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情報誌「瀬戸マーレ」

地元通と歩く瀬戸内 【瀬戸大橋エリア】岡山のリキュール酒

フルーツ大国・岡山で地元産を生かした酒造り

岡山は、温暖な気候と肥沃な大地を誇り、酒文化も盛んな地域です。
近年では「フルーツリキュール」を手がける酒造メーカーが増えてきました。

酒文化と果物が盛んな岡山
新しいリキュール造りへ

岡山では、古来より稲作が栄え、「吉備の酒」と万葉集に詠われるほど、酒造りも盛んに行われてきました。
肥沃な大地と、「晴れの国・岡山」と言われる、雨量が少なく日照時間の長い、温暖な瀬戸内気候。

これらの条件を生かして、明治維新後に先人たちの努力により、白桃・マスカットに梨など、「フルーツ王国」としての名も築き上げるほど、果物の栽培が盛んになりました。

そんな岡山にある酒造メーカーでは、地元産の果物を用いた「フルーツリキュール」に注目。自社の酒から造る「和リキュール」として、新しい試みに取り組んでいます。

(写真左)マスクメロン(写真右上)清水白桃(写真右下)梨
(写真左)岡山で有名な足守マスクメロン
(写真右上)外は白く、中はピンクの清水白桃。地元赤磐産で、やわらかな甘い果肉
(写真右下)種類豊富に作られる梨

日本酒と地元産果実で造る室町酒造の試み

「日本酒をもっと広めたい、その思いがきっかけです」。そう語るのは、創業元禄元年の室町酒造・代表取締役社長の花房満さん。自社の日本酒に、地元赤磐産の青梅「古城梅」を漬け込んで、「黄金色に輝く梅酒」リキュールが出来上がりました。
この地元の梅は、「皮が薄くて酸味があり、香りが華やか。日本酒との相性が良いです」。次ぎに、地元でしか獲れない「清水白桃」をリキュールにできないかと試みましたが、苦戦。「農業試験場の先生など、専門家の元へ何度も足を運びました」と花房さん。
素材の工夫、酒の配合率、漬け込み期間など、さまざまな試行錯誤を繰り返して、完成へと至りました。さらに「それまでは取り除いていた果肉を、試しに入れてみると、これが好評で」。造るのは1年に1度のみ。毎秋には売り切れるほどの人気商品となったのです。

酒造りについて熱く語る花房さん
桃の木に囲まれた室町酒蔵。酒造りについて熱く語る花房さん

上質の酒で醸しだされる7種類のフルーツリキュール

室町酒造では、現在7種類のリキュールを手がけています。
自社焼酎に漬けたピオーネ酒や、純米酒に漬け込むゆず酒ほか、唐辛子入り梅酒も。「岡山県奥津産姫トウガラシをブレンド。飲み始めは梅酒が香り、後口にぐっと辛みが映える味は、外国の人にも『チリペッパーのお酒だね!』と評判がいいんです」。
2009年秋、新たに黄金桃を用いたリキュールも発売されました。

室町酒造では、幻の酒米と言われる雄町米を用いています。旨みがあり、食材を丸く包み込むのが特徴で、「雄町米は、山田錦や五百万石などの元と言える酒米です」。150年前に発見されたこのお米。嘉永4年(1859年)に、雄町の農夫が、大山寺参拝の帰路に見つけた稲を、地元に持ち帰って育てたことに始まります。「全国の3分の2の酒米は、雄町米を元に掛け合わせたものと言えますよ」。化学肥料を嫌い、手もかかることから、農業の近代化に伴って収穫量も減っていました。幻といわれる所以です。「手間がかかっても、地元産のうまい酒を造ることにこだわりたい」と、花房さん。深みのあるやわらかな水、雄町の冷泉と合わさって、上質な酒が醸し出されています。

こだわりだけを詰め込んだリキュール
こだわりだけを詰め込んだリキュール(6本セットで7,350円)
東京ビッグサイト展示場で行われた、「第6回グルメ&ダイニングスタイルショー」のビバレッジ部門で大賞受賞
室町酒造株式会社

