- 《試作鏡獅子》1939年・木彫彩色。歌舞伎座に25日間通い続けて六代目尾上菊五郎の舞台を観察し、一瞬のポーズをとらえた。
明治、大正、昭和と3代にわたり創作活動に打ち込み、107歳で大往生するまで日本近代彫刻史に足跡を残した平櫛田中。故郷の岡山県井原市には、その名を冠した井原市立田中美術館があります。
明治に入り西洋化の波が押し寄せると、日本の木彫芸術が少しずつ衰えていきます。そのなかで田中は、木彫の伝統的技術と西洋の写実的表現を融合させ、近代的な木彫の世界を追求。思想家で日本美術の指導者である岡倉天心との出会いにより、精神性の高い作品を生み出しました。また、日本古来の彩色木彫も復興させました。
田中美術館では、本人・遺族からの寄贈や生前に田中が市内の小・中・高校へ寄贈した作品を中心に、田中と関わりの深い日本美術院の作家や平櫛田中賞受賞者の作品を通して、田中の歩みをたどることができます。