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女性たちの感性が光る、尾道帆布のバッグ

かつて北前船の寄港地として栄えた尾道には、帆船の帆に使われる帆布の工場が10社ほどあった。
時代の波にのまれ、残ったのは1軒のみとなったが、尾道を愛する人たちに新たな生命を吹き込まれ、 ポップなかばんとして輝きを放っている。 手作りゆえに一つひとつ表情が違うのも味わい深い。

尾道帆布

伝統の帆布がポップなバッグになった

尾道の商店街をぶらり歩く。レトロなカフェや雑貨店、石畳の路地があり、どこか懐かしさを覚える。目指す工房尾道帆布はその一角にある。

帆布は綿100%の平織りの厚手の布で、丈夫で通気性が良く、使うほどに味わいが出る。船の帆以外にテントや作業服に使われ、どちらかというと武骨なイメージがあるが、工房尾道帆布の小物やバッグはとってもポップ。目の覚めるような発色や、トレンドを取り入れたデザインがあり、持っているだけで気分が弾みそう。なんでも女性スタッフの自由な発想でつくられているそうで、地元の企業や大学とコラボレーションした商品も多い。満1歳になる子どもに背負わせる誕生餅がすっぽり入るリュックや、サイクリングに便利なグッズなど使い勝手が良くかわいい。

店の奥には工房もあり、作業風景を見ることができるのがおもしろい。一つひとつ大切に、丁寧に作られていることに感動した。

(左)誕生餅を入れる「子どもリュック」 5,000円(税別)
(右)裏側に持ち手がついた「Hanpuクラッチ」5,000円(税別)
NPO法人工房おのみち帆布理事長 木織さん(右)と店長の田口さん(左)
店と工房が一緒なので直接お客様の意見を聞いて商品に反映することも多い
北前船をモチーフにしたロゴも自分たちで考えた

創業時と変わらぬ製法が

「素敵! 何かに使えるんじゃない?」

このときから工房尾道帆布は始まったと代表の木織雅子さんは目を輝かせる。尾道で唯一稼働している向島の帆布工場に広島県中小企業家同友会の女性部の仲間たちと一緒に見学に行ったとき、綿埃が降り積もる中でカタカタと大音量を響かせ、織機が帆布を織り上げていくのを見て、別次元に迷い込んでしまったみたいに胸が高鳴ったという。その頃ちょうど尾道のおみやげをつくりたいという話が持ち上がっていて、女性たちは誰もが「これだ!」と確信した。そうして小さなポーチづくりから始め、それが評判を呼び、どんどんアイテムが増えていったのだ。

他の工場が閉鎖しても、「自分たちにはこの仕事しかないから」と、帆布工場の高橋浩社長は実直に創業時と同じ製法で帆布を作り続けている。だからこそ高い品質が守られ、尾道帆布ブランドにひかれる人が多いのだろう。

昭和30年代の機械が現役で活躍中。昭和9年の創業以来、同じ製法で作り続けている
熟練の職人さんによってあっという間にエプロンが縫い上がる
「木織さんたちの手で、帆布がおしゃれに変身してびっくりした」と高橋社長の奥様
バリエーション豊富なバッグの数々。修理も可能で長く愛用できる。 トートバッグ 6,600円(税別)
手作りゆえに一つひとつ表情が違うのも味わい深い。ペンケース600円(税別)
ポーチは500円(税別)とリーズナブルで、おみやげにぴったり
尾道オリジナルプリント(左)でべらねこ、(右)いかり
【DATA】尾道帆布株式会社(工場)

