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「美術館に行こう。」-私の美術館体験記 応募作品のご紹介

美術館体験記 広島県・広島県立美術館 写真

広島市 重藤さん(男性)

訪問日:2016年9月20日

東山芸術の集大成・唐招提寺障壁画全68面が広島初公開との触れ込みに惹かれ、「東山魁夷-自然と人、そして町」という展覧会を広島県立美術館で鑑賞してきました。

東山魁夷画伯については、日本画の巨匠とか、戦後の日本を代表する国民的画家とか形容されていますが、今回の展覧会を観覧して改めて納得させられました。また、これまでも市川市東山魁夷記念館や香川県立東山魁夷せとうち美術館などで、東山画伯の作品を数多くみてきましたが、このたびの観覧では、本格的な回顧展として初期の作品から絶筆となる「夕星」まで、詩情豊かな精神世界を思う存分に堪能することができました。

折しも広島市内では、現在、ひろしま美術館で「川端康成 珠玉のコレクション展」が開催されており、親交のあった東山画伯の「冬の花」(習作)や「北山初雪」などの作品をみることができます。

さらに、広島市現代美術館では「1945年±5年 戦争と復興:激動の時代に美術家は何を描いたのか」が開催されており、「戦時下の乙女」が出展されており、3館合わせて観覧することにより、東山画伯のひととなり、時代や社会との関わりなど、より多面的な理解が可能になるのではないかと思います。

さて、広島初公開となる唐招提寺の障壁画ですが、“素晴らしい”の一言につきます。およそ10年の歳月を費やして完成させたとの由、美術鑑賞の醍醐味を十分体験することができました。とりわけ今回の展示では、まるで実際の堂内で拝観しているかのような設え、照明等が施されており、東山画伯の鑑真和上への想いを込めた作図の意図がより一層感じられるよう工夫されていました。

ところで、広島県立美術館を訪れた時の楽しみは、関連プログラムが数多く開催されており、こうしたプログラムを合わせることにより、一層充実した美術鑑賞ができることや、国内の美術館の中でも最大級の規模と思われるミュージアムショップでお気に入りのグッズを見たり買ったりすることです。このショップは地元の老舗デパートが運営しており、広島ならではのグッズも多数揃えており、来館時の必見スポットになっています。

なお、美術鑑賞後に、隣接の広島藩主別邸の庭園だった縮景園を散策し、四季折々の季節を感じることができることもこの美術館の大きな魅力の一つとなっています。

鳥取市 伊藤さん(女性)

訪問日:2013年8月22日

「ピース・ミーツ・アート!」と「尊厳の芸術展」を鑑賞した。これは,広島市内にある3つの美術館、広島県立美術館・ひろしま美術館・広島市現代美術館が連携して開催する「アート・アーチ・ひろしま2013」の特別展の一つである。
 会場に足を入れると正面にピカソの「ゲルニカ」のタピスリが目に入る。その横に岡本太郎の「明日の神話」。これだけで何かを突き付けられているような気持ちにならざるを得ない。「生きる」とは何かを問われていると感じる。

第2室には、石内都の「ひろしま」シリーズ。

最後の室には、広島平和記念資料館所蔵の被爆したガラス瓶とその横に寄り添う内藤礼の人形たち。

その間には、広島ゆかりの画家たちによる戦争・原爆・平和などをテーマにした作品の数々。

初めて目の当たりにするルーシー・リーの焼き物は、静かに、しかし凛とした姿でそこにあり、千住博の「ウォーターフォール」と題する日本画は、日本画でありながら立てた画面に上方から絵具を垂らす方法で水しぶきまで表現して滝を描き出していた。

「ゴッホ展 空白のパリを追う」を開催する傍ら、これだけの企画展を実施できる広島県立美術館の底力を感じた。

同館は昭和43(1968)年、中国地方で最初の公立美術館として誕生した。当時はもっぱら会場の確保を動機として建設され、収蔵品はほとんど皆無に等しかったそうである。そこで地元作家と出身作家の善意の寄付によって収集が開始され、平成3年からは①広島県ゆかりの美術作品、②日本とアジアの工芸作品、③1920・1930年代の美術作品を特別収集の重点方針として,現在は3400点を超す(2013年現在、4200点以上)作品を収蔵するという(1996年の図版から)。

美術館の裏側では様々な御苦労があり、ひょっとすると綺麗事ばかりでないのかもしれない。しかし利用者としては大切にしていきたい文化施設であり活動である。これからも足を運んで応援する。

広島県福山市 伊藤さん(女性)

訪問日:2012年11月11日

今日は、広島県立美術館で開催された記念講演会「水とともに生きる-ヴェネツィアのライフスタイルと現代アート」を聴講した。ヴェネツィア出身で,大阪在住の現代アーテイストである彫刻家ジャンルーカ・サンヴィードさんいよるヴェネツィアの紹介である。たくさんの写真で正に現代の人々の暮らしとアートを披露してくださった。昔の塩倉庫を美術館にしているとか、(安藤忠雄さんが改修。)ビエンナーレでは、日本のアーティストも活躍しているなどのお話を聴くと、ヴェネツィアがぐっと近くに感じられる。聴講者の半数はヴェネツィアを訪れたことがあるようであった。関心のある方がお集まりになっていたということもあるのだろうけれども、知らない文化を肌で感じることは貴重である。1つ生じた疑問は今のヴェネツィアには農地はないのかということである。サン・マルコ広場以外の広場は、かつて農地だったとのお話であったが現在は石畳。農地があるとすれば高潮の被害はどのように食い止めているのであろうか。

