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あたたかい人たちが暮らす小さな村のキセキ。

もともとは保護犬だった、シブヤカバンの渋谷さんの相棒・ダイちゃん。おっとりとした性格で、お客さまからも可愛がられている

岡山県 西粟倉村(にしあわくらそん)

あたたかい人たちが暮らす
小さな村のキセキ。

岡山県北東端、兵庫県と鳥取県の県境に位置する西粟倉村は、
面積の90%以上を森林が占めている。
森の懐に抱かれたような小さな村をそぞろ歩けば、
穏やかでエネルギッシュな人、やさしい味わい、心地よい温泉。
きっと、もうひとつのふるさとを見つけることができるはず。

自然の息遣いを感じながら
オブジェのようなカバンを

西粟倉村の人口はわずか1300人。だがその約20%は移住者が占めており、スタートアップ※は50社以上もある。ここが「奇跡の村」とも「ローカルベンチャーの聖地」とも呼ばれる所以(ゆえん)だ。「シブヤカバン」の渋谷肇(はじめ)さんも、千葉県からの移住組。もともとレザークラフトを趣味としており、「ものづくりを生業(なりわい)としたい」と岡山県倉敷市の工房で修業した後に、2018年、築100年以上の古民家に工房を構えた。
長く牛革を細工していたが、村に来てから新たに手がけているのはジビエレザー。近隣では害獣として駆除されている鹿を、製品に活かしたいと考えたことが発端だ。また、吸湿性や保湿性に優れ、しなやかで柔らかな鹿革の魅力を伝えたいとの想いもある。
工房の片隅では、愛犬が寝息を立てている。その愛らしい様子と、窓の外に広がる緑の景色。川のせせらぎに耳を傾けながらミシンを踏む渋谷さんは、「ここでオブジェのようなカバンづくりができることは最高の幸せ」と微笑んだ。
※スタートアップ…革新的なアイデアで急成長を目指す企業のこと

しっかりとした質感のトートバッグ
しっかりとした質感のトートバッグ
渋谷さんが大切に使っている道具類が整然と並ぶ工房
渋谷さんが大切に使っている道具類が整然と並ぶ工房
鹿革の製品はミシン縫いで仕上げる。「ふと手を止めて、窓の外の景色を眺めるとき、この地に来てよかったと思います」
鹿革の製品はミシン縫いで仕上げる。「ふと手を止めて、窓の外の景色を眺めるとき、この地に来てよかったと思います」
鹿革の巾着袋は、全革タイプと帆布づかいの2種類。紐を調整して2wayで使用可
鹿革の巾着袋は、全革タイプと帆布づかいの2種類。紐を調整して2wayで使用可
財布やコインケース、名刺入れ、メガネケースなど牛革の小物
財布やコインケース、名刺入れ、メガネケースなど牛革の小物
工房には渋谷さんが集めたアンティーク雑貨が置かれており、一部は販売も行っている
工房には渋谷さんが集めたアンティーク雑貨が置かれており、一部は販売も行っている

シブヤカバン

住所/岡山県英田郡西粟倉村影石1442-1
営業日/不定(SNSでご確認を)
定休日/不定休
駐車場/あり
HP/ https://shibuyakaban.com/
Instagram/ Japan/Hajime Shibuya

シブヤカバン
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想いが生み出す珠玉の味わいと温泉

西粟倉村で生まれ、鳥取の大学に進学した小林祐太さんは、大学在学中にケーキ店でアルバイトをしたことがきっかけとなり、パティシエを志した。大阪や京都、岡山の個人店やホテルで腕を磨き、独立の地に選んだのはふるさとvの西粟倉村。「ケーキだけではなく、西粟倉の景色や穏やかな居心地も味わえる、そんな店にしたかったんです」と「にしあわくら小林菓子店」を開業した。店頭には、ケーキと焼き菓子がそれぞれ10数種類以上並ぶ。特に評判がいいのは、スポンジ生地と生クリーム、季節の素材を組み合わせたショートケーキ。その味わいを求めて、遠方からやってくるファンも多い。京都での修業時代、茶の湯など日本の伝統文化に心惹かれた小林さん。イートインスペースは躙(にじ)り口※を思わせ、座席からは四季折々の絵画のような自然の風景が眺められる。
可能な限り地元の素材を使ったお菓子づくりに取り組む小林さんは、「これからの時期はBASE101%さんのイチゴを使ったケーキがおすすめ」と話す。冬の西粟倉村には、この時期ならではのお楽しみが待っている。
※躙り口...茶屋の出入り口

