高知に温泉地のイメージはあまりないけれど、
実は隠れた名湯が多い。泉質は多様で、質が良く、
ひとつひとつが他にない特別感を味わわせてくれる。
須崎で出会ったのは、由緒ある鉱泉とありのままの
自然を大切にした癒しの温泉宿だ。
須崎東ICを降り、桑田山と呼ばれる山の中腹を目指す。民家が途切れ、豊かな森が広がってまもなく、斜面に沿うように和モダンな建物が並ぶ「そうだ山温泉 和」が見えてきた。
ここに湧き出る鉱泉の歴史は古く、平安時代にさかのぼる。弘法大師がこの地を訪れ、鉱泉の効能に気づき、「くすり水」と名づけて広めたそうだ。地元の人に親しまれ、周辺を散策している間にも次々と人がやってくるのに驚かされる。これは絶対にいい湯に違いない!
さっそく温泉へ。ふと山の方を見るとなにやら煙があがっている。まさか、薪で湯を沸かしているではないか。20度ほどの源泉を、毎朝5時に火を入れて沸かすそうだ。燃料は裏山を間伐して出た小さな木や枝。「間伐すると山が元気になり、川がきれいになり、豊饒の海になる。循環型の温泉ですよ」とご主人の高橋和久さんが笑う。なんて贅沢で優しいのだろう。
浴槽に浸かると柔らかな湯が全身を包み込む。ツルツルすべすべの湯は美肌効果抜群だ。真横には小川が流れ、せせらぎの音や木々の緑が心をときほぐしてくれる。
料理も絶品だ。山も川も海も豊かな須崎ならではの美味が並び、凝縮されたうまみにうならされる。部屋は本館のほかに離れが一室あり、離れでは窓を全開できる半露天風呂で風流を愛でながら湯を堪能できる。「小さな宿は面白い仕掛けをしないと」と、常にお客さんや地元の人の意見を聞いて工夫しているとか。こだわりと気配りに感動の連続で、ここにいる間ずっと笑顔でいられた。
川沿いに建つ離れは土佐のヒノキやスギなどを随所に使用し、高級旅館のような風情にあふれる。120年物のカゴが裸電球に照らしだされて模様を描く壁も美しい。現在は1室のみだが、今後増やしていく予定
住所/高知県須崎市桑田山乙1122 TEL/00120(1)41268
営業時間/9:00~21:00 定休日/年中無休
料金/1泊2食付 本館9,800円~、離れの宿17,800円~(どちらも1名、税込)※料金は、料理によって異なります。
日帰り温泉入浴料/中学生以上700円、小学生350円、乳幼児250円
IC/須崎東IC
高知城から南へ下り、風格ある大門をくぐると三翠園だ。城下町としてにぎわったこのあたりを幕末の志士たちは行き来したことだろう。見事な日本庭園も、西郷隆盛と山内容堂が未来の日本について語り合った場所。目を閉じると光景が浮かぶかのようだ。
そんな歴史の息づかいを感じる三翠園の温泉は、坂本龍馬が泳いだという鏡川や、山内家歴代の墓所がある筆山が目の前に広がり、最高のロケーション。つい長湯してしまう。なめるとしょっぱいナトリウム塩化物泉が体を芯から温め、入浴後もしばらくぽかぽかが続き、肌がしっとりツルツルになる。
食事も文句なしにおいしい。料理人の技と工夫が凝らされ、繊細で深く、美しい土佐の味に自分でも驚くほど箸が進む。この宿でしか体験できない豊かな時間を心から楽しんだ。
住所/高知県高知市鷹匠町1-3-35 TEL/088(822)0131
料金/1人1泊2食付17,000円~(2名1室利用)
※料金は、料理などによって異なります
営業時間/日帰り温泉:10:00~16:00 定休日/年中無休 料金/中学生以上900円、小学生400円、幼児(3歳以上)200円 IC/高知IC
深い山並みとダム湖がつくりだすのどかな景色の中で、湖畔遊の周囲だけが別世界だった。愛らしい野花や美しい木立に囲まれ、オープンテラスが湖面に向かって広がり、まるでヨーロッパのどこかのよう。温泉は好きなときに入れるとあって、まずは料理を楽しんだ。野菜ソムリエの資格を持つ奥様の西村昌代さんが材料を厳選してつくったメニューは、野菜もごはんもしっかり素材の味がしておいしい。
温泉に入ってまた感動した。うぐいす色のとろりとしたにごり湯は、肌あたりがとても柔らかく、まるで美容液にくるまれているよう。もともとご主人の西村勝利さんが自家用に温泉を掘り、あまりにもいい湯がでたのでたくさんの人に楽しんでもらおうと始めたのだとか。植栽や内装の細部にまでこだわってつくられた空間はとても贅沢で、幸せな気持ちにさせてくれた。
住所/高知県香美市香北町有瀬100
TEL/0887(59)4777
営業時間/カフェ9:00~19:00、温泉11:00~19:00(オーダーストップはそれぞれ閉店1時間前が目安)※土日祝日および季節によって閉店時間が変わります
定休日/金曜日(祝日の場合は営業)
料金/全日850円、子供(小学生以下)半額 IC/南国IC