
3号車「秋彩(あきみのり)の章」の車内は、紅葉を思わせる和モダンな古民家風。
列車の扉が閉まった瞬間から、日常とは違う時間が始まる。今回の旅の目的はこの列車で過ごす時間。JR四国「四国まんなか千年ものがたり」は、香川県の多度津駅と徳島県の大歩危駅を結ぶ観光列車で、四国のちょうど〝まんなか〟あたりを走る。お弁当を持って野や山に出かける遊山のように、車窓に流れる景色を眺め、一流レストランの美食を味わいながら優雅な遊山を満喫できる。
乗車したのは、多度津駅から大歩危駅へ向かう「そらの郷紀行」。善通寺やこんぴらさんのある歴史ある街を通り、人里離れた秘境や吉野川沿いを走る。左右どちらの眺望も堪能できるように座席が配置され、木を基調に四季をイメージしてカラーリングされた車内が温もりあって心地いい。
ゆっくり走り出した列車は最初から見どころいっぱいだ。手作りの沿線マップや車内アナウンスでずっと楽しませてくれて、絶景ポイントにさしかかると速度を落として走行してくれる。トンネルも多いがその間は照明でぐっと大人の雰囲気になり安らぐ。落ち着いた頃に料理が運ばれるのもいい。その場でオーダーできるドリンクやスイーツもあり、アテンダントさんが地元の生産者やお店に交渉したこだわりのチョイスだ。「この旅を心ゆくまで楽しんでほしい」というおもてなしの心がそこかしこに感じられ、幸せな気分になる。
いつのまにか彫刻のような渓谷が広がる小歩危峡、大歩危峡が見えてきた。終着駅の大歩危駅に到着すると、地域の人が盛大に歓迎してくれている。「四国まんなか千年ものがたり」に乗っていると、沿線各地で地域の人や駅員さんたちが歓迎し、お見送りをしてくれる。90歳のおばあちゃんが家の中から旗を振ってくれたり、畑仕事の手を止め振ってくれたり、みんな列車の時間を調べて楽しみにしてくれているそうだ。約2時間半の旅はあっという間で、心地よい余韻が残った。
列車の中から見た大歩危峡の美しさが忘れられない。そそり立つ青白い岩壁、エメラルドグリーンの清流…。もっと近くで見たい。
大歩危駅から大歩危峡観光遊覧船の乗り場まで路線バスに乗った。たった5分で到着だ。大歩危・小歩危は「大股で歩いても、小股で歩いても危ない」という説に由来して名付けられたという。2億年の時をかけて創り出された大渓谷は、船で間近に見ると一層迫力がある。奇岩・巨岩が続き、そそり立つ岩は彫刻のように美しい。
険しい山々や渓谷に囲まれ、危険な場所も多いこのあたりでは、厳しい自然から身を守り、自然の尊さを伝えるために妖怪伝承が今も語り継がれている。大歩危駅で「児啼爺(こなきじじい)」が出迎えてくれたのはそういうわけか。遊覧船乗り場の近くには、妖怪像が立ち並ぶ妖怪めぐりコースもある。ちょっとだけ歩いてみよう。
住所/徳島県三好市山城町西宇1520
TEL/0883-84-1211
時間/9:00~17:00(最終出航時間16:30)
定休日/無休(増水、強風、暴風雨など運航に支障をきたす場合は欠航)
乗船料/大人1,200円 小人600円
四国まんなか千年ものがたり「そらの郷紀行」を利用する際は、JR四国の駐車場サービス「車deトレイン」の利用がおすすめ。事前の申込で、多度津駅、善通寺駅、琴平駅の専用駐車場を無料で利用できます。
電話でお申し込みの場合は、当日ご利用駅で申込用紙の記入と、乗車券類の確認を行いますので、発車時刻よりお早めにお越しください。
四国内の駅のみどりの窓口、ワープ支店、駅ワーププラザまたは主な旅行会社で「事前にお申し込み」ください。電話でもお申し込みできます。※満車などでご利用いただけない場合がありますので、予めご了承ください。
ご利用駅発着の鉄道利用往復タイプの乗車券類を「お一人様一定額以上」お買い上げのお客様が対象になります。(特別企画乗車券および鉄道利用型の旅行商品を含みます。片道乗車券、定期乗車券、快てーき、団体乗車券等は対象外です)