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珠玉の名宝がずらりこんぴらさんでアート巡り

応挙の躍動感あふれる障壁画に感動 表書院

「こんぴらさん」と親しまれている金刀比羅宮は、参拝だけでなく美術工芸品を鑑賞する楽しみがあります。御本宮まで785段続く石段の中ほどには、第一級の美術品や文化財を公開する表書院、宝物館、高橋由一館があり、心ふるわす美の世界が広がっています。
江戸中期に活躍した絵師・円山応挙の障壁画を堪能できるのは、表書院。応挙は目の前にある対象を見て描く写生画を創造しましたが、五間に及ぶ障壁画はどれも躍動感にあふれています。舞い降りる鶴などが優美な「鶴之間」。「虎之間」では親子で水を飲む「水呑みの虎」などが描かれ、今にも動きだしそうな迫力です。驚かされるのは「山水之間」。豪快に流れ落ちる滝は現実の庭の池へ流れていき、再び絵の世界に戻って海へ注ぎ込む壮大な構成になっていて、空間までも演出する応挙の世界観に感動を覚えます。

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歴史を刻むお宝がいっぱい 宝物館

正面が《三十六歌仙額》。江戸時代まで神仏習合だった金刀比羅宮には仏画や仏像が多く納められている

花崗岩を使った和洋折衷の重厚でモダンな建物が印象的なのは、宝物館。明治38年に建てられた日本最初期の博物館で、金刀比羅宮に奉納された宝物が並んでいます。入口を入ってまず目につく「三十六歌仙額」は、狩野探幽、尚信、安信の3兄弟により平安時代の和歌の名人が描かれたもの。直衣の文様や人物の表現が細やかで、思わず見入ってしまいます。小野小町が正面から描かれているのも珍しく、絶世の美女の顔を見られるのも貴重です。
2階にある国の重要文化財「十一面観音立像」も見逃せません。もとは金刀比羅宮の別当寺金光院のご本尊で、柔和な表情が美しく、当時の彩色や模様がはっきり残っています。ほかにも森の石松が清水次郎長の命を受けて納めたとされる刀や、戦国大名の長宗我部元親が讃岐国侵攻で神域を犯したことを反省して奉納した門の棟札があり、歴史を感じます。

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日本洋画の開拓者・高橋由一の魅力がわかる 高橋由一館

広々とした空間に27点を常設展示。由一が手作りした木の額も味わい深い

高橋由一館はその名の通り、日本洋画の開拓者・高橋由一のコレクション27点が展示されています。由一と金刀比羅宮の縁は、油絵に魅せられた由一が日本に油絵を普及するための資金援助を依頼し、明治12年に金刀比羅宮で開かれた琴平山博覧会に作品を出品、奉納したことによります。「豆腐」や「鯛」など身近なものを題材に、鱗の一枚にいたるまで繊細にリアルな質感で表現され、何気ないものの存在に改めて目を向けさせてくれます。
御本宮まで一気に上るのもいいですが、ぜひ立ち寄って一息。豊かな美術品に触れると心がいやされます。

DATA

住所/香川県仲多度郡琴平町892-1
TEL/0877-75-2121(社務所)
開館時間/8:30~17:00(最終入館時間16:30)
休館日/無休
料金/表書院、宝物館、高橋由一館それぞれ一般800円、高大生400円、中学生以下無料

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せとうち美術館ネットワークとは

瀬戸内の美術館が相互にネットワークを形成して、地域全体としてのアートの魅力を発信する組織が「せとうち美術館ネットワーク」です。今回紹介した2つの美術館を含め、魅力ある62の美術館・博物館が参加しています。ネットワークでは「子どものアート感想文」募集などを通じて、教育普及活動にも力を尽くしています。
HP/http://www.jb-honshi.co.jp/museum/

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