
思春期を尾道で過ごした作家・林芙美子像。昭和初期には『放浪記』がベストセラーとなった。作品中にも彼女が愛した尾道についての記述がある
思春期を尾道で過ごした作家・林芙美子像。昭和初期には『放浪記』がベストセラーとなった。作品中にも彼女が愛した尾道についての記述がある
文学史に名を残す作家たちが滞在し、
彼らの作品の舞台にもなったまち、尾道市。
懐かしさを秘めた旧市街をそぞろ歩き、
尾道水道を渡って瀬戸内に浮かぶ島々へ。
瀬戸内の文学さんぽは、秋の気配を探しながら。
※文人墨客…詩や文章、書画などに優れた創作者のこと。
北は屏風のように連なる尾道三山、南は尾道大橋・新尾道大橋が架かる尾道水道。山と海にはさまれた広島県尾道市は、古くから多くの文人墨客が去来したまち。志賀直哉(しがなおや)が『暗夜行路』で、林芙美子(ふみこ)が『放浪記』で描いた情景は、今も変わらずに佇んでいる。また、点在する寺院やレトロな商店街、迷路のように入り組んだ坂道はいずれもフォトジェニックで、大林宣彦監督の「尾道三部作」をはじめ数々の映像作品の舞台となり、多くのファンを惹きつけている。
そんな絵になるまち、尾道の象徴といえば、標高140mの大宝山中腹にある千光寺。806年に弘法大師によって開かれた名刹※で、山麓からのアクセスは千光寺山ロープウェイがおすすめ。ロープウェイの車窓から眺める市街地や尾道水道の情景は、箱庭さながらだ。山頂駅から千光寺までのルートは「文学のこみち」と名付けられており、尾道ゆかりの作家や詩人25人の作品の一節が刻まれた自然石が連なっている。刻まれた言葉からは、作家たちが尾道のまちに向けたあたたかい眼差しが感じ取れた。
※名刹…由緒ある名の知れた寺院のこと。
千光寺の本堂は赤堂とも呼ばれ、珍しい舞台造りとなっている。そこから眺める情景は絵画のようで、正面に浮かぶ向島(むかいしま)に手が届きそうにも思える。下り道は、迷路のような坂道を足の向くまま進んでいく。ふと現れた可愛らしい猫に誘われて行き着いたのは、「猫の細道」。このまちに魅せられた芸術家による福石猫(ふくいしねこ)という作品が、坂道のあちらこちらに置かれている。その数、なんと1000体以上! 遊び心を感じさせる福石猫神社まであり、こちらではホンモノの猫がお昼寝中だ。
どこか懐かしさを感じさせる坂道を歩いていると、ぱっと見には気付けないような隠れ家的なカフェやパン屋も。自分好みのお店を見つけるたび、本を読みながら素敵なフレーズに出会ったような喜びが感じられる。目的地が明確な旅もいいけれど、尾道は行き当たりばったりの旅の楽しさ、豊かさを教えてくれるだろう。
住所/広島県尾道市東土堂町15-1
TEL/
0848-23-2310
営業時間/9:00〜17:00
休み/無休
駐車場/なし
HP/
https://www.senkouji.jp
Instagram/
尾道 千光寺【公式】
※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。
1999年に開業した帆雨亭(はんうてい)は、隠れ家的な雰囲気の和風喫茶。店奥の窓辺の席からは尾道水道を遠望でき、「元々は私の祖父の書斎のような部屋。晴れた日には帆船を眺め、雨の日には雨音に耳を傾ける。そんな想いを込めて祖父が名付けた亭名です」というご主人の説明にも頷けるしっとりとした雰囲気だ。店内の一角に設けた「おのみち文庫」には、志賀直哉の『暗夜行路』の貴重な初版本や再版本など、尾道ゆかりの文人の作品を展示しており、時代ごとに異なる装丁を比べたりもできる。
「帆雨」の名の通り、静けさに包まれた雰囲気が心地よく、ぼんやりと思索をする観光客も少なくない。近辺は天寧寺や宝土寺、信行寺など寺社の多いエリア。寺社巡りの途中の休憩にもうってつけだ。店主夫妻の穏やかなおもてなしも心に沁みる。
住所/広島県尾道市東土堂町11-30
TEL/
0848-23-2105
営業時間/11:00〜17:00
休み/不定休
駐車場/なし
HP/
https://onomichi.sakura.ne.jp/han-u/
「この店が開業したのは1939年。和菓子の行商や大判焼きの屋台を経て、今の場所に喫茶店として店を構えました」と話すのは、三代目・唐沢鎮男(からさわやすお)さん。昭和20年代半ば、唐沢さんの祖父が研究の末に完成させたアイスクリームが人気を呼び、いつしかアイスクリームの店として名を馳せるようになった。広島産のたまごをたっぷりと使ったからさわのアイスクリームは、シャリ感のある口当たり。パリパリのモナカとの調和も絶妙だ。1個では飽き足らず、お代わりをする人も多い。アイスを浮かべたクリームぜんざいもおすすめ。
住所/広島県尾道市土堂1-15-19
TEL/
0848-23-6804
営業時間/10:00~17:00(季節により変動)
休み/火曜、第2水曜(祝日の場合は翌日)(季節により変動)
駐車場/あり
HP/
https://www.ice.jcom.to
Instagram/
からさわ
尾道市は、瀬戸内しまなみ海道の本州側の起点。旧市街から島嶼部(とうしょぶ)へ、橋を渡って足を延ばすのもおすすめのドライブコース。向島、因島(いんのしま)、生口島(いくちじま)、それぞれに魅力あふれる島には、訪ねたいスポットが満載。紹介したスポットを拠点に、各島の魅力を深掘りしよう。
向島
向島と向島大橋で結ばれた岩子島は、周囲約8kmの小島ながら見どころが豊富。近年は島内サイクリングを楽しむ人も多く、赤い鳥居の厳島神社は映画『男たちの大和/YAMATO』のロケ地としても有名になった。穏やかに打ち寄せる波に耳を傾けながら、時間とともに表情を変える空や海を眺めたい。
生口島
市場にはほとんど出回らない、希少な瀬戸田産自然栽培レモンで仕込んだ自家製レモネード(630円)など、レモングルメが味わえる古民家カフェ。レモンの風味豊かなレモンケーキ、幅広い層から人気の欧風カレーなど、スイーツやフードメニューもあり、いろんな過ごし方ができる店だ。
住所/広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田425
TEL/
0845-25-6572
営業時間/11:00〜16:00
休み/月曜
駐車場/あり
HP/
https://shiomachitei.jimdofree.com
Instagram/
レモン&カフェ汐待亭
因島
ドリンクやフードをいただきつつ、読書が楽しめるブックカフェ。各所に設けられた書棚には、絵本や尾道に関するものなど多彩な本。カウンターやテーブル席など好きな場所で、好きなメニューと好きな本を楽しみたい。もちろん窓の外に広がる海景色を眺めながらのひとときも心地良い。
住所/広島県尾道市因島大浜町87-1
TEL/
0845-24-1212
営業時間/10:00〜17:00
休み/水・木曜
駐車場/あり
HP/
https://sea-bridge.jp
Instagram/
SEABRIDGE
因島のお好み焼きは、そばではなく、うどんを入れて焼くのがスタンダード。「いんおこ」の愛称で知られるご当地グルメを食べずして、島を離れることはできない。
住所/広島県尾道市因島土生町塩浜北区1902-3
TEL/
0845-22-0932
営業時間/11:00〜17:00
休み/木曜
駐車場/あり
※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。