スイーツやドリンクなど、多彩なレモングルメに出会える生口島。とりわけ異彩を放っているのは、薄切りにした瀬戸田レモンを落とし蓋のようにぎっしりと敷き詰めたレモン鍋。見た目にもインパクト絶大な一品で、島内数店舗で提供するご当地グルメとなっている。これを考案したのは、1965年創業の「御食事処ちどり」三代目・橋本貴さん。約10年前、家族で鍋料理をつついていたときのことだ。「小学生の娘が何気なく『瀬戸田のレモンを使った鍋があったら面白いね』と言ったんです」と橋本さん。その頃、しまなみ海道開通の年に4倍まで増えた観光客数もやや落ち着いており、「何とか人を呼び込む名物をつくりたい。そして島のファンを増やしたい」と頭を悩ませていた橋本さんは、娘さんの言葉から大きなヒントをもらった。

鍋料理でレモンとくれば、果汁を使ったポン酢が一般的だが、それでは面白くない。またレモンは熱が加わりすぎると苦味が出てくる。「レモンの形を残し、レモンの香りと酸味を同時に味わえる鍋にしたい」と試行錯誤が続いた。そうして翌年に生まれたのが、瀬戸内の鯛やタコ、豚肉などの具材を、レモン果汁を加えた醤油仕立ての鍋で煮込み、客席に運ぶ直前に蓋のようにレモンを敷き詰めたこの鍋だ。食べる直前にレモンを取り除いて食べる。取り皿に1枚レモンを入れて、具材と一緒に味わえば爽やかな食味を満喫できる。メニューに載せ、翌年には家庭で手軽に再現できるレモン鍋の素を開発。各地の物産展でも積極的に売り出した。「大好きな瀬戸田レモンと生口島の名を全国に広めたい！」という情熱が橋本さんを動かした。

Uターン、Iターン者の開業も増えた今、「夢は島のあちらこちらの店や宿で、オリジナルのレモン鍋を開発してもらうこと」と力を込める。レモン鍋ドリームはこれからが本番だ。

御食事処ちどり

住所／広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田530-2
TEL／0845-27-0231
営業時間／〈昼〉平日11:00〜15:00、土日祝11:00〜16:00
〈夜〉18:00〜21:00（L.O.20:30）
定休日／火曜、第2月曜、年末年始
駐車場／近隣無料Pあり