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NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町

水盤に浮かぶカラフルな可動展示室は、下瀬美術館の象徴。館内作品の鑑賞は言わずもがな、こうした建物そのものがアートとなっているのが「SIMOSE」

Simose Art Garden Villa・広島県大竹市

極上のアートを旅する

いつの日か訪れたいと願ったオーベルジュ。
その想いを叶える、ちょっと贅沢な旅に出かけた。
目的地は広島県大竹市の「SIMOSE」。
ゆったりと広大な敷地には
美術館、レストラン、庭園、
そして10棟のヴィラがある。
ステイ、日帰り、
どちらであっても、
非日常の世界に浸れるに違いない。

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「これまでにない美術館建築」と国内外から高く評価されている。多用したミラーガラスの視覚効果により、広がりや無限性が演出されている

圧倒的な建築美を誇る
瀬戸内海を望むアート空間

広島県の西端に位置する大竹市は、豊かな水資源を活用し、瀬戸内地域で有数の臨海工業地区として発展した。しかし、「SIMOSE」の敷地に入ると、そんな外の世界とは隔絶され、リゾートの趣。安芸の宮島が浮かぶ海辺の広大な敷地に、下瀬美術館やレストラン、ヴィラなどが整備されている。まず目を引くのは、坂茂(ばんしげる)氏が設計を手がけた各建物のデザイン。坂氏は、2014年に建築界のノーベル賞とも呼ばれるプリツカー賞を受賞した建築家。国内はもちろん海外でも多くの実績を誇っている。「SIMOSE」はその圧倒的な建築美で、世界のアートシーンから注目を集めている。

美術館のキャッチフレーズは、「アートの中でアートを観る」。楕円形のエントランス棟の意匠は圧巻で、ヒノキの集成材を用いて、柱と梁で枝を大きく広げた大木のようなデザイン。ここからアール・ヌーヴォーのガラス工芸などを展示した企画展示室や青い水盤に浮かぶカラフルな8つの可動式キューブに進む。キューブの展示室は、レイアウト変更ができるそうで、夜にはライトアップされ美しさを際立たせる。

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コレクターのアートに対する情熱や嗜好が感じられる展示。全体を通して、「ものづくり」に対する愛情が満ちており、豊かさと学びを与えてくれる

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エミール・ガレの1902年の作品「ハートの涙(ケマンソウ)」。正面に愛らしいケマンソウが施されている。下瀬美術館を代表する作品としてオリジナルグッズのモチーフにもなっている

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ガレがモチーフにした草花を植栽した「エミール・ガレの庭」。ビオトープさながら、さまざまな生き物たちの営みにも触れられる

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エントランス棟の圧巻の意匠。曲線に加工した集成材により、木の佇まいを再現。ここにはカフェスペースやミュージアムショップもある

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芸術、自然、食事、建築
そのすべてがハイレベル

2023年3月にオープンした下瀬美術館は、翌年ユネスコが創設した建築賞「世界で最も美しい美術館」7施設の1つに選出された。広島市の実業家が長年コレクションしてきたアート約500点を収蔵しており、エミール・ガレなどの西洋工芸、マティスやシャガール、東山魁夷(かいい)らの近代絵画、そして京都丸平大木人形店の京人形と雛人形がメインストリームとなっている。企画展示室、可動式の展示室ともに定期的に作品の入れ替えを行なうため、何度も足を運ぶ人も多い。

リピーターを惹きつけているのは、展示品だけではない。自然をモチーフにした作品を残し、植物学者としても活躍したガレにちなんだ「エミール・ガレの庭」は、気持ちの良い散策エリア。作品に登場する草花など約250種が植栽されており、アートの世界に入り込んだような気分にひたれる。また各棟をつなぐ渡り廊下に施された大ぶりのミラーガラスへの写り込みが、空間を無限に広げてくれる。

企画展示棟の外に出て、なだらかな坂を登れば、屋上の望洋テラスがあり、瀬戸内海の多島美が一望できる。エントランス棟のカフェやミュージアムショップも含めて、これらの施設を日帰りでも利用できるのは嬉しい限りだ。

また、忘れてはならないのがレストラン。東京の名店で腕を磨いた久重浩シェフのフレンチは、素材の組み合わせが生み出す味わいと、繊細で美しい見た目が魅力で、ファンも多い。評判が広がった今、ランチ、ディナーともに事前予約をして訪れたい。

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広島近郊で水揚げされた魚など、シェフが厳選した素材を使用。動物性脂肪を抑えており、美味しくヘルシー。ランチコース6,000円〜、ディナーコース13,500円〜(事前予約がおすすめ・ランチは月曜定休)

また、忘れてはならないのがレストラン。東京の名店で腕を磨いた久重浩シェフのフレンチは、素材の組み合わせが生み出す味わいと、繊細で美しい見た目が魅力で、ファンも多い。評判が広がった今、ランチ、ディナーともに事前予約をして訪れたい。

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紙菅を主構造とした「紙の家」。長さ2.7m、直径28cmの紙菅110本をS字状に並べて、多様な空間を生み出している。
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ガラス戸をフルオープンにすれば、外と内を繋げることもできる

