秋のある日、料理をしながらふと手を止めた。毎日使う食器がいつも同じ。主婦としては、使いやすさと収納のよさを優先にしがちだけれど、変わりない日常で、ちょっと食器の冒険をしてみてもいいかもしれない。
以前から気になっていた砥部の町へ、器探しに出かけよう。1泊2日の家族旅行で、子どもたちにも、いつもと違う風景を見せてあげたい。
そうして訪れた、この砥部町。国道沿いの砥部町役場を過ぎ、西へ折れると、そこは砥部焼の里だ。
町の通りのあちこちで、個性的な陶磁器のオブジェを見かける。台座が砥石で、色々な窯元オリジナルのモダンなアート作品。いたるところに陶板の壁画もあって、焼き物の里に来た、という実感が湧いてきた。
そんな陶芸作品を指差して歩きながら、道はいつしかゆるやかな上り坂へと続いていた。小高い丘の上に到着し、町を見下ろす。眼下に広がるのは、山に囲まれたのどかな風景だ。さわやかな秋の風が吹いてきて、とてもいい気分。窯元だろうか、レンガ色の煙突も点在している。さあ、どこから入ってみようか。