大三島
愛媛県今治市
愛媛県今治市
瀬戸内海で6番目の大きさを誇る芸予諸島最大の大三島(愛媛県)は、しまなみ海道が通る島の一つです。サイクリストの聖地とも謳われ、自転車を持ち込める宿泊施設も増え、国内外から多くの人たちが訪れています。
一方で、いにしえから大三島は「神の島」と呼ばれてきました。それは、日本総鎮守とも呼ばれる大山祇神社が鎮座し、ご祭神の大山祇神は、山、海、戦の神として、古来、歴史上の名だたる人物から崇敬されてきたからです。
厳粛な気をまとい、かつて神社で多くの願いを捧げた者たちの魂が今も漂っていそうな雰囲気があります。
大山祇神社が現在の宮浦(大三島町)へ移遷されたのは、719年のこと。それ以前は瀬戸(上浦町)に祀られていたと伝わっています。伊予國の守護職で三島水軍の河野一族は、大山祇神社の氏子だったそうです。
境内の宝物館には、全国の国宝と国の重要文化財の指定を受けた多くの武具類が保存展示されています。源平合戦で大勝を収めた源義経が奉納した「赤絲威鎧・大袖付」や、鎌倉時代に源頼朝が奉納した「紫綾威鎧・大袖付」などの超貴重な“本物”をズラリと見ることができます。
さらに、そのスゴさは収集や出土したものではなく、全て直接奉納されてきたもの。いくつもの時代を経て、今に残っているのです。
近年は、サイクリングしながらアートを巡るのも人気。大山祇神社に隣接した現代日本画を展示する「大三島美術館」や国内外のアーティスト作品を展示する「ところミュージアム大三島」、島の風光に溶け込む「伊東豊雄建築ミュージアム」などあって、アートや建築好きにはもってこいの島です。
もちろん、島から多々羅大橋の美しい造形美を眺めるのもおすすめ。潮騒や潮風を感じながら、歴史やアートを探訪する自転車旅はいかがでしょう?
旅作家・元編集者。著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など。 2014年に広島(香川県)で島の有志と『島プロジェクト』を立ち上げ「ゲストハウスひるねこ」をオープン。 2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。産経新聞などで連載中。