島の北側にまわり、潮騒の館を目指す。ここでタコつぼ漁を体験できる。タコつぼ漁はえさのカニを入れたタコつぼを沈め、入ってきたタコを捕まえるというもの。さっそく船に乗り込んだ。潮風が気持ちいい。

「このあたりの海は潮の流れが速くて、身が引き締まったタコが獲れるけん。特に産卵前にエサを求めて活発に動く夏と冬はうまいね」と説明してくれるのは、日焼けした肌がりりしい漁師の小寺正晃さん。目印のブイまで来ると「やろか！」のかけ声でタコつぼが引き上げられる。ふたを開ける瞬間はドキドキものだ。ニュルニュルと大きなタコが這い出してきて、思わず後ずさりしてしまう。おそるおそるつかむと、いきなりタコの足が腕に巻き付いてきた。すごい力だ。まさかタコと格闘するとは思わなかったけれど、楽しい！

【DATA】
申込先／蒲刈町漁協青年部(潮騒の館)　住所／広島県呉市蒲刈町宮盛1320-15　Tel／0823-66-1137
期間/7～10月 料金/大人1名5,250円、小人1名3,675円
※1隻貸切コース(無人島にて豪華海鮮料理付、獲った魚はすべて持帰りOK)もある

獲ったタコは浜辺に戻ってバーベキューでいただけるのも醍醐味だ。生きたまま豪快に旬の魚と一緒に炭火で焼く。鮮度がいいから味付けは塩のみ。この塩は上蒲刈島特産の藻塩だ。かむほどにまろやかなうまみが広がり、引き締まった身やこりこりの吸盤がたまらない。他にもタコ飯、天ぷら、刺身とタコ料理が続々運ばれてきて、もう食べきれない…。壮大な海を感じて、自分でタコを獲って味わえるなんて大満足。さあ、腹ごなしに島を散策しようかな。気になる場所があったんだ。

上蒲刈島でどうしても見たいものがあった。星空と海の天体ショー。かまがり天体観測館は県民の浜がある海辺に位置し、これほど海の近くで星空を眺められる施設はほとんどない。はやる気持ちを抑え、日が沈むまでの間、近くの海と島の工作展示館で星座早見盤と望遠鏡を作って待つことにした。

星座早見盤づくりは簡単。パーツが印刷された厚紙を切って貼るだけ。望遠鏡は小さな穴を切り取り、大小の筒のサイズを合わせるのが難しいけれど、丁寧にすれば大丈夫。のぞいてみると遠くもバッチリ見えた。夜が来るのが待ちきれない。

【海と島の工作展示館】
工作は事前の予約が必要。申込み・問合せは、かまがり天体観測館まで。

ようやくあたりが闇に包まれ、待ちに待った時間がやってきた。「夏の大三角形はもちろん、月明かりのない晴れた日は天の川が見えますよ」。館長の山根弘也さんの言葉に期待が高まる。デッキに上がって見上げると、夜空を埋め尽くすように星、星、星。すごい…、言葉も出ない。波の音も聞こえてきてなんて心地いいんだろう。まるで星空を漂っているみたいだ。

感動さめやらぬまま天文台ドームに入り、国内最大級のマクストフ望遠鏡をのぞいてみる。月のクレーターや土星の環、木星の縞模様がくっきり見えて、とっても神秘的。「携帯のカメラで写真が撮れますよ」と促されてシャッターを切る。やった、土星を持ち帰れるなんて思わなかった。星の説明も楽しい。なんでも『銀河鉄道の夜』のストーリーに沿って天体観測したり、カップルにはロマンティックな話をしたり、いろいろ工夫されているのだとか。素晴らしい星の世界を知って、一晩中だって眺めていたいぐらいだ。

【Data】
住所／広島県呉市蒲刈町大浦8170
Tel／0823-66-1176（蒲刈B&G海洋センター内）
入館料／大人200円、小人100円　入館・天体観測ともに要予約
開館／9:00〜21:00
休み／月曜・火曜
イベント／「定例観望会」毎週土曜日19:30〜21:00　※土曜日以外も連絡すれば天体観測可
「流星群と七夕～織り姫と彦星を結ぶ流れ星」
2013年8/12～14日　20:00〜22:00　※8/13はペルセウス座流星群が多く出現
URL／http://www12.ocn.ne.jp/~kama-bg/astro_hp/top.html
E-mail／kama-bg@jewel.ocn.ne.jp