高知県の郊外では野菜や果物の無人販売をよく見かける。収穫期には黄色く色づいた柚子が売られていることも。艶やかで小さなお日様のよう
高知県の郊外では野菜や果物の無人販売をよく見かける。収穫期には黄色く色づいた柚子が売られていることも。艶やかで小さなお日様のよう
周囲を1000m級の山々が取り囲み、
安田川沿いにのどかな景色が広がる高知県馬路村。
幕末の志士・中岡慎太郎の生まれ故郷で
そこかしこに歴史の風情が感じられる北川村。
懐かしさに満たされた、ふたつの村をゆっくり散歩してみよう。
安田川のせせらぎをBGMに車を走らせる。目的地の「うまじのパン屋」は、「この村でパン屋をしたい」と移住した前田奉基(たてき)さん、美佳さん夫妻が2016年に開業した。「僕はハード系のパンが得意だけど、村の人たちが食べたいパンを…と、ソフト系のバリエーションを増やしました」と話す。観光客の声から誕生したのは、柚子の果汁をこし餡に練り込んだ「ゆずあんぱん」。「お取り寄せしたい」という声もあるそうだが、馬路村に足を運んだからこそ手に入る、そんなパン屋であり続けたいと考えている。
パン屋の周辺は「ゆずの森」として整備されており、木々の間に馬路村農協の加工場や直売所が点在。加工場では、馬路村の代名詞とも言える柚子飲料「ごっくん馬路村」などの製造ラインや荷造り場を、ガラス越しに見学できる。直売所では、さまざまな柚子製品の購入が可能。辺りを散策し、川辺でひと休みするのも心地よい。


ゆずあんぱん(291円)やぼうしぱん(260円)などのソフト系と、クランベリーバター(345円)などハード系をバランスよく扱っている。イートインコーナーでは、香り高いコーヒーと一緒に味わうこともできる




住所/高知県安芸郡馬路村馬路3888-1
TEL/
0887-44-2555
営業時間/9:00〜18:00(売り切れ次第終了)
休み/月・火曜(祝日の場合は振替)
駐車場/あり
HP/
https://umajinopanya.take-eats.jp/
Instagram/
うまじのパン屋
住所/高知県安芸郡馬路村馬路3888-1
TEL/
0120-559-659
営業時間/9:00〜16:00
休み/無休
駐車場/あり
HP/
https://www.yuzu.or.jp
旅の途中、立ち寄りたいのは観光案内所「馬路村ふるさとセンター まかいちょって家」。店内には村の特産品がずらりと並んでおり、とりわけユニークなのは間伐材を活用した木製バッグ。デザイン性に優れ、1点ごとに木目や色合いが異なるのも特徴。手にしっくりと馴染む、お気に入りを探したい。ここでは、村のファンを増やそうと2003年に始まった「特別村民制度」の申し込みもできる。特別村民になると、村に来る度に村長室で「ごっくん馬路村」が飲める特典も。村の人口をはるかに超える1万1000人以上が登録しているというから驚きだ。



住所/高知県安芸郡馬路村馬路382-1
TEL/
0887-44-2333
営業時間/9:00〜17:00
休み/無休
駐車場/あり
HP/
https://umajimura.jp
Instagram/
馬路村ふるさとセンター「まかいちょって家」
住所/高知県安芸郡馬路村3564-1
TEL/
0120-44-2026
営業時間/日帰り入浴10:00〜21:00、
レストラン11:00〜13:30、17:00〜21:00、
チェックイン15:00〜、チェックアウト〜10:00
休み/不定休
料金/入浴のみ:中学生以上600円、3歳〜小学生300円
宿泊:1泊2食付11,600円〜
駐車場/あり
HP/
https://umaji.gr.jp
Instagram/
うまじ温泉
続いて、馬路村に隣接する北川村へ。歴史が好きな人は、「北川村」と聞けば、幕末の志士・中岡慎太郎を思い浮かべるだろう。慎太郎は北川村の大庄屋の子として生まれ、薩長連合成立の立役者となり、坂本龍馬とともに非業の死を遂げた。「偉業を成し遂げた人物でありながら、龍馬ほどの知名度はありません。その理由は彼が用心深い性格だったからかもしれません」と説明するのは、「中岡慎太郎館」の学芸員の豊田満広さん。慎太郎が残した手紙は少なく、また秘密が漏れることを恐れて、核心に迫る内容は敢えて書かれていない。さらに、多くの偽名を用いて、筆跡まで使い分けていたという。この資料館では、複製も含めて、そうした慎太郎の貴重な書簡を見ることができる。また、慎太郎の愛用品など、その人となりに迫る展示が揃っている。
飢餓対策のために柚子の栽培を奨励したとも言われる慎太郎は、今も北川村の人たちに敬愛されている。NPO法人中岡慎太郎先生顕彰会が運営する「慎太郎食堂」では、柚子をはじめとする北川村の食材を活かした手づくり料理を味わうことができる。





馬路村と北川村では、信号機やコンビニエンスストアを見かけない。だが、日本の原風景が広がり、癒しの温泉が湧き、時間はゆったりと流れている。また、日本遺産「森林鉄道から日本一のゆずロード※へ」に認定された森林鉄道の遺構も数多く残されている。どのスポットも映画のワンシーンのような雰囲気で、自然と足を止めたくなることだろう。慌ただしい日常からほんの少し離れて、暮らすような旅を楽しみたい。
※ 「67号TOPページ」 「探訪 日本遺産ページ」参照



とろとろとしたお湯が肌をしっとりと潤してくれると評判の「北川村温泉 ゆずの宿」。大浴場や露天風呂、家族風呂など趣のある浴槽が揃っており、立ち寄り入浴もOK。客室はダブル、ツイン、和洋室の3タイプ
住所/高知県安芸郡北川村柏木140
TEL/
0887-38-8600
営業時間/9:00〜16:30(入館は〜16:00)
休み/火曜(祝日の場合は翌日)
料金/一般500円、小中学生300円、小学生未満無料
駐車場/あり
HP/
http://www.nakaokashintarokan.jp
住所/高知県安芸郡北川村柏木494
TEL/
0887-38-2413
営業時間/中岡家9:30〜15:00
慎太郎食堂11:30〜15:00
休み/火・日曜
駐車場/あり
Instagram/
中岡慎太郎先生顕彰会
住所/高知県安芸郡北川村小島121
TEL/
0887-30-1526
営業時間/日帰り入浴11:00〜21:00(20:30受付終了)、
チェックイン15:00〜19:00、チェックアウト〜10:00
休み/火曜
料金/入浴のみ:中学生以上800円、小学生400円
宿泊:1泊2食付18,850円〜
駐車場/あり
HP/
https://www.yuzunoyado.net