
テラスの向こうに広がる緑を眺めながら一服。別荘で過ごしているかのようなプライベートな時間に浸れる。1室あたり4名まで宿泊が可能
延長700km以上にも及ぶ海岸線、
日本一の面積を誇る森林、清流・四万十川など
ダイナミックな自然に恵まれた高知県。
変化に富んだ地形や
温暖な気候により育まれた食材、料理は
高知の旅をさらに豊かにしてくれる。
今回向かったのは、
高知市中心部から車で約30分の「オーベルジュ土佐山」。
ここは美食と癒しの温泉と
心和む風景が待つ別天地。
高知市内には近辺の山々を源流とする川がいく筋も流れている。そのうちのひとつ、幼いころの坂本龍馬が泳いだという逸話があるのは鏡川。源流の東川川のほとり、標高1176mの工石山(くいしやま)を背景にたたずむのは、「オーベルジュ土佐山」だ。高知市内とは思えないほどののどかな自然に包まれている。
一帯が土佐山村と呼ばれていた今から30数年前、住民たちは大きな危機感を抱いていた。村内の小学校の統廃合が行われ、少子高齢化や過疎化がどんどん進んでいったのだ。話し合いやワークショップを重ねて、導き出されたのはオーベルジュ構想。「地域の資源を使って、土佐山村に元気を取り戻したい」と願い、1998年に「オーベルジュ土佐山」が完成した。当時、オーベルジュは耳馴染みのない言葉だったが、環境や建物の意匠、おもてなしが評判となり、多くのファンを獲得できた。
建物は、フロントやダイニングがあるセンター棟、天然温泉に浸れる温泉棟、2フロアに12室の客室があるホテル棟、そして4つのヴィラで構成されている。ヴィラ以外の3棟はゆるやかに繋がっているが、ヴィラへは東川川に架かる吊り橋を渡って行く。その道のりが、旅情をいっそう深めてくれる。設計を担った建築家の細木茂氏は、土佐杉、檜、土佐漆喰や土佐和紙など地元の自然素材を使い、伝統的な技法と現代的なデザイン性を融合させた建築文化運動「土佐派」の実践者。その考え方で建物を形づくり、特注家具ブランドのチェリア、書家の故沢田明子氏、ガラスアートの辻正昭氏らとのコラボレーションにより、懐かしくも新しい、心地よさに満ちた空間を完成させた。
ホテル棟の客室。客室はいろは順で名前がつけられており、室内には書家の故沢田明子氏の作品が額装されている
ヴィラは4棟すべて、川に向かって張り出したテラス付き。障子を開け放てば、ベッドからも山の緑が一望できる。もちろんホテル棟の客室も、コンパクトながらも川景色が目の前に。客室にはテレビも時計も置かれておらず、日常を忘れて過ごしてほしい…との想いが伝わってくるようだ。全室に内風呂もついているが、天然温泉の大浴場でくつろぐひとときは格別。美肌や神経痛などの効能があるアルカリ性単純硫黄冷鉱泉(加温・加水)の泉質により、湯上がりの肌はしっとりと潤う。露天風呂の心地よさは特筆もので、四季折々の自然を体感しながら癒しのひとときを満喫することができる。
温泉は日帰り入浴も可能(10:30〜20:30、大人入浴料800円)。朝と夜には宿泊者しか入浴できない時間帯も設けている
散策や温泉を楽しんだ後は、松本昇吾総料理長の創意を凝らした料理を味わうべくダイニングへ。できる限り土佐山や高知県で採れた食材を使うことを大切にしており、土佐ジローの玉子、もんちゃんいちご、四方竹、生姜、柚子などを取り入れた料理はここならでは。
料理に使われる農産品は、一般社団法人夢産地とさやま公社から提供されるものも多い。同公社の有機無農薬栽培の生姜は、山に開けた奥行き30mの横穴で保存されるのが特徴。穴の内部は年間を通して湿度や温度が最適な状態に保たれており、生姜はゆっくりと旨みを凝縮させていく。冬は地元の豆富(とうふ)を使った飛龍頭(ひりゅうず)に、この生姜餡をかけた一品が出ることも。
翌朝の目覚めは、川のせせらぎ、鳥のさえずりが心地よい。まずは朝風呂に浸かり、湯上がりにはぶらりと散策。そよそよと吹き抜ける風が、肌に心地よい。さりげない時間が何よりの贅沢。いつもは手放せない携帯電話とも、この宿にいる間は距離を置けることだろう。
住所/高知県高知市土佐山東川661
TEL/088-850-6911
営業時間/チェックイン/15:00〜・チェックアウト/〜11:00
料金/ホテル棟1泊2食付き37,000円〜
ヴィラ1泊2食付き43,050円〜
ともに入湯税150円を含む
駐車場/あり
HP/
https://www.orienthotel.jp/tosayama/
Instagram/
オーベルジュ土佐山/高知/ホテル/リゾートホテル
山の横穴で保存する夢産地とさやま公社の生姜は、「とさやま蔵出し有機生姜」の名で目下人気上昇中。これを使った生ジンジャーエールが味わえる直営飲食店「イモバルTOSAYAMA男爵」は、高知城のお膝元にある観光名所・ひろめ市場の一角に店を構える。運ばれてきた生ジンジャーエールを一口飲むと、爽やかな生姜の香味が口いっぱいに広がり、まろやかな喉越しながら、飲み込んだ後にはカッと心地よい刺激。これまで飲んだジンジャーエールとは一線を画す味わいだ。このほか四方竹のごま油炒め、土佐ジローの卵かけご飯や卵焼きなど、土佐山産の食材を使った軽食も用意。物産の販売コーナーも併設しており、とさやま蔵出し有機生姜やジンジャードリンクのショッピングが可能だ。生姜の味わいはカラッと陽気で個性的、「いごっそう」や「はちきん」と呼ばれる高知県人の気質にもどこか似ているように感じた。
※いごっそうは高知弁で快男児を意味する。はちきんも同様に快活で気のいい女性の意味。
住所/高知県高知市帯屋町2-3-1
TEL/088-895-2301
休業日/木曜日
営業時間/10:00〜20:00(日曜は9:00〜)
駐車場/有料パーキングあり
HP/
https://yumesanchi.jp/
Instagram/
イモバルTOSAYAMA男爵
※掲載価格などは、変更される場合がございます。