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周遊することで満たされる「共鳴」という物語

尖塔に付けられた風見鶏やレンガ造りで、大正ロマンを体現した「夢二郷土美術館 本館」。

岡山県 岡山市、倉敷市、総社市、高梁市

周遊することで満たされる
「共鳴」という物語

訪れる場所と場所が「共鳴」することで、満足度がさらに高まっていくcircular tour(周遊型の旅)。岡山県の4つの都市を結ぶ周遊旅は、大正ロマンの立役者である竹久夢二の世界から始まる。懐かしい昭和の香りをまとう町並みをぶらり散策したら、雪舟ゆかりの古刹(こさつ)(※)へ。心整うひと時を体験し、安藤忠雄氏の建築と珠玉のアートで締めくくる。
道中で出会う何気ない景色に、車を止めて寄り道するのも一興。帰路は、ひとつの物語を読み終えたときのような充足感に満たされる。
この秋、「共鳴」を楽しむドライブへ。

※古刹…古い時代に建立された歴史ある寺院。

MAP

波乱に満ちた生涯と
多彩な作品に酔いしれて

1884年、岡山県で生まれた竹久夢二(本名:茂次郎(もじろう))は、大正ロマンを代表する画家で、「夢二式」と呼ばれる美人画で一世を風靡したことで知られる。幼少期から絵を描くことが好きだった夢二は、数え年の18歳で上京し、早稲田実業学校専攻科に通いながら新聞や雑誌にコマ絵を寄稿。22歳のときに「夢二」と名乗り、明治末期から大正・昭和初期にかけて、その作品は多くの人に愛された。

正面のタペストリー『立田姫(たつたひめ)』は、夢二自身が「ミス・ニッポンだよ」と話したという晩年の代表作。貴重な肉筆画を、展示替えしながら紹介している。

正面のタペストリー『立田姫(たつたひめ)』は、夢二自身が「ミス・ニッポンだよ」と話したという晩年の代表作。貴重な肉筆画を、展示替えしながら紹介している。

「画業で名を残した夢二ですが、彼は詩や童謡、童話などの創作、書籍の装丁など多方面で才能を発揮しました」と話すのは、「夢二郷土美術館 本館」の学芸員・平松里美さん。夢二は広告宣伝物の制作、日用雑貨や浴衣のデザインなども手掛け、マルチクリエーターとしての顔も持ち合わせていた。詩人としては、1912年に少女雑誌に原詩が発表された『宵待草』が有名だ。バイオリン奏者の多忠亮(おおのただすけ)が曲をつけ、後年まで歌い継がれる名曲となった。

学芸員の平松さんと、水戸岡鋭治がデザインしたマスコットキャラクター「黑の助」のキャラクター看板
学芸員の平松さんと、水戸岡鋭治がデザインしたマスコットキャラクター「黑の助」のキャラクター看板。

そんな夢二の功績や人となりを知ることができる「夢二郷土美術館 本館」は、1966年に創設され、2026年に開館60周年の節目を迎えた。創設者で初代館長の松田基(もとい)は、両備グループの元代表で、「社会貢献のために夢二(作品)を岡山へと里帰りさせたい」との想いから夢二作品をコレクションした。現在、作品や資料合わせて約3000点を所蔵し、年4回の企画展を実施。常時100点以上を展示しており、肉筆画コレクションは国内随一を誇る。

中庭を望む第5展示室
中庭を望む第5展示室
1932年(亡くなる2年前)の夢二
1932年(亡くなる2年前)の夢二
1910年頃のマンドリンを持つ夢二
1910年頃のマンドリンを持つ夢二
中庭
中庭

夢二は1931年からアメリカやヨーロッパを外遊し、過酷な状況にさらされながらも芸術と向かい合った。今秋の企画展(※)では、ドイツ時代にスポットライトを当て、本邦初公開の『南枝(なんし)早春』をお披露目している。「これは夢二の世話をしてくれていた外交官夫妻へのお礼として、奥様をモデルに描いた作品なんです」と平松さんは話す。折しも夢二が渡独したのは、第二次世界大戦に向かってナチスが台頭していた頃。激動の時代に、2年半にわたって外遊し、一時帰国後には台湾へと渡った。だが、長旅の苦労が祟ったのか、1934年、夢二は51歳で病没する。

※企画展…夢二郷土美術館創立60周年記念特別展 夢二とドイツ…開催は2026年12月6日(日)まで。

夢二は恋多き人とも呼ばれる。妻の他万喜(たまき)をはじめ、モデルたちとも浮き名を流した。その一方で、漂泊者として国内外を彷徨(さまよ)い、聖書を大切に持ち歩いていたという。作品を鑑賞し、逸話を知れば知るほど、彼への興味が募っていくだろう。

竹久夢二《南枝早春》夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《南枝早春》夢二郷土美術館蔵

夢二郷土美術館 本館

住所/岡山県岡山市中区浜2-1-32
TEL/ 086-271-1000
営業時間/9:00〜17:00(入館は〜16:30)
休み/月曜(祝日、振替休日の場合は翌日)
料金/大人800円、中高大生400円、小学生300円
(特別展は別料金)
駐車場/あり
HP/ http://yumeji-art-museum.com
Instagram/ 夢二郷土美術館 本館

