町1-5-17
TEL/ 080-3924-4382
営業時間/11:00〜21:00
休業日/月曜不定、火曜休
駐車場/なし
Instagram/ 藤塚町マルシェ|季節の生フルーツカクテル & 野菜とたべるジビエ

藤塚町マルシェ

民藝の小物が好きな中村さん。「デザイン性の高い、香川の民藝に触れられる穴場があるんです」と2軒目にすすめてくれたのは、讃岐おもちゃ美術館のshop。愛らしい郷土玩具や讃岐漆器のテーブルウェアなど、手に取りたくなる品と出会える。

カラフルな糸をかがって仕上げる伝統工芸品「讃岐の手まり」。制作用のキットも販売している
カラフルな糸をかがって仕上げる伝統工芸品「讃岐の手まり」。制作用のキットも販売している
天然木にカラフルな漆塗りを施したスプーンやフォーク。他にも多彩な品が揃う(P18「山森めぐみの おみやげ瀬戸内」)
天然木にカラフルな漆塗りを施したスプーンやフォーク。他にも多彩な品が揃う(「山森めぐみの おみやげ瀬戸内」

讃岐おもちゃ美術館 shop

住所/香川県高松市大工町8-1 丸亀町くるりん駐車場1階
TEL/ 087-887-6762
営業時間/10:00〜17:30
休業日/木曜(祝日の場合は翌日)
駐車場/あり
HP/ https://www.ikunas.com/view/page/stm
Instagram/ 讃岐おもちゃ美術館shop・cafe

讃岐おもちゃ美術館 shop
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本好きが高じてカフェ、そして文学賞を創設

「珈琲と本と音楽 半空(なかぞら)」のオーナー、岡田陽介さんは、少年時代から無類の本好き。「少ないお小遣いで古本を買い、大人になってからは喫茶店でコーヒーを飲みながら読書をするのが何よりの贅沢でしたね」。自分のような人が立ち寄れる場所をつくりたい…。それが開業のきっかけだ。店内にうず高く積まれているのは、岡田さんの蔵書など約3000冊。気が付けば、本好きたちが集まる店として知られるようになった。

ある日、カウンターでペンを走らせるお客さまが目についた。その文章を読んでみたいと考えた岡田さんは、2015年に「半空文学賞」を創設。地域発の名物文学賞として育て上げた。内容も文字数も制限のない文学賞は、読むだけではない文学との付き合い方を教えてくれる。

最近は姉妹店の茶論半空(さろんなかぞら)にいることが多い岡田さん。丁寧にネルドリップするコーヒーのファンは多い
最近は姉妹店の茶論半空(さろんなかぞら)にいることが多い岡田さん。丁寧にネルドリップするコーヒーのファンは多い
客席はカウンターのみ。ひとりで訪ねて、コーヒーを片手に本を読み、音楽に耳を傾けるのは至福のとき
客席はカウンターのみ。ひとりで訪ねて、コーヒーを片手に本を読み、音楽に耳を傾けるのは至福のとき
文学作品に登場する飲み物やフードを再現したメニューは、半空の名物。一緒にその本を添えるのが半空流
文学作品に登場する飲み物やフードを再現したメニューは、半空の名物。一緒にその本を添えるのが半空流

珈琲と本と音楽 半空

住所/香川県高松市瓦町1-10-18 北原ビル2階
TEL/ 087-861-3070
営業時間/13:00〜翌3:00
休業日/不定休
駐車場/なし
HP/ https://www.nakazora.jp
Instagram/ 珈琲と本と音楽 半空

珈琲と本と音楽 半空
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窓際の席に落ち着き景色を眺め、本を読む

ネパール出身のグルンさんが営む「タリースパイス」は、岡田さんの学生時代からの行き付けの店。「カレーはもちろんですが、焼きたてのナンが絶品。ボリュームも申し分なしです」と太鼓判を押す。窓際の席に陣取って見下ろす、商店街の景色もお気に入りなのだそう。

ランチタイムには「タリーセット」(950円)などお得なセットメニューを用意
ランチタイムには「タリーセット」(950円)などお得なセットメニューを用意

タリースパイス

住所/香川県高松市田町14-1 田町プラザビル2階
TEL/ 087-835-1722
営業時間/11:00〜15:00、17:00〜22:00
(土・日曜は11:00〜22:00)
休業日/無休
駐車場/なし

常磐町商店街と田町商店街が交わるビルの2階、開業からは20年以上が経つ。インドやネパールの本場の味わいを求めて、地元のビジネスパーソンらで賑わう

常磐町商店街と田町商店街が交わるビルの2階、開業からは20年以上が経つ。インドやネパールの本場の味わいを求めて、地元のビジネスパーソンらで賑わう

カフェ「mellowbeats.(メロウビーツ)」でも、岡田さんは窓際の席へ。「ガラスを通して見ると、歩き慣れた通りが別世界のようで、不思議な感覚に陥ります」と話す。マフィンやケーキなどのスイーツも絶品。本を読みながらいただけば、至福のひと時が過ごせることだろう。
季節感のあるスイーツはテイクアウトもOK。キーマカレーなどランチメニューもあり
季節感のあるスイーツはテイクアウトもOK。キーマカレーなどランチメニューもあり

大阪でコーヒーに関わる仕事をしていたオーナー。「音楽も好きで、その両方が楽しめる店を作りたい」と2021年に開業した
大阪でコーヒーに関わる仕事をしていたオーナー。「音楽も好きで、その両方が楽しめる店を作りたい」と2021年に開業した

mellowbeats.

住所/香川県高松市田町9-2
TEL/ 087-808-8453
営業時間/12:00〜18:00
休業日/水・木曜
駐車場/なし
Instagram/ mellowbeats. coffee&BAKE

mellowbeats.

※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。

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