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情報誌「瀬戸マーレ」

地元通と歩く瀬戸内 【明石・鳴門エリア】沼島の鱧

関西の夏は沼島の鱧で始まる

鱧は、関西の夏の風物詩です。
江戸時代、その食べ方を京の都へ伝えたのが、沼島の漁師といわれています。
伝統の鱧漁を今に伝える漁師に、鱧のおいしさを聞きました。

伝統の延縄漁を続ける安達さん一家

淡路島の南端に浮かぶ、沼島。鱧専門漁師の安達一富さんは「ここらのハモは、皮が違うよ」と、日焼けした顔をほころばせます。その柔らかな皮と、ふっくらした身が特徴です。鱧で有名なこの島で、今や唯一の専門漁を行う一家となりました。

「鱧は夜行性のため、夜中に親父と叔父貴と3人、2杯の船で漁へ出る。昼間は泥の中で眠っていた鱧が、餌を喰いに出てくるからね」と安達さん。鱧の漁法は「延縄(はえなわ)漁」。1本の幹縄に55本の枝縄を吊り下げ、それぞれの先に針をつけた縄を使います。「夕方の内に、船のエンジンを走らせて、縄を次々に投げ入れ、沈ませる。それを、夜中に順番に引き上げるんや」。島周辺の軟らかい泥にいるのが、良質な鱧。生きたまま浜へ運びます。

精悍な顔を持つ鱧は、強い生命力の持ち主です。江戸時代には、船で海を渡り、淀川を上って京の御所まで、生きたまま献上するようになりました。「骨の多さから、どう扱えばいいか都の人には分からなかったのを、島の漁師が食べ方を教えたと、親父が、そのまたじいちゃんから聞いたようやね」。これが骨切りという独自の技です。
さらに大阪町人の隆盛で鱧料理が広まり、沼島といえば鱧、というほど有名になりました。

朝に浜に戻った後は、仲買人に売るほか、自らシメて3枚におろし、骨切りを行うことも。漁師料理として伝統的な食べ方は「鱧鍋」だそうです。ここ4~5年は漁獲量も増加。1㎏以上の大きな鱧が獲れるのも沼島の特徴で、「これならフライもうまいよ」とにっこり。鱧のことは誰にも負けないと、頼もしい姿です。

鱧はアタマを割る前なら、噛まれることもあるとか
鱧はアタマを割る前なら、噛まれることもあるとか

昔ながらの漁師料理
「鱧すき鍋」を味わう

沼島の料理旅館「木村屋」の「鱧すき鍋」は、漁師料理を祖とする、夏のご馳走です。毎年、ここの味を求めて訪れる人が後を絶ちません。沼島近海の天然鱧を、醤油ベースのダシで炊いた中に入れ、さっぱりといただきます。鍋には淡路島の名産・玉ねぎも入り、ほのかな甘みを加えて、味を深めています。

鱧を鍋に入れたとき、パッと花が咲いたように開くのが新鮮さの証拠。「沼島の鱧は、皮のやわらか加減の頃合いがいいんですよ。身との間を、皮一枚分、残したところで包丁を止める。この骨切りの技が、鱧の味を決めます」と、女将の木村仁美さん。4代目となる息子の龍平さんも活躍中です。

ほとんどの部位を食べられるという鱧は、口の中でとろける肝や、コリっとした浮き袋なども美味。「鍋の締めには、名物〝鱧の子どんぶり〟をどうぞ」。残りダシに鱧の子を入れて卵とネギでとじ、ご飯にかけると出来上がり。現地でこそ味わえる、鱧の旨みが絶妙です。

同館4代目となる木村龍平さん
同館4代目となる木村龍平さん。
父である大将の一さんから厳しく仕込まれた腕は確か

(写真左)湯引き(写真右)島の漁師が考えた、骨切り
(写真左)湯引き(写真右)島の漁師が考えた、骨切り
料理旅館 木村屋

住所/兵庫県南あわじ市沼島899
TEL/0799(57)0010
鱧料理のみの料金/フルコース10,000円(税別)
鱧料理宿泊付料金/16,000円(税別)~
HP/http://www.nushima-kimuraya.com/

料理旅館 木村屋

見どころ

●司馬遼太郎の文学碑(神宮寺)

司馬遼太郎が「菜の花の沖」で、沼島について記した石碑。真言宗の寺院・神宮寺の境内にあり、同寺は県指定文化財「種子尊勝法華曼荼羅」などを所蔵。


 
●国生み伝説を物語る「おのころ神社」

港に近い山の上で、イザナギ・イザナミ二神が祀られた神社。
まっすぐな階段を上る、この山全体が「おのころさん」と呼ばれる神体山。


 
●上立神岩(かみたてがみいわ)

国生み伝説の舞台とも言われる高さ30mの奇岩。天の御柱、龍宮の表門とも言われ、地元では「たてがみさん」の愛称で親しまれています。船で廻る「島めぐり」なら、陸とはひと味違う光景も。


司馬遼太郎の文学碑(神宮寺)   国生み伝説を物語る「おのころ神社」   上立神岩

地域情報通から

●ボランティアガイド「ぬぼこの会」の魚谷佳代子さん

親切で丁寧な説明が、旅の思い出を深めてくれる。
背後に見えるのは、あみだバエ(岩礁)。


TEL/0799(57)0022 ぬぼこの会

ボランティアガイド「ぬぼこの会」の魚谷佳代子さん
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