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情報誌「瀬戸マーレ」

芽吹きの春、四国遍路の第一歩を踏み出しましょう。

今回は、四国霊場巡拝の第一歩です。1番札所の霊山寺には、山門の手前に「発心」と書かれた赤い門があります。四国遍路では、徳島に始まり高知・愛媛・香川に至る霊場巡りをそれぞれ「発心・修行・菩提・涅槃」といい、人が悟りをひらいて心の平安を得るまでの4段階になぞらえています。「発心」は悟りを求める心、これから始めますという決心です。お遍路を気軽に体験してみようという初心者も、なんとなく始めるのではなく、これからご自分の心をみつめる旅をするのだという、その「初心」を自覚して始めたいものです。

1番から5番までは、札所が県道に沿ってほぼ順に並んでいます。4番大日寺と5番地蔵寺の間には山裾の遍路道などもあるので、ところどころ、歩き遍路の風情も楽しみながら巡ることができる優しいコースです。また、この巡路の周辺には、人の背丈ほどの巨大な水がめ等で知られる大谷焼の里があり、有名な阿波藍の資料を集めた展示館や藍商人の屋敷などもあります。お友達やご家族と、陶芸体験や藍染め体験と組み合わせた旅を企画してみるのも楽しいですね。

農家の庭先、畑の脇道など安全で歩きやすい遍路道が残されています。標識も分かりやすく、歩き遍路が初めての方におすすめのコースです

大谷焼の登り窯(森陶器)
江戸時代、九州から四国遍路に訪れた焼き物師が当地の赤土で焼いたのが、大谷焼の起源とされる。巨大な水がめや水盤など素朴で実用的な大物陶器のほかに、現在は美術工芸品や日用雑器も人気を得ている。
【DATA】徳島県鳴門市大麻町大谷字井利ノ肩24、Tel/088(689)0022、営業時間/月~土曜(8:30~17:00)、日曜(9:30~16:30)、工房見学/随時(日曜は不可)、作陶体験/1名から可(要予約)、体験料=1人2,160円(税込)、絵付体験/皿756円(税込)から

藍の館
江戸時代には日本の藍の9割を占めたという、阿波藍を扱う商人は莫大な富を誇っていた。藍商人の旧奥村家屋敷では邸内見学のほか、各種資料を保存・展示。昔ながらの貴重な天然藍を使った、藍染め体験もできる。
【DATA】徳島県板野郡藍住町徳命字前須西172、Tel/088(692)6317、開館/9:00~17:00(体験は16時まで)、定休/火曜(祝日は開館)、入館料/大人300円、中高生200円、小学生150円、藍染め体験/ハンカチ500円(税込)

岩田ツヤ子の碑
戦時中、食糧増産のために藍の栽培が禁止されたが、岩田ツヤ子はひそかに山奥で栽培して種を採り続けた。その努力により、戦後すぐに藍作りが復活できたという。石碑は3番から4番札所への途中に。

抱き地蔵(極楽寺)
石のお地蔵様を抱き上げて軽いと感じたら願いがかない、重ければ祈願成就にはまだ及ばずという

発心の門。いざ、四国遍路の始まり!
 
今回巡った札所

1番霊山寺(りょうぜんじ)
弘法大師が衆生を救うための霊場を開こうと修法し、天竺の霊山・霊鷲山で説法をする釈迦を感得したことから、この寺を霊山寺と名付け第1番札所と定めた。本尊:釈迦如来

2番極楽寺(ごくらくじ)
大師お手植えと伝わる巨大な長命杉は樹齢1200年の霊木。大師の夢を見、四国遍路により安産を果たしたという女性が寄進した安産大師も信仰を集めている。本尊:阿弥陀如来

3番金泉寺(こんせんじ)
村人のために弘法大師が掘った井戸から、長寿をもたらす霊水が湧き出た。その井戸は「黄金の井戸」と称されるようになり、寺名も金泉寺と改められたという。本尊:釈迦如来

4番大日寺(だいにちじ)
弘法大師が修行中に刻まれた大日如来像を祀って本寺を創建し、寺名を大日寺と号した。本堂から大師堂へ続く回廊に西国三十三観音霊場の観世音菩薩像33体を安置。本尊:大日如来

5番地蔵寺(じぞうじ)
ご本尊の胎内に、大師が彫造の勝軍地蔵菩薩像が納められているという。勝軍地蔵への信仰から源頼朝・義経、蜂須賀家など武将が多く寄進している。本尊:延命地蔵尊(胎内仏・勝軍地蔵菩薩)
 

知っておきたいお遍路の豆知識

◆巡拝を始めた「初心」を記念に残しましょう。

納経帳に札所の寺名や朱印をいただいて、記録として保存するのが一般的ですが、ほかにも納経軸、白衣などもあります。せっかくの巡拝ですから、最初にこうした用品を用意して巡れば、満願の喜びがそのまま巡拝の証として残ります。

①納経帳(のうきょうちょう)

1ページごとに御本尊名・寺名の墨書き、朱印をいただきます。
二巡、三巡目には同じ箇所に重ね印をいただきます。

②納経軸(のうきょうじく)

納経帳と同じですが、巡り終えたときに表装すれば立派な掛け軸になります。

③判衣(はんごろも、はんえ)

朱印用の白衣(判衣)を用意します。判衣は着用せず、保存専用としましょう。

④御影(おすがた、おみえ)の保存

納経の時にお寺からいただく御影は、クリアポケットのようなケースに1番から順に入れていけば、整理できます。
納経帳と一緒に保存します。

福田 恵峰(けいほう)さん 福田 恵峰(けいほう)さん
神戸市在住。会社勤めをしながら週末だけの札所めぐりを続けて、現在までに20回以上巡拝。そのほとんどが歩き遍路である。歩くたびに新しい出会いがあり、新しい自分を発見すると言う。四国八十八ヶ所霊場会公認先達。NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク、女性お遍路相談員。www.omotenashi88.net

〈公認先達〉四国八十八ヶ所霊場巡拝を重ね、弘法大師の教えに帰依し、新しく巡拝する人たちにお遍路の心得などを指導し、手本となることができると認められた人。四国八十八ヶ所霊場会が審査、認定している。
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