住所/広島県尾道市向東町1247 TEL/0848-44-2203

【DATA】NPO法人 工房尾道帆布

住所/広島県尾道市土堂2-1-16 TEL/00848-24-0807
営業時間/10:00~18:00 定休日/木曜日

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瀬戸内カラーの草木染め

植物のマジック瀬戸内の色に魅せられて

耕作放棄地を借りて綿花を栽培。収穫体験は大にぎわい
耕作放棄地を借りて綿花を栽培。収穫体験は大にぎわい

綿花を栽培し、地元の植物を使った草木染めで、天然素材の良さを広めたいと活動しているのは、尾道帆布の工場の隣にある立花テキスタイル研究所。代表の新里カオリさんは、大学で染色を学び、尾道を旅行で訪れたときに帆布工場や瀬戸内の気候、自然に魅せられ、移住してきたのだとか。このあたりは綿栽培に最適な地で、染料になる植物の宝庫。知らないものにとってはただの木端だけれど、ビワの枝を煮出すとピンクに、モモは黄色に、除虫菊はグリーンの染料になるというから驚きだ。新里さんたちが発見した色もあり、植物のマジックに感動する。

大切にしているのは、「人や自然になるべく負担をかけないこと」。農家さんが廃棄する果樹の剪定枝を買い取って染料にしたのもその一つだ。そんなふうに地域で不要とされているものを必要なものに変化させている立花テキスタイル研究所。これからもっともっと有効活用できる染色材料が発掘され、尾道をはじめしまなみ海道らしい色や商品が生まれてくるのだろう。とても楽しみだ。

(左)ブイトート鉄粉プリント7,500円(税別)
(右)バケツバッグ鉄粉プリント6,500円(税別)
ワタ染め(奥)と柿渋染め(中央)、柿渋鉄媒染(手前)のボートバッグ 10,700円(税別)
(左)研究所で生み出された色の数々 (右)鉄粉
江戸時代には北前船の寄港地として尾道は繁栄した。尾道水道を挟んだ先が向島
【DATA】立花テキスタイル研究所

住所/広島県尾道市向東町1247 TEL/0848-45-2319
営業時間/10:00~17:30 定休日/日曜日、月曜日、年末年始

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NAGIの自転車

路地もしまなみ海道もスーイスイ!

完成車 148,000円(税別)
完成車 148,000円(税別)

尾道は坂や路地が多く、散策は歩いてと考えていたけれど、頼もしい相棒ができた。尾道生まれの、尾道を走るための自転車「NAGI」。タイヤが小さく、軽くて、こまわりがきいて、細い路地だって、しまなみ海道のロングライドだって快適だ。

開発したのは地元の塗装設備などの専門メーカー「アンデックス」。社内ベンチャー企画でスタートしたプロジェクトは、サイクリストでもある高橋要一さんがチーフとなり、誰が、どこで、どういうふうに乗るのかに徹底的にこだわってつくったのだとか。開発過程では、実業団の選手やパーツメーカーなど社外ブレーンに技術的なアドバイスを求め、SNSを利用して一般の人にも尾道を走って楽しい自転車にするための意見を求めた。それらが反映されているから乗り心地が良いのだ。これがあれば旅がもっと楽しくなること間違いない。

女性用はハンドルが小さめなど、細かい気配りが心憎い
細い路地も快適
レンタサイクルで利用できる。瀬戸内をイメージした「しまなみブルー」と「はっさくイエロー」がおしゃれ
「NAGI」の生みの親、高橋要一さん。「尾道を走れれば、どんな街で乗っても快適です」
スマホが充電できる。漕いで充電してね!
【DATA】NAGI SPEED PROJECT(アンデックス株式会社内)

住所/広島県尾道市東尾道15-29 TEL/0848-46-3751
営業時間/10:00~19:00 定休日/不定期(イベント時は休み)

こんな楽しみも

住宅街のかわいい
無人雑貨店Bear Home(向島)

雑貨好きにはたまらないかわいいバッグや小物が並ぶ、無人販売のユニークな雑貨店。現役ママさんの手作りなので、隅々に細やかな気配りがあるのが嬉しい。温もりある木工品はお父様作。時々フレンチバス「青空号」で移動販売もあるのでお楽しみに。

【DATA】青空雑貨店 Bear Home

住所/尾道市向東町 定休日/不定期(ブログで要確認)。
移動販売「青空マルシェ」は4/21にネッツトヨタ中国尾道店にて開催。
blog http://bearhome.blog86.fc2.com/

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