外観に焼杉を施し、イートインスペースは茶室風のしつらえ。和モダンを体現した空間でいただくハンドドリップのコーヒーや香り豊かな抹茶など、ドリンクにもこだわりあり
外観に焼杉を施し、イートインスペースは茶室風のしつらえ。和モダンを体現した空間でいただくハンドドリップのコーヒーや香り豊かな抹茶など、ドリンクにもこだわりあり
お店のコンセプトは「A PIECE OF CAKE」。「なんてことない」「楽勝だよ」という意味のスラング。ケーキを口にした人へのメッセージなのだそう(使用するフルーツは季節により変更)
お店のコンセプトは「A PIECE OF CAKE」。「なんてことない」「楽勝だよ」という意味のスラング。ケーキを口にした人へのメッセージなのだそう(使用するフルーツは季節により変更)
「僕にとって、村の景色は特別なものではなく、当たり前にあるもの。それが感じられる場所にしたい」と話す小林さん。隣にはともに店を切り盛りする妻の紗希さん
「僕にとって、村の景色は特別なものではなく、当たり前にあるもの。それが感じられる場所にしたい」と話す小林さん。隣にはともに店を切り盛りする妻の紗希さん
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小林さんの冬のケーキづくりに欠かせない、複合施設「BASE101%」で栽培されたイチゴ。「レストランでは自家栽培のイチゴだけではなく、鹿肉やあわくら源流米、村の酪農家の牛乳など地元の食材を味わっていただけます」と寺井紀子店長。経営母体の株式会社エーゼログループは、木材加工や農業を通して、未来の里山づくりに取り組んでいる。併設の木材ショップには、地元産の木材を使った家具や雑貨が並んでおり、ちょっとしたお土産探しにもおすすめだ。
地域資源は、温泉施設にも活かされている。「あわくら温泉元湯」は、間伐材を燃料にした温泉を運営。ローカルベンチャーに取り組む企業が、村の共同浴場だった施設を再生させ、薪で湧かした湯やサウナで入浴&宿泊客を迎えている。やわらかな薪の湯で体の芯から温まり、源泉かけ流しの水風呂に飛び込む温冷交代浴は、一度体験すればやみつきになりそう。湯上がりには薪料理に舌つづみを打ちたい。

低温調理でじっくりと火を通した「森のジビエ鹿肉のロースト丼」はスープバーとサラダ付きで1,390円(ショップの商品例はP18「山森めぐみの おみやげ瀬戸内」)
低温調理でじっくりと火を通した「森のジビエ 鹿肉のロースト丼」はスープバーとサラダ付きで1,390円(ショップの商品例は「せとうちアラカルト 山森めぐみの おみやげ瀬戸内」 参照
「あわくら源流米おむすびランチ」(1,290円)。ピカピカの西粟倉産のお米をおむすびに。シンプルだけど最高に体が喜ぶメニュー(副菜は取材時のもの)
「あわくら源流米おむすびランチ」(1,290円)。ピカピカの西粟倉産のお米をおむすびに。シンプルだけど最高に体が喜ぶメニュー(副菜は取材時のもの)
木の香りに満たされた木材ショップ。おむすび型など、実用性の高いキッチン用品も並ぶ
木の香りに満たされた木材ショップ。おむすび型など、実用性の高いキッチン用品も並ぶ
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薪で沸かしたお湯と掛け流しの源泉(冷泉)の温冷交代浴は、サウナのような整う感覚が得られると評判。卵形のデザインがユニークな貸切サウナスペース、焚き火料理が楽しめる客室など、ローカル・エネルギーである薪をエンタメとして提供している施設だ
薪で沸かしたお湯と掛け流しの源泉(冷泉)の温冷交代浴は、サウナのような整う感覚が得られると評判。卵形のデザインがユニークな貸切サウナスペース、焚き火料理が楽しめる客室など、ローカル・エネルギーである薪をエンタメとして提供している施設だ

薪で沸かしたお湯と掛け流しの源泉(冷泉)の温冷交代浴は、サウナのような整う感覚が得られると評判。卵形のデザインがユニークな貸切サウナスペース、焚き火料理が楽しめる客室など、ローカル・エネルギーである薪をエンタメとして提供している施設だ

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別名は「温泉ゲストハウス」。村民に愛されてきた共同浴場に新たな価値をプラスして、魅力的な施設が生まれた
別名は「温泉ゲストハウス」。村民に愛されてきた共同浴場に新たな価値をプラスして、魅力的な施設が生まれた