夢二郷土美術館 本館
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名建築に身を置いて
優雅なティータイム

大正時代の雰囲気をまとった優美な本館は、倉敷アイビースクエアなどを設計した建築家・浦辺鎮太郎が手掛けた。別棟にある「art café 夢二」は、創設50周年を機に、日本の工業デザインの第一人者・水戸岡鋭治氏の監修のもとリニューアルされた建物だ。

「art café 夢二」

開館50周年を記念して水戸岡鋭治氏の内装デザインで誕生した「art café 夢二」。第6展示室も兼ねており、夢二の復刻木版画作品などが見られる。オリジナルグッズが並ぶミュージアムショップも併設されている。〈営業時間…9:00〜16:00〉

カフェでは、夢二が愛した焼き菓子ガルバルジィとガトーショコラなどがセットになった「夢二のミニアフタヌーンティーセット」が人気。ティーポットの黒猫は、夢二がモチーフとして好んだ猫にちなんでいる。「実は、本館にはネコの〝黑の助〟も気まぐれで出勤しているんです」と平松さんが教えてくれた。10年前、夢二の命日の数日前に保護された黒猫で、不思議な縁を感じたことからお庭番(現お庭番頭)として採用したそう。黑の助をモチーフにしたオリジナルグッズもあるので、そちらもぜひチェックを。

メロンソーダにアイスクリームを浮かべた「大正浪漫クリームソーダ(800円)」は、夢二の好物だったソーダ水にちなんだメニュー。
メロンソーダにアイスクリームを浮かべた「大正浪漫クリームソーダ(800円)」は、夢二の好物だったソーダ水にちなんだメニュー。
夢二が好んで食べていたというレーズン入りの焼き菓子・ガルバルジィなどが味わえる「夢二のミニアフタヌーンティーセット(2,000円)」。
夢二が好んで食べていたというレーズン入りの焼き菓子・ガルバルジィなどが味わえる「夢二のミニアフタヌーンティーセット(2,000円)」。

時間が許せば、「夢二生家記念館・少年山荘」のある瀬戸内市にも訪れたい。夢二生家記念館は、少年時代の夢二が暮らした茅葺き屋根の古民家で、夢二の原点を知ることができる。少年山荘は、夢二自身が設計したアトリエ兼住居を1979年に忠実に復元した建物。夢二にとっては唯一の建築作品であり、ファンならずともぜひ見ておきたい。

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映画のロケ地をそぞろ歩き
坐禅体験で心身を整える

続いて、かつての港町の風情が漂い、昭和のレトロな建物が残る倉敷市玉島地区へ。江戸時代には北前船が寄港し、「西の浪速」と称されるほどの賑わいを見せた界隈は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のロケ地にもなった。中心部には5つの商店街があり、地元の人々に長年親しまれてきた老舗に加え、この地に賑わいを取り戻したいと開店した新店も見られる。

懐かしい看板を集めた通町商店街や「寿司屋オスロー」がある清心町商店街など、歩けば歩くほど魅力を掘り起こせる。
懐かしい看板を集めた通町商店街や「寿司屋オスロー」がある清心町商店街など、歩けば歩くほど魅力を掘り起こせる。
通町商店街そばの溜川に架かる「ドラム缶橋」は、ドラム缶を使った珍しい浮き橋。
通町商店街そばの溜川に架かる「ドラム缶橋」は、ドラム缶を使った珍しい浮き橋。

清心町商店街の「寿司屋オスロー」は、長年地元の人に愛された純喫茶の建物を活用した寿司店。新鮮な魚を使った寿司を、手頃な値段で味わうことができる。純喫茶時代そのままの内装もユニークだ。

オーニングテントには「純喫茶」の文字があるが、れっきとした寿司店。一風変わった店構えだが、本格派の味わいが楽しめるとあって、観光客のみならず地元の人々からも愛されている。
オーニングテントには「純喫茶」の文字があるが、れっきとした寿司店。一風変わった店構えだが、本格派の味わいが楽しめるとあって、観光客のみならず地元の人々からも愛されている。
「握り寿司10貫セット(1,800円)」は茶碗蒸し、汁物、だし巻き玉子付き。
「握り寿司10貫セット(1,800円)」は茶碗蒸し、汁物、だし巻き玉子付き。
脂がのった焼きさばを使う「さば寿司(2貫300円)」も名物。
脂がのった焼きさばを使う「さば寿司(2貫300円)」も名物。

旅は、さらに総社市へと続く。「井山寳福寺(ほうふくじ)」は、臨済宗東福寺派の中本山として、かつて脇寺55、末寺300以上という寺勢を誇った禅宗寺院。室町時代の画僧・雪舟が、子どもの頃にこの寺で修行し、本物と見間違うほどのネズミの絵を涙で描いたというエピソードでも知られる。仏殿や方丈など七堂伽藍を備えた境内は、禅寺らしい趣が漂う。

