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せとうち島めぐり

大崎下島おおさきしもじま

広島県呉市

歴史の舞台でいにしえの物語と出会う

国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている大崎下島の御手洗地区は、地勢的に「潮待ち」や「風待ち」に適した天然の良港で、寛文6(1666)年に広島藩が町割を行って造られた町です。

その後、北前船の西廻り航路が整備されると、御手洗は千石船といった大型の船が寄港する中継地の一つとなり、人が増え、文物が集まって、文化が育っていきました。さらに数度にわたり埋め立てが行われ、商家や茶屋(遊廓)、神社仏閣も建てられて、華やかな港町として発展。

往時の姿をとどめた千砂子波止は、当時最高の土木技術が用いられ、中国無双と称えられたほど。当時灯台の役目を果たしてきた高燈籠は、長い歴史を見守ってきた存在です。情緒的な石積みの波止で、優しい潮風や潮騒を感じながらのんびりと過ごすのもおすすめ。

歴史好きならば、見逃せないのはかつて豪商だった金子家が建てた「旧金子家住宅」。ここで、幕末に広島藩と長州藩が倒幕の軍議を行い、京都への出兵計画とされる軍事協定「御手洗条約」が締結されました。歴史の歯車が動き出す舞台となった場所です。旧金子家住宅の「茶室」は、文政6(1823)年に京都で造られて、船で御手洗に運ばれたもので、平成31年4月から公開しています。

現在、江戸から昭和初期までの各時代の建物の一部がカフェやゲストハウス、資料館等として利用され、皆さんが楽しめるようになっています。

御手洗へは、とびしま海道を車で移動すると便利ですが、車がない人は、瀬戸内シーラインの「瀬戸内しまたびライン」を利用してみては。SEA SPICA(シースピカ)という「グッドデザイン賞」を受賞したオシャレなクルーザーも魅力で、三原港から瀬戸田(生口島)を経由して、大久野島、御手洗を訪れる〝西向きコース〟を運航しています。

今年の夏は、多島景観を楽しみながら、歴史的建造物に出会う旅はいかがでしょう?

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江戸時代から昭和初期にかけて建てられた歴史的な建造物が現存する御手洗
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島へのアクセスは…車で、広島や呉からとびしま海道で。今治港や竹原港からカーフェリーでも。

トリセツ

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天満神社
伝承によれば、神功皇后が三韓征伐に赴く際にこの地に立ち寄り、「本川の井戸」で手を洗ったことから「御手洗」と地名が付いたそう。現在は、平安時代に菅原道真が太宰府へ流される途中で、この井戸で手を洗ったという伝承が主流。そこで、菅原道真を御祭神とする天満宮が建立されたとか。春は、「天満桜」と親しまれる桜が咲き乱れます。
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潮待ち館
御手洗のメインストリートとされる常盤町通りにある潮待ち館。大崎下島産の柑橘を使ったジャムやシロップ、オリジナルの雑貨類等が販売されているほか、昭和レトロな内装の喫茶スペースで休憩も可能。島の柑橘を使った喫茶メニューでホッと一息してみては。
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みかんメッセージ館
御手洗地区の隣にある大長地区の「みかんメッセージ館」もおすすめ。かつて、「耕して天に至る」と言われるほど、島中にみかんの段々畑が広がっていたとか。先人達の努力と情熱が伝わる展示パネルや昭和40年頃の大長地区を再現したジオラマ模型は見応えあり。

※店舗営業情報等についてはHP等よりご確認ください。

小林 希さん

取材・写真・文 小林 希さん

旅作家・元編集者。著書に『週末島旅』(幻冬舎)や『週末海外』『大人のアクティビティ!』(ワニブックス)など。2014年に広島(香川県)で島の有志と『島プロジェクト』を立ち上げ「ゲストハウスひるねこ」をオープン。2019年に(一社)日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。産経新聞などで連載中。

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