にしあわくら小林菓子店

住所/岡山県英田郡西粟倉村影石591-1
TEL/ 0868-75-4115
営業日/10:00〜18:00(17:00L.O.)(商品がなくなり次第閉店)
休業日/水・木曜日
駐車場/あり
Instagram/ にしあわくら小林菓子店

にしあわくら小林菓子店

BASE101%
-NISHIAWAKURA-

住所/岡山県英田郡西粟倉村長尾461-1
TEL/ 090-2466-9378
営業日/10:00〜17:00(16:00L.O.)
休業日/火曜
駐車場/あり
HP/ https://www.base101.shop
Instagram/ BASE 101% -NISHIAWAKURA-

BASE101% -NISHIAWAKURA-

あわくら温泉元湯

住所/岡山県英田郡西粟倉村影石2050
TEL/ 0868-79-2129
営業日/日帰り入浴15:00〜21:30(21:00最終受付)
レストラン17:30〜21:00(20:30L.O.)、
チェックイン14:00〜21:00、チェックアウト〜10:00
休業日/火・水曜、不定休
駐車場/あり
HP/ https://www.awakurayuanyoton.com
Instagram/ あわくら温泉元湯

あわくら温泉元湯
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心と体を癒してくれる村のチルタイム

西粟倉村の天然温泉は、傷を負ったタヌキが湯で身体を癒したことから発見されたと伝わる。「あわくら温泉元湯」と同様に薪で湧かしたお湯を、内風呂や露天で満喫できるのは「湯〜とぴあ黄金泉」。露天風呂の気持ちよさは圧巻で、冬の雪見風呂もおつなものだ。
「100年の森のホテル 栞」は、森のなかで過ごしているかのような居心地に満たされた宿。西粟倉村の杉や檜(ひのき)、自然素材の漆喰を使ったヴィラやメゾネットにステイできる。ひとり旅に嬉しいシングルタイプの部屋もあり、ワーケーションにもぴったり。森の香りに満ちた客室で、暖炉の炎や満点の星空を眺めながら過ごすチルタイムが、日常を忘れさせてくれる。
森の懐に抱かれたキセキの村は、魅力的な施設や人と出会える場所。旅人たちは、また村に帰りたいと願うに違いない。

塩谷川に面した露天風呂は、四季の風情を味わえるのが魅力。冬は雪見露天を楽しめることも
塩谷川に面した露天風呂は、四季の風情を味わえるのが魅力。冬は雪見露天を楽しめることも
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湯〜とぴあ黄金泉

住所/岡山県英田郡西粟倉村影石2072-6
TEL/ 0868-79-2334
営業時間/12:00〜21:00(20:30最終受付)
休業日/火曜(祝日の場合は翌日)
料金/中学生以上800円、小学生600円、小学生未満無料
駐車場/あり
Instagram/ 湯~とぴあ 黄金泉

湯〜とぴあ黄金泉
テラスにはプライベートサウナがあり、薪ストーブの炎でテント内をじんわり温める
テラスにはプライベートサウナがあり、薪ストーブの炎でテント内をじんわり温める
広々としたゲストルーム。別荘感覚で過ごすことができると評判。薪ストーブの温もりに包まれてくつろぎたい
広々としたゲストルーム。別荘感覚で過ごすことができると評判。薪ストーブの温もりに包まれてくつろぎたい
周囲の伸びやかな自然に馴染んだ建物
周囲の伸びやかな自然に馴染んだ建物

100年の森のホテル 栞

住所/岡山県英田郡西粟倉村影石1220
TEL/ 0868-75-3412
営業時間/チェックイン15:00〜 チェックアウト〜10:00
休業日/木曜(祝日の場合は翌日)
駐車場/あり
HP/ https://shiori-nishiawakura.com
Instagram/ 100年の森のホテル 栞

100年の森のホテル 栞
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旅のMEMO

冬は雪景色がお出迎え

西粟倉村は冬季、積雪することも多い。雪道用のタイヤの準備をしておくと安心。この時期ならではの幻想的な情景が楽しみ

冬は雪景色がお出迎え
道の駅に名物あり

道の駅に名物あり

「道の駅 あわくランド」のレストランでは、地元食材を使ったこだわりの料理が味わえる。大山鶏のチキンカツ定食は1,450円

※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。
※本文中、年末年始のお休みは記載していません。

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