足は結跏趺坐(けっかふざ)または半跏趺坐(はんかふざ)を組むため、服装はパンツが望ましい。希望者は椅子坐禅とすることも可能(坐禅体験は電話により日時決定)、志納金(献瓦)1,000円。

小鍛冶一圭(こかじいっけい)御住職に作法を教わる坐禅体験も好評だ。調身、調息、調心という三調(さんちょう)(※)を基本に無我の境地を目指すという体験は、現代だからこそ貴重。坐禅後に散策する紅葉の境内は、ことさらに美しく感じられる。

小鍛冶御住職
毎月第2日曜(8月を除く)には、中学生以上を対象に定例坐禅会を実施しており、予約不要で参加できる(志納金500円)。86代目となる小鍛冶御住職があたたかく指導している。

※三調…体、呼吸、心を調(ととの)えること。

倉敷市玉島地区

TEL/ 086-522-8114
(倉敷市玉島支所産業課)

倉敷市玉島地区

寿司屋オスロー

住所/岡山県倉敷市玉島中央町3-13-29
TEL/ 070-1890-0360
営業時間/11:00〜15:00(14:30 L.O.)
完売次第閉店、夜は予約制
休み/月曜(祝日、振替休日の場合は翌日)
料金/大人800円、中高大生400円、小学生300円
(特別展は別料金)
駐車場/あり
休み/水曜
Instagram/ 寿司屋オスロー

円形のカウンターも面白い店内。

円形のカウンターも面白い店内。

井山寳福寺

住所/岡山県総社市井尻野1968
TEL/ 0866-92-0024
営業時間/5:00〜17:00
駐車場/あり
HP/ http://iyama-hofukuji.jp

井山寳福寺
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児島虎次郎と安藤忠雄氏
時代を超えたコラボレーション

1881年に高梁市で生まれた児島虎次郎は、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で西洋画を学んだ。実業家・大原孫三郎が設立した大原奨学会の奨学生となり、卒業後は大原家の支援を受けてヨーロッパに留学。ベルギーの美術学校を首席で卒業した。また、絵画制作の傍ら、孫三郎の依頼を受けて三度にわたり渡欧し、モネやエル・グレコ、ゴーギャンらの絵画を買い付けた。これらがのちに倉敷市にある大原美術館の礎となったという。

喫茶テラスの壁

喫茶テラスの壁。ローレンス・ウィナーの作品「HERE FOR A TIME THERE FOR A TIME & SOMEWHERE FOR A TIME」が展示されている。

「虎次郎は、画家としての技量だけではなく、審美眼にも優れた稀有な芸術家でした。その虎次郎を顕彰するために、1953年に旧成羽(なりわ)町の公設美術館として開館しました」と話すのは、「高梁市成羽美術館」の広報担当・難波妙子さん。
現在の建物は安藤忠雄氏設計の三代目で、周辺の自然のなかで凛と佇む建築美も見どころのひとつ。単に建物を造るのではなく、巧みに生かされた大名屋敷の石垣、大開口から望む山の斜面など、歴史や自然に対するリスペクトも感じ取れる。

館内をユーモアたっぷりに案内してくれた、スタッフの難波さん。
館内をユーモアたっぷりに案内してくれた、スタッフの難波さん。

大きな窓ガラスから外の景色を取り込んだホール
大きな窓ガラスから外の景色を取り込んだホール
アプローチの「流水の庭」
アプローチの「流水の庭」

館内は、さまざまな企画展を行う絵画展示室、外遊中に彼が集めた古代エジプトの美術品が並ぶオリエント展示室、地元から産出した化石が並ぶ化石展示室などで構成されている。「美術館建築としては珍しく、窓がある展示室もあります。館内のあちらこちらに居場所があるので、ゆっくりと過ごしてほしい」と難波さんは話す。
美しい美術館でアートと向かい合えば、心が整っていくに違いない。

古代エジプトの護符(お守り)
古代エジプトの護符(お守り)やミイラマスクなどの展示品
ミイラマスク
記号のトイレ
安藤氏と親交が深い向井修二氏が、安藤氏設計のトイレを記号で埋め尽くしたインスタレーション「記号のトイレ」。同館には2か所の「記号のトイレ」がある。
エジプト美術の奥深さに触れられるオリエント展示室
エジプト美術の奥深さに触れられるオリエント展示室。
カフェのアイスコーヒー
カフェのアイスコーヒーは、倉敷ガラスの職人・小谷眞三氏のグラスで提供。口当たりがよく、コーヒーの味わいを引き立てる。

高梁市成羽美術館

住所/岡山県高梁市成羽町下原1068-3
TEL/ 0866-42-4455
営業時間/9:30〜17:00(入館は〜16:30)
休み/月曜(祝日、振替休日の場合は翌日)
料金/展覧会により異なる
駐車場/あり
休み/水曜
HP/ https://nariwa-museum.jp
Instagram/ 高梁市成羽美術館

高梁市成羽美術館

※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。

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