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芳しい香りに誘われて、お気に入りの醤油を探しに行こう。

マルキン醤油は木桶の所有本数が多く、天然醸造蔵ギャラリーステージからは100本以上の熟成中の木桶を見ることができる。

明治時代には400軒もの醤油蔵があった小豆島。醤の郷と呼ばれるエリアには今も醤油蔵が立ち並び、伝統の木桶仕込みで醤油がつくられている。

醤の郷を目指し、島南東部へ車を走らせる。小豆島の醤油のほとんどは、全国で1%以下になった木桶仕込みでつくられている。日本で使われている木桶の3分の1が、なんとここにあるという。手間ひまかけた醤油は格別で、蔵ごとに味が違い、涼やかな秋風にのって運ばれる醤油の香りが食欲を刺激する。レトロな町並みを散策しながら好みの醤油に出会えそうだ。

癒しの風景がいっぱい
醤油の菌で黒くなった屋根瓦は木桶仕込みの証

醤の郷で一番奥にあるヤマロク醤油を訪ねた。もろみ蔵に足を踏み入れた途端、なんともいえない甘い香りで満たされる。木桶や柱、梁、土壁にいたるまでふわふわの白っぽいものがついている。これがもろみの発酵を促す乳酸菌や酵母菌。ヤマロク醤油の蔵には100種類以上の菌が住み着いている。蔵によって固有の菌があり、ヤマロク醤油の味と香りはこの蔵で、木桶でなければ生まれないのだ。

五代目主人の山本康夫さんは、この醤油を次代にも残したいと木桶づくりにも取り組んでいる。大きな木桶をつくる桶屋は日本で1社しか残っておらず、技術が途絶えると木桶で仕込む日本古来の発酵調味料がなくなってしまうと、自ら桶屋に弟子入りしたのだ。木桶で熟成された醤油は塩かどが取れてまろやかで、うま味と香りの余韻が後々まで残る。本物を味わうとその素晴らしさがわかる。

木桶は150年ぐらい使えるという。桶ごとにクセがあり、土壁の近くや梁の下には落下菌が多く、微妙に味が変わる。
驚くほどうまい!
醤油の絞りかすを肥料にして育てた「醤トマト」。驚くほど甘く、うま味があり、これから人気が出そうだ。
ヤマロク醤油の菌は見学者が来るとなぜか活発に発酵するようになるとか。ポコポコッという音が最初より大きくなった気がする。
看板商品の『鶴醤』は、一度熟成させた醤油に塩以外の原料を加えて再仕込みし約4年熟成。まろやかで深いコクがある。
『アイスクリーム鶴醤かけかけ』320円
塩キャラメイルのような味!
『酪醤』 1,290円
醤油の香ばしさがチーズのコクを引き立てる!
ヤマロク醤油

住所/香川県小豆郡小豆島町安田甲1607 
TEL/0879-82-0666 
「ヤマロク茶屋」 
営業時間/9:00~17:00 
定休日/年中無休 
※もろみ蔵見学は随時可能

散策の休憩にヤマサン醤油

1846年創業の小豆島町で一番古い醤油屋さん。この一画は黒焼杉板の趣きある醤油蔵が続き、タイムスリップした気分に浸れる。蔵の前には自社製品などを買える「気まぐれ麹部屋」があり、イートインスペースでは醤油を使ったご当地グルメ「ひしお丼」を味わえる。足掛け3年かけてつくる再仕込み醤油をフライパンで焦がし、ご飯にからめてあるのがおいしさの秘密だ。他にもオーガニックのオリーブを栽培し、燻製にしたオリーブオイルや佃煮があり、スモーキーな香りが癖になる。

『チャーシュー丼(ひしお丼) 』(手前) 1,000円
濃い口醤油で味付けし、豚肉のうまみを引き出したチャーシューが美味。
『ハンバーグ丼(ひしお丼)』(奥) 1,200円
自家製オリーブの実の新漬けが入ったハンバーグは、厚みがあってジューシー。あっさりした味わいで焦がし醤油をからめたご飯とよくあう。もろみをつけるとコクが増す。

住所/香川県小豆郡小豆島町馬木甲142 
TEL/0879-82-1014 
「気まぐれ麹部屋」 
営業時間/9:00~17:00 
定休日/不定休 
※ひしお丼を必ず食べたい場合は、事前予約を。

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日本の原風景の中で、香り豊かな棚田米を食す!