アートを鑑賞し、食事を堪能し、景色に癒される。日帰りでも「SIMOSE」を体感するプランの満足度は高いが、やはり「アートに泊まる」を体験したいところ。プライベート感たっぷりのヴィラは全10棟あり、木々に囲まれた森のヴィラ5棟、瀬戸内海をより身近に感じられる水辺のヴィラ5棟で構成されている。森のヴィラは坂氏が主に90年代に設計した別荘建築をリデザイン。たとえば「紙の家」は1995年に山中湖に建てられた別荘が着想の原点。坂建築の象徴とも言える、再生紙の紙管を主構造としている。この1邸に使われているのは110本の紙管。柱の間から差し込む光の演出も美しい。他3邸も90年代の作品をリデザインしたものだが、例外は、十字形に配置した2枚の壁を支柱とした「十字壁の家」。建築家を目指してニューヨークで学んでいた坂氏が、当時の師匠の作品をオマージュしたものだ。

水辺のヴィラ5棟は、「キールステックの家」。いずれも壁や屋根にオーストリアの木造素材「キールステック」が使われており、開放感満点のデッキスペースが設けられている。水盤の向こうに広がる瀬戸内海と一体化し、まるでどこまでも続いているよう。5棟は共有コンセプトを持ちながらも、それぞれレイアウトや設(しつら)えが違っており、異なる趣を醸し出している。これらは「SIMOSE」のために、新たにデザインされたものだそうだ。

全10棟のヴィラは、様々な時代の坂氏の作品世界を体感できるアーキテクチャー・ミュージアムとしての顔も持ち合わせている。建築ファンにとってはたまらない施設と言えるだろう。

「SIMOSE」を後にしたとき、名残惜しい気持ちを抑えられず建物を振り返った。ガレの『ハートの涙』の甘いピンク、カラフルなキューブの8色、森の緑。それらを映えさせる瀬戸内の碧の何と美しいことかと色彩の余韻に浸った。

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キールステックの家
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オーストリア製の木質接合複合パネル「キールステック」を駆体に採用し、三角形をモチーフとした特徴ある断面をデザインに取り入れた水辺のヴィラ「キールステックの家」。内装は5棟それぞれに特徴を持たせた

2024年12月2日、下瀬美術館は、ユネスコ「世界で最も美しい美術館」最優秀賞のベルサイユ賞を受賞しました。

下瀬美術館

住所/広島県大竹市晴海2-10-50
TEL/0827-94-4000
営業時間/9:30〜17:00(入館は〜16:30)
休み/月曜(祝日の場合は開館)、臨時休館あり
料金/観覧料 一般1,800円、高大生900円
HP/ https://simose-museum.jp
Instagram/ 下瀬美術館 Simose Art Museum

Simose Art Garden Villa

住所/広島県大竹市晴海2-10-50
TEL/0120-907-090
営業時間/チェックイン 15:00・チェックアウト 11:00
宿泊料金/シンプルステイ大人2名1泊106,000円〜
駐車場/あり
HP/ https://artsimose.jp/villa/
Instagram/ Simose Art Garden Villa

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大竹市の工場夜景は
今や人気のコンテンツ

1962年、石油コンビナートとしては日本で最初に誕生した大竹コンビナート。その後も誘致が進み、臨海工業地帯が形成されている。夜景の素晴らしさで、近年、フォトスポットとして人気。
駐車場所など交通ルールを守り、周囲の安全を確認した上で撮影を。

大竹市産業振興課商工振興係

TEL / 0827-59-2131
HP /
https://www.city.otake.hiroshima.jp/
material/files/group/4/yakeimap_a5_naka.pdf

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足を伸ばして安芸の宮島へ
隠れ家カフェで香り高いコーヒーを

旅程に余裕があれば、広島県を代表する観光地である宮島に足を延ばしたい。厳島神社や国重要文化財の大鳥居、弥山、土産物屋や飲食店が立ち並ぶ宮島表参道商店街など観光スポットはたくさんある。美味しいコーヒーでひと休みしたくなったら、隠れ家的な雰囲気の「sarasvati(サラスヴァティ)」へ。産地にこだわった豆を自家焙煎しているスペシャルティコーヒー専門店「伊都(いつき)岐珈琲」の直営店だけあり、コーヒーの味わいは折り紙付き。居心地の良い古民家でいただくドリップコーヒーは旅の疲れを癒してくれる。甘みが恋しいときには自家製ケーキもご一緒に。レモンケーキやチーズケーキは、コーヒーとの相性抜群。ドリンク類はすべてテイクアウトOKで、豆の販売もしている。
鹿たちを眺めながら味わうテイクアウトコーヒーは、宮島ならでは。

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ドリップコーヒー600円、レモンケーキ750円(ドリンクセットで200円引き)

sarasvati

住所/広島県廿日市市宮島町407
TEL/0829-44-0611
休み/無休
営業時間/10:00〜18:00
駐車場/なし
HP/ https://itsuki-miyajima.com/shop/sarasvati/
Instagram/ sarasvati

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※掲載価格などは、変更される場合がございます。

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