講演に先立って楽しみにしていたのは、友の会の会員さんによる所蔵品展のボランティアガイド。なんと午前11時から午後1時50分まで丁寧に作品や作家の解説をしてくださった。ありがとうございます。ざっくばらんに絵の感想を述べ合ったり、過去の特別展や,同じ作品でも時間の年月の経過とともに色が変わってきているなどの話題にもなり、同じ美術館に何度も足を運ぶことには,また特別の喜びがあるものだと感じた。

帰宅して図録を観ると、今日初めて観たと思った作品が載っていたり、作品を観ている間には気付かなかったけれどこの人の作品だったのだと驚いたり、何度足を運んでも、何度図録を観ても、新しい発見の何と多いことか。

広島県福山市 伊藤さん(女性)

訪問日:2012年10月20日

「世界遺産 ヴェネツィア展 魅惑の芸術-千年の都」を鑑賞した。

もっとガラスや陶芸などの工芸品が多いものと思っていたところ、予想に反して絵画が多かった。ちょうど、「日経おとなのOFF 11月号 白熱西洋美術教室」のヴェネツィア派についての記事を読んだところであったのが、この鑑賞をより興味深いものにした。宗教や神話に取材した絵が多い印象であったが、そうは言ってもなるほど、セバスティアーノ・リッチの「ヴィーナスとサテュロスとキューピッド」は自由な筆使いで官能的なヴィーナスが描かれ、そしてそれは神として描かれながら、サテュロスやキューピッドとともに表情やしぐさが人間的である。

また、神戸市立博物館で開催中の「マウリッツ・ハイス美術館展」で、黄金時代のオランダ絵画を鑑賞したばかりでもあったので、その印象が新鮮なまま、比較ができたことも面白かった。どちらも貿易で栄えた都市の豊かさに支えられた芸術であるが、その主体は、ヴェネツィアでは貴族であり、オランダでは市民である。だから、ヴェネツィア派の絵画は裸婦を描くことに寛容ではあっても、世俗的とまでは言えなくて、一方オランダ絵画は風俗画などにみられるように,市民生活を描いたものが多いのだろうと感じた。

11月には、京都市美術館で開催中の「エルミタージュ美術館展」にも出掛ける予定である。こちらにもヴェネツィア派の絵画が出展されている。「エルミタージュ美術館展」では,フィレンツェの絵画との比較を楽しみにしている。
1つ1つの美術展は、もちろんそれだけで十分見応えのあるものではあるが、単にそれだけでなく、鑑賞する者の頭の中でつなげられていって、より一層広がりのあるものになっていく。観れば観るほどもっと観たくなる。

絵画だけではない。塩野七生の「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年」を読みたくなった。

絵画を通じて歴史に思いを馳せ(塩野七生が小説家であることは頭に置いて)、現在を生きる智恵や力を得て活かすことができれば、これほど嬉しいことはない。

岡山市 高津さん(女性)

訪問日:2011年8月31日

広島県立美術館で開催している所蔵作品展「画家の自画像と創作の現場」を鑑賞した。

画家の描いた自画像はイケメンではないが味がある。

右から見た顔、左から見た顔、また何十年後の顔などをじっくり見た。平板ではなかったであろう人生がうかがえるのである。裏切りとか挫折とか、簡単に言い表す事が出来ないものも含めた人生はこってりしているはずだ。けれどそれを感じさせない絵に私は立ち止まる。この人は苦しみを何を持って消化させたのだろう、と思いながら。

安芸郡 檀浦さん(男性)

訪問日:2011年3月13日

広島県立美術館へ『日本画の前衛』展が巡回してきた。これは京都、東京そして広島の3会場での特別企画展です。京都で開催されている時に、インターネットで見て「なに!日本画で前衛とは何だろう?」と興味を覚え、待っていた展覧会です。

広島出身の船田玉樹や丸木位里が主要メンバーとして活躍した歴程美術協会を主柱とし、深く掘り込んだ内容の展覧会でした。今まで見たこともない迫力のある絵も沢山あり、見た印象は、あっさりとして刺身でなく、野菜や魚・肉の鍋料理を食べた感覚でした。

展覧後は、美術館の裏口(?)から直接、広島浅野家の縮景園に歩を進める。まだ梅が咲いていたが、桃の季節ということでしょう、ちょうど桃見茶会が催されていたので、一服いただく。縮景園の季節の花木を愛でるのも楽しみで、今度広島県立美術館・縮景園を訪れるのはいつにするか、妻と談笑し浅春の一日を過ごしました。

神戸市 平井さん(女性)

訪問日:2011年1月30日

広島の美術館を巡る目的で神戸から来ました。まず足を運んだのは現代美術館。スカイウォークに乗って雪景色を眺めながら、何か山奥に吸い込まれていく感じが、非日常空間にマッチしてて、じっくり浸ることができました。

そのまま歩いて県立美術館へ向う途中、水辺のカフェにある牡蠣亭でランチ。その間猛吹雪でしたが、食べ終わって外に出ると快晴!この日はそんなことがずっと続き、とことん晴女だということを実感しました。眺めのいい水辺のカフェを散策しながら、県立美術館へ。

ここは、正面は簡素なんだけど、中に入ると、縮景園がどこからでも眺められるように大きなガラス張りになっていて、時間が許す限り、ソファに座ってはボーっと景色を眺めながら休んでました。

もちろん、鑑賞もしましたよ!お気に入りのマックス・エルンストの彫刻「オイディプス」に出会えて、大満足でした。日本の前衛陶芸家の作品も見ごたえありました。