子どものアート感想文 応募作品のご紹介

講評1

岡山大学(美術教育学) 赤木 里香子

私たちは、ボタンを押せばすぐカラー画像を見られる手軽なカメラに親しんでいます。でも、目を閉じてもまたその情景が見えてくる、そんな体験の喜びは特別なものでしょう。この絵が描かれた頃、写真の技術は現在ほど進んでいませんでしたが、ミレーは絵で「風」を表わせたわけですね。大切なのは、ミレーも伊禮くんも持っている、風景の美しさを感じ取る力です。絵か写真かを問わず、感じる力を刺激する作品に、これからも出会えますように。

講評2

鳴門教育大学(美術教育学) 山木 朝彦

絵の中に時間が流れているというのは、万紘 くんの大発見です。ほんものそっくりに描いているようにみえる作品でも、その風景を前にしてデッサンを繰り返す画家たちの作品には、知らず知らずのうちに画家が対象に抱いた愛着や解釈が反映しています。草が風に揺れる時間、そして、間断なく波が押し寄せる悠久の時をミレーは慈しみ、この断崖を描きたくなったのでしょう。絵の中の時間を味わうことで、ミレーが抱いた「気分」に、万紘くんは気づいたはずです。