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情報誌「瀬戸マーレ」

秋の讃岐路を、歩き遍路で巡りましょう

 

車で巡拝される方が多くなりましたが、札所までの町並みやのどかな田園風景を楽しみながら歩くのも良いものです。そこで、1日でゆっくり歩いて巡れるコースをご紹介します。71番弥谷寺から75番善通寺まで、10kmほどの道のりです。道路は平坦で整備されていますが、途中、少し険しい参詣道や古い遍路道などもあり、歩き遍路ならではの楽しさや厳しさを少しだけ実感することができる順路です。

弥谷寺は古来、霊山として信仰されてきた弥谷山の深い森の中にあります。石段の続く参詣道は少し大変ですが、途中、修験者が岩肌に刻んだ磨崖仏や霊水の流れる水場などがあり、静かで厳かな霊気を感じることができるでしょう。お参りを終えたら竹林を抜けて行く曼荼羅寺への遍路道を進みます。古い雑木林や竹林の中を歩いていくと、所々に古い道標などもあり、何百年もの間、お遍路さんがそれぞれの願いや祈りを胸に、この道を歩いたことが偲ばれます。

札所近くの民家やお店で「お接待所」と書かれた所があり、遍路小屋という休憩所などもあります。こういう所で地元の方や同じ歩き遍路の方たちとお話をしたり、情報交換をすることができるのも、歩き遍路でなければ味わえない貴重な経験。1ヶ寺でも2ヶ寺でも、歩いて巡拝されると、お遍路の魅力がより深く分かっていただけるはずです。

清水屋ところてん
竹林の道
弥谷寺から曼荼羅寺に向かう遍路道。竹林をわたる風が心地良い。この道は比較的分かりやすく、歩きやすいが、他所には、整備されていない道や天候により荒れた箇所があったりするので、地図にない山道には入らないようにしましょう。
お参りの様子
 
出釋迦寺(しゅっしゃかじ)
出釋迦寺(しゅっしゃかじ) (捨身ヶ嶽禅定)
弘法大師が断崖から身を投げ、お釈迦様に救われたという故事から、捨身ヶ嶽禅定と呼ばれる。岩山の上に行場もあり、ここが出釋迦寺の札所だった。いまは奥之院。

子授け地蔵は出釋迦寺山門前にある
俳句茶屋 八栗山ケーブルカー 善通寺御影堂
戒壇めぐりでは、コンピューターで復元された弘法大師の声を聴くことができる。
俳句茶屋
弥谷寺参道にある名物茶屋。店内の至る所に、お遍路さんが書き残した俳句の短冊や色紙、写真が貼りめぐらされている。44年間お遍路を接待してきた三代目店主の大野さん(中央写真右)と、従弟の土井さん(中央写真左)が切り盛りしている。英語やドイツ語の俳句もたくさん貼られている。仁王門脇の駐車場まで車で上がってしまうと、このお店には気づかない。歩き遍路だから経験できる、温かいふれあいがある。
住所/香川県三豊市三野町大見6059-1、Tel/0875-72-4649、営業時間/8:00頃~17: 00頃、定休/不定休
大師うどん きむら
善通寺駐車場の横で30年前から営業している、お遍路さんに人気のうどん店。毎日、朝から足で踏んで、その日の麺はその日に打つ。頑固なまでに昔通りのやり方を守っているから、麺が適度にコシがあって美味しいと評判だ。値段も、釜あげうどん小260円、きつねうどん小330円と安い。
住所/香川県善通寺市善通寺町1059-3、Tel/0877-62-5610、営業時間/10:30~16:00、定休/水曜日・第2木曜日
今回巡った札所
71番弥谷寺
71番弥谷寺(いやだにじ)
聖武天皇の勅願により、行基菩薩が創建と伝える。弥谷山は、古来から霊山として信仰を集めており、各地から多くの修験者や僧侶が修学・修業に訪れていた。
本尊:千手観世音菩薩
72番曼荼羅寺
72番曼荼羅寺(まんだらじ)
推古4(596)年、讃岐の領主佐伯氏の氏寺・世坂寺として創建。弘法大師が唐から持ち帰った金剛界と胎蔵界の曼荼羅を安置して、曼荼羅寺と改号した。
本尊:大日如来
73番出釋迦寺
73番出釋迦寺(しゅっしゃかじ)
弘法大師が虚空蔵菩薩を刻んで安置し、堂宇を建てた「捨身ヶ嶽禅定」は、本堂横の遥拝所から見上げて、お参りすることでもご利益が授かるという。
本尊:釋迦如来
74番甲山寺
74番甲山寺(こうやまじ)
弘法大師が、満濃池の修復工事完成と安全を祈願して刻んだ薬師如来像を、本尊として安置し建立した。大師堂横の岩窟に、大師作の毘沙門天像を祀る。
本尊:薬師如来
75番善通寺
75番善通寺(ぜんつうじ)
大同2(807)年創建。弘法大師が御父の名「善通(よしみち)」をとって善通寺と号した。境内の美しい五重塔は、善通寺のシンボルとして親しまれている。
本尊:薬師如来
 
