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恵峰さんと巡ろう 四国おへんろ

四国は行く先々に八十八ヶ所霊場の札所があります。旅のついでに足を伸ばしませんか。
参拝しながら歴史や由来を知り、建築、仏像などの美にふれ、心安らぐ充実した時間を過ごせます。

幾度もの火災から逃れ、寺名を変えた延命寺

第54番札所 近見山 延命寺
延命寺には2つの門があり、境内に近いほうが今治城の城門を移したもの。意匠が美しい。

今治の市街地の西北に、総けやき造りの山門が目を引く延命寺があります。この山門は今治城の城門のひとつで、明治初期に城が取り壊された際に譲り受けたもの。今治の歴史を刻んできた門が迎えてくれると思うと感慨を覚えます。

延命寺はかつて来島海峡を一望する近見山の山頂にありました。天平年間(729~749年)に行基菩薩が不動明王像を刻んで建立したのが始まりで、後に嵯峨天皇の勅命を受けた弘法大師が、信仰と学問の中心道場として再興しました。
  
「ご本尊は宝冠をかぶった珍しい不動明王で、別名〝火伏せ不動尊〟と呼ばれているんですよ」と恵峰さん。延命寺はたびたび兵火にあったため現在の場所に移ったのですが、不動明王は度重なる火災から免れているのです。また寺名は明治維新まで53番札所と同じ「圓明寺」でしたが、混乱をさけるため延命寺へ改められました。

境内には見どころが多く、江戸時代に四国霊場のガイドブックといえるものを書いた真念法師が建てた標石や、農民たちを飢餓から救った越智孫兵衛を偲ぶ供養塔などがあります。歴史に思いをはせながら、お参りできるのが楽しみです。

かつて延命寺は近見山山頂から来島海峡を通る船の安全を見守っていた。現在は展望台が設置され、来島海峡大橋や今治市街を一望できる。
真念法師建立の標石(右)。霊場巡拝で迷いやすい場所に建てた。道のりや宿を記した本も出し、巡拝者が増えたという。

札所のみかた

銘木や花々に囲まれた境内

四季折々の花が咲く境内。山門を入ってすぐ右手には、当地に移った際に植えられたとされる樹齢200年超の銘木つぶらじいがあります。

寺の由来を伝える梵鐘

延命寺の梵鐘は代々、近見太郎、二郎、三郎の名がつき、宝永元年(1704)につくられた2代目の二郎には四面に延命寺の由来が刻まれ、大晦日にだけ音色を聞くことができます。

境内で奥の院参拝ができる

山門を入ってすぐ左には薬師堂があり、奥の院のご本尊である薬師如来が祀られています。延命寺の裏の近見山山頂にあった奥の院が荒れ果ててしまったので、誰でもお参りできるようにとここに安置されました。

アマビエで疫病予防を

疫病をおさめる妖怪として注目を集める、アマビエ。愛媛県今治市特産の菊間瓦でつくられたアマビエのお守りはどこか愛嬌があり、飾れば安心です。

第54番札所 近見山 延命寺

[住所]愛媛県今治市阿方甲636
[宗派]真言宗豊山派    [本尊]不動明王
[開基]行基菩薩      [創建]養老4年(720)
[真言]のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ
    まかろしゃだ そわたや うん たらた かんまん

福田 恵峰(けいほう)さん

福田 恵峰(けいほう)さん

神戸市在住。仕事を持ちながら休日だけの札所めぐりを続けて、現在までに20回以上巡拝。そのほとんどが歩き遍路である。歩くたびに新しい出会いがあり、新しい自分を発見すると言う。四国八十八ヶ所霊場会公認大先達。NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク理事・女性お遍路相談員。www.omotenashi88.net

〈公認先達〉四国八十八ヶ所霊場巡拝を重ね、弘法大師の教えに帰依し、新しく巡拝する人たちにお遍路の心得などを指導し、手本となることができると認められた人。四国八十八ヶ所霊場会が審査、認定している。

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