ホーム > 瀬戸マーレ vol.3 > アートのすすめ vol.2
情報誌「瀬戸マーレ」

アートのすすめvol.2 西洋名画1,000点余りを陶板で再現 日本に居ながら世界の美術館めぐりを体感

世界初の陶板名画美術館として知られる「大塚国際美術館」。
古代壁画から現代絵画まで1,000点余りが陶板に再現され、日本に居ながら、世界の美術館を堪能することができます。

現地の臨場感を味わう環境展示 ミケランジェロの天井画が圧巻

国会議員・後藤田正純さんと女優・水野真紀さんが披露宴を行ったシスティーナ・ホール
国会議員・後藤田正純さんと女優・水野真紀さんが披露宴を行ったシスティーナ・ホール。歌舞伎やコンサートなど、幅広いジャンルのイベントも開催

鳴門公園(瀬戸内海国立公園)の中、周りの自然に溶け込むように立つ「大塚国際美術館」。鳴門名物の渦潮が見られる鳴門海峡のすぐそばに、地上3階・地下5階の巨大美術館があります。

正面玄関から階段112段分もある長いエスカレーターで上ると、何とここが地下3階。古代から現代まで、世界25カ国から厳選した名画1,000点余りを、高度なセラミック技術で再現した陶板名画の鑑賞は、この階からスタートします。

入館者を待ち受けるのは、ヴァティカン宮殿のシスティーナ礼拝堂を再現した「システィーナ・ホール」。ミケランジェロが、旧約聖書の『創世記』をもとに神と人類の壮大なストーリーを描きあげたという天井画は、曲線部分も見事に再現され、陶板であることを忘れてしまうほど。神聖な雰囲気に、しばしたたずむ人の姿を見かけます。

ドーム型の天窓から自然光が射し込む、地下3階のフロア。ここには、トルコ・カッパドキアにある「聖テオドール聖堂」や、イタリア・モンテロッツィ墓地の「鳥占い師の墓」など、古代遺跡や教会などの壁画を、環境空間ごとそのままに再現し、展示しています。この展示方法は「環境展示」と呼ばれ、同館の大きな特色。現地に行ったような臨場感を味わえます。

時代ごとに鑑賞できる系統展示 額縁やタッチも必見

地下2階に上がると、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」など、ルネサンス期の作品約140点と、レンブラント、ベラスケスなどのバロック期の作品約120点が展示されていて、圧巻です。
地下1階は、同じくバロック期の名作、ゴヤの「裸のマハ」「着衣のマハ」が。このフロアには、ゴッホ、ルソー、ルノワール、ムンクなどの近代作品が約330点。1階・2階にはピカソ、ミロなどの現代作品が約100点展示されています。
このように、時代や作風ごとに世界の名画が楽しめる系統展示も、同館の特色の一つ。

また、「生と死」「家族」など、人間にとって普遍的なテーマについて、画家達が描いた代表的な作品が時代を超えて展示されている「テーマ展示」も、画像それぞれの世界観が垣間みられて興味深い。

基本的に著作権交渉をした当時のものを再現したという額縁も見事。

「最後の晩餐」の修復前後を比較展示 モネの「大睡蓮」は屋外で鑑賞

「最後の晩餐」の修復前(写真左)と修復後(同右)
「最後の晩餐」の修復前(写真左)と修復後(同右)。
2005年には、ダ・ヴィンチ・コードツアーが同館の人気に
モネの池を眺めながら軽食やお茶がいただける「カフェ・ド・シヴェルニー」
モネの池を眺めながら軽食やお茶がいただける「カフェ・ド・シヴェルニー」

小説「ダ・ヴィンチ・コード」でも話題になった、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。イタリア本国では1999年5月に20年以上の歳月をかけた修復が完了しましたが、同館にはこの作品の修復前と修復後が、対面して展示されています。「普通は修復が済んでしまうと、修復前の絵は見られない訳です。前と後を同時に展示できるのは、陶板ならでは」と同館学芸部副部長・平田雅男さん。イエスの顔の表情もくっきり表れ、修復の前と後の違いがよくわかります。「修復後、イエス様の口が開いていているのが、分かりました。『この中に私を裏切る者がいる』の言葉に、十二使徒たちがざわめいている瞬間の絵です」と、平田さんの語りに、多くの人が興味をそそられるに違いありません。

地下2階から外に出ると、モネの「大睡蓮」が屋外に展示されています。屋外展示も、強い光や風雨に強い陶板だからできること。「大睡蓮」を囲むモネの池には、初夏から秋にかけて、色とりどりの睡蓮が花を咲かせます。

ボランティアガイドが充実 大塚アートくんもお目見え

館内を案内するアートくん
館内を案内するアートくん。
システィーナ・ホール前で充電中のときは、入館者が館内のどの絵に似ているかを当てる「顔診断」をします

展示スペースは距離にして約4㎞、1,000点以上の作品を効率的に見るために、美術ボランティアガイドによる定時ガイドが開催されています。
現在は78人の美術ボランティアガイドが、研修を積んで活躍し、同館で欠かせない存在に。そして、この夏には館内を案内するロボット「アートくん」もお目見え。子供たちの人気者になっています。

美術の本で見たことがある…。そんな作品の原寸大の大きさや作者のタッチの再現に驚く入館者の声も。陶板美術の殿堂では、世界の名画との出合いに感動の連続です。
「今後は焼失してしまった名画や、古代の遺跡の復元などもやりたいですね」と、同館常務理事の田中秋筰さん。開館20周年事業では、どのような作品が加わるのか、楽しみが尽きません。

取材/瀬戸内ミュージアムネットワークアドバイザー 山木朝彦

DATA

鳴門市鳴門町 鳴門公園内
TEL/088(687)3737
開館/午前9時30分~午後5時。月曜休館(祝日の場合翌日)
1月は正月明けに連続休館あり、7・8月無休
入館料/小・中・高生520円、大学生2,100円、一般3,150円
アクセス/鳴門北ICから車で3分
HP/http://www.o-museum.or.jp/

大塚国際美術館 アクセスマップ

せとうち美術館ネットワークとは

瀬戸内の美術館が相互にネットワークを形成して、地域全体としてアートの魅力の発信する組織が「せとうち美術館ネットワーク」です。ネットワークでは「子どものアート感想文」募集などを通じて教育普及活動にも力を尽くしています。

せとうち美術館ネットワークの詳細については、ホームページにてご紹介しています。
http://www.jb-honshi.co.jp/museum/

TOPに戻る