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せとうち島めぐり

前 島

岡山県瀬戸内市

冬の島旅で、心も体もあたたまる

冬だからこそ楽しめる瀬戸内の島旅、週末から始めてみませんか?

おすすめは、〝日本のエーゲ海〟と謳われる牛窓(岡山県)の約300メートル沖合に位置する前島。緑豊かな自然が広がるため、「緑島」とも呼ばれています。古くから農業が盛んで、キャベツやスイカ、カボチャなど、四季折々の野菜畑がパッチワーク状に見られ、とてものどかな雰囲気。

農業は江戸時代に始まり、主に小豆島や牛窓などからの移住者によって開拓、開耕されたと伝わっています。かつて、農家が収穫した野菜は、各家の農船で島外へ売りに出ていましたが、やがて島のみんなで資金を出し合って、一つの船で売りに行くことに。それが、現在牛窓と前島の間を運航する定期船「前島フェリー」の前身です。

前島フェリーが冬季限定で開催する「まえじま牡蠣小屋」は、観光客に大人気。前島側のフェリー乗り場に牡蠣小屋がオープンして、近海で獲った新鮮な牡蠣が量り売りされます。観光客は小屋の中で炭火焼きして、ほくほく、ぷりぷりの牡蠣に舌鼓を打ちつつ、ビールをグイッと飲んで、みんなが笑顔。

ところで、徳川家が再建した大阪城の石垣には、前島で採石された石も使われていることがわかっています。島内で確認されている4ヶ所の丁場(採石場)跡で、見学できるのは東山にある1ヶ所のみ。そこには、巨大な母岩や矢穴が一直線に入った石、山から下ろす寸前の石などが当時のままの状態で残っています。江戸時代初期のものと見られ、「大坂城築城残石群」と呼ばれています。

夕陽が綺麗に見えるのは、島西端にある夕陽公園。「ここにベンチがあったらいいよね」という一言から作られた小さな公園です。フェリー乗り場からレンタル電動自転車で8分ほど。お腹も心も肥える冬の島旅へ、いざ!

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前島(手前)と牛窓(奥)の間をたった5分の船旅で、島旅を楽しめます。
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島へのアクセスは…牛窓から船で5分。

トリセツ

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前島フェリーの牡蠣小屋
毎年、冬季の週末と祝日にオープンする「まえじま牡蠣小屋」。その日に水揚げされた牡蠣を客自ら選んで食べられるのは県内でここだけ! 前島フェリーでは、船上で漁師がカキを水揚げする様子を見学し、その後カキの詰め放題が体験できる「焼き牡蠣クルージング」も行っています。
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大坂城築城残石群
昭和52年と平成8年の調査によって、島内4箇所で丁場跡が確認されました。その残石の中には、松前藩堀尾家や鳥取藩池田家などの刻印が見つかり、これが大坂城の石垣にある刻印と同じであることから、前島の丁場が大坂城の石垣を切り出した丁場であることが明らかになりました。
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牛窓研修センター「カリヨンハウス」
東部にあるカリヨンハウスは、いかだを作ったり乗ったりする体験や地引網などの漁業体験、農家の家に泊まる農業体験など、自然の中で学べるさまざまな体験プログラムを実施しています。教育や文化活動の拠点として、企業や学校なども多く利用しています。

※店舗営業情報等についてはHPよりご確認ください。

小林 希さん

取材・写真・文 小林 希さん

旅作家・元編集者。著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など。2014年に広島(香川県)で島の有志と『島プロジェクト』を立ち上げ「ゲストハウスひるねこ」をオープン。2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。産経新聞などで連載中。

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