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アートトラベラー

井原市立田中美術館 西の芸術を融合し、日本の近代彫刻を開拓

《試作鏡獅子》1939年・木彫彩色。歌舞伎座に25日間通い続けて六代目尾上菊五郎の舞台を観察し、一瞬のポーズをとらえた。

明治、大正、昭和と3代にわたり創作活動に打ち込み、107歳で大往生するまで日本近代彫刻史に足跡を残した平櫛田中。故郷の岡山県井原市には、その名を冠した井原市立田中美術館があります。

明治に入り西洋化の波が押し寄せると、日本の木彫芸術が少しずつ衰えていきます。そのなかで田中は、木彫の伝統的技術と西洋の写実的表現を融合させ、近代的な木彫の世界を追求。思想家で日本美術の指導者である岡倉天心との出会いにより、精神性の高い作品を生み出しました。また、日本古来の彩色木彫も復興させました。

田中美術館では、本人・遺族からの寄贈や生前に田中が市内の小・中・高校へ寄贈した作品を中心に、田中と関わりの深い日本美術院の作家や平櫛田中賞受賞者の作品を通して、田中の歩みをたどることができます。

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モデルの動きを研究し魂を込めて表現

代表作として一番にあげられるのは《鏡獅子》。歌舞伎役者の六代目尾上菊五郎をモデルに、何度も試作を繰り返し、22年の歳月をかけて完成させたものです。高さ2メートルの大作は国立劇場に展示されていますが、その試作品の数々を見ることができます。一瞬の動きをとらえたポーズからは緊張感や気迫が伝わり、絢爛豪華な彩色に目を奪われます。興味深いのは《鏡獅子試作裸形》。菊五郎が弟子に稽古をつける際、着物の下にある体の動きまで伝えないと小手先の踊りになるという話に感銘し、筋肉の動きまでを写しました。他にも、我が子への愛情があふれる《幼児狗張子》、禅の悟りを表現した《尋牛》など多彩な作品があり、木彫の奥深さに感動します。

2020年12月には建替えのために全館閉館。2023年春のリニューアルオープンまで作品を見ることはできませんから、この機会に田中の世界に触れてみませんか。

DATA

井原市立田中美術館

住所/岡山県井原市井原町315
TEL/0866-62-8787
開館時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜日(祝日の場合はその翌日)
12月28日~1月4日、展示替え期間
料金/一般:400円
65歳以上・高校生以下:無料
※受付で年齢の分かる証明書(シルバーカード・運転免許証等)をご提示ください。
※特別展は別に定めます。

玄関には金色の岡倉天心像が立つ。

MAP

イベント情報

開館50周年記念特別展
「没後40年平櫛田中 美の軌跡」

2019年9月20日(金)~11月10日(日)
2019年は平櫛田中の没後40年、井原市立田中美術館の開館50周年にあたります。これを記念した特別展を開催。所蔵作品をはじめ、国内にある代表的な作品約80点を一堂に集め、平櫛田中が追求した美の軌跡をたどります。

《幼児狗張子》1911年・木彫。我が子の愛らしい姿を彫刻にした。

瀬戸内国際芸術祭とあわせて巡ろう
せとうち美術館ネットワーク
スタンプラリー

実施中~2020年3月31日

本四高速道路が、瀬戸内の美術館・博物館と連携し、瀬戸内のアートの魅力を発信する「せとうち美術館ネットワーク」。右の冊子についている割引券を使って、72の美術館・博物館を巡ると、スタンプの数に応じて賞品が当たります。また、3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」が開催される今年は、期間限定で「瀬戸芸コラボ賞」を新設(応募期限11月30日まで)。せとうち美術館ネットワーク施設と芸術祭の両方を楽しめるスタンプラリーになりました。芸術の秋は瀬戸内アートへお出かけしましょう。
冊子は、ネットワーク施設と本四高速道路SA・PAで配布しています。
https://www.jb-honshi.co.jp/museum/

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