豪華絢爛な彩りと具だくさんの味を楽しむ、備前ばらずし。祭りずしの異名を持ち、江戸時代より庶民の祭りのごちそうでした。家族にとどまらず、隣近所や親戚縁者のいる他村とも配り合い、味を競って楽しんだのです。
そのルーツは、五目めしであると言われています。いわゆる「ちらし寿司」とも異なる点は、30種類を超える具材。サワラにアナゴ、エビ、イカ、干瓢に干し椎茸、ごぼう、高野豆腐など、豊富なことしきり。江戸時代に岡山藩主・池田光正が「一汁一菜」の倹約令を推進したことから、これに反発した民によって作られたとの逸話が有名です。
盛り付けるのは、酢でしめた魚以外、生の魚介類は使わないのも特徴です。食べ方も、かつては上の具で一杯やりながら、次にすし飯そのものを、最後に熱いお茶をかけてと、三度楽しんだよう。米も豊富な岡山で、どの家よりも豪華にしよう、どこよりも美味しくしようと切磋琢磨して、華やかなお寿司が生まれ育ったのです。
- 「具材にサトイモが入っていること、ご飯を寝かせる調理工程などから、五目めしがルーツなのは確かだと思います」
と、備前ばらずしを盛り付ける、窪田清一さん