明け方の4時。
まだ暗い海の上を、船が沖に向かって滑り出していきます。
大浜漁港(今治市)の漁師・桧垣繁信さんは、幻の魚と言われるようになったアコウを求めて「ひと月のうち、引き潮になる2~3日間が勝負」と言います。砂浜ではなく、山もあり谷もある海底の、網も届かない岩陰に生息するアコウは、「一本釣りでないと」と話す桧垣さん。夏の名魚として、かつては大量に獲れたアコウも、今は数が減り、大変な高級魚として珍重されています。地元の人でもなかなか食卓に並ばない高価な魚で、その味は鯛よりずっとうまいと評判です。
そんな数少ないアコウを釣るには、エサが命。桧垣さんは、「エビの鼻がけやね」と、活きのいいエビを手にします。このエビが死なないよう、鼻先に釣り針を上手に刺して、30~40メートルの海中へ降ろします。「夏の産卵期には、海底のアコウも浮いてくる。恋の季節やから」と笑います。
港に戻るのは、正午過ぎ。この日は予想通り、アコウも3匹かかりました。食べ方を尋ねると、「あらいが美味しいね。漁師は、煮付けにして一杯飲むのが手軽で一番うまい」とのこと。何とも味わってみたくなりました。
●乗合船の問い合わせ:TEL/0898(23)3737 大浜漁業協同組合まで
- 一本釣り漁師の中でも桧垣さんはアコウ釣りの名人