秋の讃岐路を、歩き遍路で巡りましょう
◆歩き遍路で気をつけたいこと
①無理のない計画
日頃の散歩などを利用して自分の歩きの速度を計り、時速を算出しましょう。札所間の距離を割って所要時間を出し、1日約30kmを目安に日程を立て宿を探します。休憩、お参り、納経など寺での所要時間は30分を目安に。「全部歩く」という事にこだわらず、「3時間以上歩く所は交通機関を利用する」など自分なりのルールを決めれば無理なく進められます。
②宿
札所の宿坊や最寄の「遍路宿」と呼ばれる民宿を利用します(※料金は要確認)。お接待の一つとして自宅にお遍路さんを招き、1泊させてくれる「善根宿(ぜんこんやど)」やお寺の通夜堂を借りて泊まることもできます。当日の昼頃、遅くとも15時までには宿の予約を入れましょう。
③地図
遍路道には立て札や道案内シールがありますが、やはり地図は必要です。「へんろ道保存協力会」発行の地図には宿や休憩所の詳細があり便利です。また、購入代金の一部が遍路道の保全にあてられるのも嬉しいですね。
④遍路道
10分以上歩いても、立て札や道しるべがない場合は間違っていると判断できます。引き返して地図で確認し、迷ったら人に尋ねましょう。道を尋ねるのも修行のひとつです。
⑤トイレ
札所に到着したら必ず行くように習慣付けましょう。「NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク」が、お遍路さんに気軽にトイレを貸してくれる所の表示として「おもてなしステーション」のステッカーを貼っているので参考に。
⑥靴
「歩き遍路は靴選びで決まる」と言っても過言ではありません。浅くて軽いスニーカータイプのトレッキングシューズが良いでしょう。防水加工された靴に、厚手の5本指靴下を履くことをおすすめします(マメ予防)
⑦雨具
1ヶ月以上の長い期間歩く場合、雨や嵐にあうことも。リュック内の着替えや納経帳が濡れては一大事。リュックの上から被れるポンチョタイプのレインコートを持参しましょう。
福田 恵峰(けいほう)さん 福田 恵峰(けいほう)さん
神戸市在住。会社勤めをしながら週末だけの札所めぐりを続けて、現在までに20回以上巡拝。そのほとんどが歩き遍路である。歩くたびに新しい出会いがあり、新しい自分を発見すると言う。四国八十八ヶ所霊場会公認先達。NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク、女性お遍路相談員。www.omotenashi88.net

〈公認先達〉四国八十八ヶ所霊場巡拝を重ね、弘法大師の教えに帰依し、新しく巡拝する人たちにお遍路の心得などを指導し、手本となることができると認められた人。四国八十八ヶ所霊場会が審査、認定している。
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