高松市の中心部から南へ車で約40分。気軽に行ける距離なのに、どんどん山深くなっていく。塩江温泉郷は、約1300年前に名僧行基が発見したと伝えられる名湯。弘法大師もこの地で修行し、万人に湯治をすすめたといい、古くから病や傷の療養にたくさんの人が訪れる湯治場だった。今も愛好家に親しまれる名温泉郷で、香東川沿いに良質の湯宿が点在し、ひなびた風情がしばし喧噪を離れて疲れを癒やすのにちょうどいい。
待望の行基の湯へ。ここを入らずして塩江温泉郷を語れない立ち寄り湯だ。香東川に架かる木製の橋を渡る。林業の町らしく木材をふんだんに使った古民家風の建物が趣深く、山あいの景色によくなじむ。内湯は天井が高く、太い梁がむき出しで昔の湯治場のようだ。石組みの露天風呂は風や木々の葉音を聞きながらのんびりできる。
湯上がり後は少し周辺を散策するのがいい。何気ない路地の風景に、野趣あふれる自然に、小さな感動がある。ぐるっと巡って戻ってきたら、無料の足湯で再び温まろう。
住所/香川県高松市塩江町安原上東37-1
TEL/087-893-1126
営業時間/9:00~22:00(21:30受付終了)
※11月から翌年3月末日までは21:00まで
定休日/第1・3火曜日(祝日の場合は翌日)
料金/大人470円、小人(6歳~11歳)240円、高齢者(60歳以上)360円
塩江温泉郷は源泉がいくつかある。自家源泉をもっている湯宿もあり、趣向の違う湯をはしごするのも楽しい。
隠れ家風に楽しめるのは、さぬき温泉。行基の湯からさらに奥深い山の中に立つ宿で、大自然に囲まれた露天風呂は目の前をさえぎるものがなく、女湯は竹林を眺めながら、男湯は眼下に川が流れ、季節や時間によって変化する自然を愛でることができる。敷地内から湧き出る湯は弱アルカリ性でとろっとしていて、肌がすべすべになる。歩きお遍路さんがここで疲れを癒やし、四国別格二十霊場大瀧寺や八十八番札所大窪寺へお参りすることもあるそうだ。非日常の贅沢をしみじみ感じる。
住所/香川県高松市塩江町安原上東2065-1
TEL/087-893-0300
【日帰り入浴】
営業時間/ 9:00〜21:00(20:30受付終了)
定休日/第2・4水曜日(祝日の場合は翌日)
料金/大人500円、小学生300円、2歳以上200円
【宿泊】
料金/1泊2食付9,550円~(4名1室、大人1名)
香東川沿いの道を一本東に入った路地は「温泉通り」と呼ばれ、かつて湯治客が行き交い、温泉宿が軒を連ねていた場所。そこで今も変わらず営業しているのが魚虎旅館だ。家族経営のアットホームな宿で、温泉はもちろん山の幸、川の幸を使った料理が評判。田舎に帰ってきたみたいに温かく迎えてくれる。ムササビやイノシシの剥製があったり、エントランスの床がシースルーの池になっていて鯉が泳いでいたりと驚かされるが、山あいの旅館らしくほっこりする。池は湧き出る地下水対策としてつくられたそうで、温泉だけでなくおいしい水があるという証拠だ。
食事の前に温泉でリラックス。こじんまりとした家族風呂だが空いていればいつでも入浴でき、人目を気にせずゆっくり浸かれるのがいい。お待ちかねの料理はしし鍋だ。地元の漁師さんが獲ってすぐに血抜きをしたイノシシを一頭丸ごと買い付け、手早くご主人がさばいているから臭みがない。煮込んでも身は固くならず、濃厚な旨みが広がり、たっぷりのった脂身があっさりしていて甘い。自家製味噌だしが実によく合う。ご主人や女将さんとの語らいも楽しく、元気を与えてもらった。
住所/香川県高松市塩江町安原上東442-2
TEL/087-893-0121
【宿泊】
料金/一般プラン1泊2食(1名)8,640円~、
【食事のみ(入浴可)】
料金/1食(昼食または夕食)1名3,240円
魚虎旅館の道を隔てた向かいには、昼間、ご主人が営む蕎麦屋「はなれ」がある。ここの蕎麦が絶品なのだ。そば粉8に対して、小麦粉2の割合で混ぜた江戸前の二八蕎麦は、つるりと滑り落ちるような喉ごしで甘みがある。「5分で味が変わるのですぐに食べてください」とご主人。そう、蕎麦は生ものなのだ。
住所/香川県高松市塩江町安原上東444-2
TEL/087-893-0121
営業時間/11:30~14:00、夜(要予約)
定休日/月曜日(祝日の場合は翌日)
高松市の南部、門前町として開けた仏生山は、江戸時代の商家や町屋が残る情緒あふれる町。その中で目を引くスタイリッシュな建物が仏生山温泉だ。
中庭を囲むように内湯と露天風呂が配され、自家源泉からくみ上げて1分以内のフレッシュな湯がかけ流しであふれている。とろとろの重曹泉は美人の湯といわれ、肌がなめらかに。ぬるめの湯に浸かるとまとわりつくように気泡がつき、血行が促される。ここではゆっくり湯船で本を読むことができ、贅沢な時間を楽しめる。入浴後は緑と陽光が降り注ぐスペースで思い思いに過ごせ、時間が経つのを忘れてしまう。隣接して宿泊施設もあり、ここを拠点にまち巡りを楽しむのもいい。
住所/香川県高松市仏生山町乙114-5
TEL/087-889-7750
【日帰り入浴】
営業時間/平日11:00〜24:00(23:00受付終了) 土日祝9:00〜24:00(23:00受付終了)
定休日/第4火曜日
料金/大人600円(中学生以上)、子供300円(3歳以上)
【宿泊】
宿泊は、仏生山まちぐるみ旅館にて。
TEL/087-889-7750
料金/1人1部屋6,800円、2人1部屋9,800円 ※小学生以下は宿泊できません。食事なし。
門をくぐった途端に別世界が広がっていた。徳島県の静かな山あいにある御所 社乃森は、平安時代の雅やかな世界を再現した温泉旅館。寝殿造りの建物は、灯りや調度など時代考証に基づいてしつらえてあり、優雅。神楽舞を見たり、貴族が楽しんでいたというお香遊びや、投扇興という扇を飛ばして的に当てる遊びに興じたり。女性は十二単衣、男性は直衣など平安装束の着付け体験ができ、所作や言葉づかいまで変わってくるから不思議だ。
露天の湯殿は、ナトリウム炭酸水素塩泉100%かけ流しで、柔らかな湯は化粧水のよう。夜は月明かりや灯籠に照らされ幻想的で、特別な時間に心も体も満たされていく。
住所/徳島県阿波市土成町宮川内字落久保71-2
TEL/088-695-5846
【宿泊】
料金/1泊2食付 一般室39,500円(2名1室)など
※12歳以下は宿泊不可
【入浴】
宿泊者のみ
【着付け体験料】
十二単衣着付け10,000円、直衣10,000円(要予約)