小豆島のほぼ真ん中、中山地区には「中山の千枚田」と呼ばれる棚田が広がっている。ここで収穫した米や小豆島の旬の食材を家庭の味で楽しませてくれるのが、こまめ食堂だ。もとは昭和初期の精米所で、土壁や土間、懐かしいモノが置かれていて郷愁を誘う。

看板メニューは「棚田のおにぎり定食」。棚田米のおにぎりに、地元でとれた旬の魚や野菜を使った揚げ物、煮物、酢の物がついてボリューム満点。素朴な味付けで田舎に帰ってきたみたいだ。おにぎりは口の中でほろほろほどけ、控えめな塩加減が米の甘みを引き立てる。昼夜の寒暖差と棚田の上流域から湧き出る「湯舟の名水」がおいしい米を育て、炊くときも名水を氷結水にして使っているそうだ。農村歌舞伎が上演される10月の第2日曜日からは新米を味わえるのも嬉しい。移りゆく景色と味を求めて何度でも来たくなる。

緑まばゆい夏、黄金色の稲穂がたれる秋と、棚田に四季折々の日本の原風景を見ることができる。
夕方には冷たい島風が吹きおろし、一気に気温が下がる。
瀬戸内国際芸術祭の作品「オリーブの夢」が美しい棚田の風景にとけ込んでいる。
2010年の瀬戸内国際芸術祭の時に、精米所の元の姿をできるだけ変えずに再生。閉幕後はクローズしたものの、地元の声を受けて継続することに。
レトロな看板や精米の機械、テーブルの脚は納屋に転がっていたお酒のケースを使用するなどレアなモノがいろいろ。
棚田のおにぎり定食は「お母さんが握ったおにぎりの次においしいものにしたい」と、あまり水をつけずにふわっと握っている。
季節の果物を使ったスウィーツも絶品!
こまめ食堂

住所/香川県小豆郡小豆島町中山1512-2 TEL/080-2984-9391 
営業時間/11:00~16:00(L.O.15:00) 定休日/火曜日・隔週水曜日

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甘い麹の香りに幸せ感じる、寒霞渓のふもとの麹屋さん。

寒霞渓のふもと、のどかな田んぼや畑が広がる中に、家族三代が営む小さな麹屋さんがある。名前は森製麹所。寒霞渓のわき水を使って米をつくり、麹を仕込んでいる。

米麹は、麹室の中で蒸した米に麹菌をまぶし、寝かせて発酵させていく。温度管理が大事で、なかでも温度が下がらないようにかき混ぜ、もみほぐす作業は時間との戦いだ。そうしてできあがった米麹は隅々にまで麹菌がいきわたり、ふっかふか。甘酒にするとふくよかな香りと甘みが広がり、ほっこりする。

この米麹に大豆と塩を加えて味噌もつくっている。余計なものを加えず、発酵止めをしていない生きたままの味噌だから香り高くまろやか。特に「極」味噌は、自家製大豆を一粒一粒選別し、杉桶で仕込んだ限定品で豊かなコクがある。実はこの杉桶はヤマロク醤油の山本さんから贈られたもの。杉桶にもっとたくさんの菌が住み着くとさらにおいしくなるというから楽しみだ。

地元の人のみならず、島外のファンも多い甘酒麹(230g400円)。
代々使っている煉瓦造りの麹室
麹の量が多く、和え物や味噌漬けにもぴったりの「甘みそ」、少し濃い味の「中みそ」(各1kg700円)を販売。左上は限定品の「極」(400g1,800円)。
森製麹所

おじいちゃんとおばあちゃんが年をとってやめようかと考えていたとき、お孫さんが「残したい」と跡を継ぎ、4代目に。隣はお母さん。

住所/香川県小豆郡小豆島町神懸通甲1510 
TEL/0879-82-0691
※家族だけで仕込んでいるため、甘酒麹も味噌も多くはつくれず品切れになることも。欲しい人は電話で確認し、訪問するか、電話で注文を。
※価格はすべて森製麹所直売の場合です。
  

小豆島随一の景勝地、寒霞渓

火山活動によってできた岩石が風化し、奇岩や垂直にそそり立つ岩壁が絶景をつくる寒霞渓。秋は50種以上の自生植物がいっせいに紅葉し、山全体が燃えるように染まって美しい。ロープウェイに乗ると、深い渓谷美と瀬戸内海を一望しながら快適な空中散歩を楽しめる。

寒霞渓ロープウェイ
住所/香川県小豆郡小豆島町神懸通乙168 
TEL/0879-82-2171 
料金/往復:大人1,470円、小人740円 片道:大人810円、小人410円 
営業時間/8:30~17:00 (季節により変動あり) 
定休日/なし

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