世界でも日本の酒づくりが評価されています。


住所/岡山県赤磐市西中1342の1
TEL/086(955)0029

世界でも日本の酒づくりが評価されています

まさに「食べるお酒」ヨイキゲンの梨リキュール

岡山市から西、総社市までの一帯は、数多くの古墳や史跡が残り、観光客も賑わう地域です。

この総社市清音に蔵を構えるヨイキゲン(株)。2008年には、地元・矢掛町産の梨を用いたリキュールを開発しました。シャリシャリした梨の食感も珍しく、「食べるお酒として、果肉も味わえるようになっています」と話すのは、同社代表取締役の渡邊信行さん。
続いて、リキュール第2弾の総社市産・白桃リキュールが2009年に発売されました。
「白桃は、飲む果物をイメージ。どちらも果肉をふんだんに使っています」。女性を中心に、好評を得ています。

梨リキュールは自社の米焼酎で漬けて、甘さすっきり
梨リキュールは自社の米焼酎で漬けて、甘さすっきり

菓子とのコラボレーションや酒蔵文化祭も開催

ヨイキゲンでは、製菓会社との提携商品も開発。白桃パウンドケーキと白桃リキュールの詰め合わせ商品を生み出すほか、地元のイベントにも積極的に参加しています。渡邊さんは、「昨年から県内酒蔵持ち回りで、酒蔵文化祭を秋に開催しています。蔵それぞれの酒を持ち寄り、試飲や販売を行いました。バーテンダー協会の方に、日本酒カクテルを作ってもらったこともありますよ」。
地酒と郷土料理を楽しむ会を催すなど、「岡山県の酒文化を盛り上げていきたい」と、熱く語ります。

「老舗おかし屋さんと酒工房のコラボレーション」3,700円
「老舗おかし屋さんと酒工房のコラボレーション」3,700円。
白桃パウンドケーキに白桃リキュールをかけてもいただけます
ヨイキゲン株式会社

2008年に発売された梨リキュールを持つ、渡邊さん(写真左)。
ヨイキゲンで行われた酒蔵文化祭。
地元の人たちにいろいろな酒の楽しみ方を発信する機会になっています。


住所/岡山県総社市清音上中島372-1
TEL/0866(94)0011
※蔵見学も事前予約で受け付けています

(写真左)渡邊さん(写真右)ヨイキゲンで行われた酒蔵文化祭

甘く濃厚なメロンが香る
足守マスクメロンリキュール

岡山で有名な、足守マスクメロン。1本の苗から1個の果実だけを収穫する、ぜいたくなフルーツの一つです。
この足守メロンを用いたリキュールを作っているのは、板野酒造。岡山市内の北西に位置する足守で、江戸時代から続く酒蔵の分家として、明治3年に創業しました。
自家製大吟醸をブレンドする、メロンリキュール作りにあたっては、「マスクメロンの香りを残すことに苦心しました。食用と同じ、ランクの高いメロンを用いるので、生産量も限られています」と、同蔵の板野桂子さん。弟で備中杜氏の板野文伸さんと共に、昔ながらの味を懸命に守りつつ、新しい試みにチャレンジしています。

江戸時代から続く蔵を背に、足守マスクメロンリキュールを手にする板野さん
江戸時代から続く蔵を背に、足守マスクメロンリキュールを手にする板野さん
株式会社板野酒造本店

とろけるメロンとお酒の出合い、足守マスクメロンリキュール(写真左)。


住所/岡山県岡山市北区大井2272
TEL/086(295)0025
※蔵見学については、事前予約で可能です
(日曜を除く)

(写真左)足守マスクメロンリキュール(写真右)株式会社板野酒造本店

遠方からも購入に訪れる
足守メロン祭り

足守では、毎年「メロン祭り」も開催され、「メロンを求めて、周辺から多くの人が訪れていますよ」と板野さん。イベントも催されて、蔵見学に訪れる人の姿もあります。

蔵でくまれる井戸水は、「青く色づく天然水」で、大きな桶に水を溜めると、うっすらと青い色が浮かびます。蔵の横に流れる足守川では、時折、カワセミが姿を現すこともあり、美しい自然が残っています。

岡山の酒造組合ではリキュール研究会を行い、今後も新商品が続く予定です。

毎秋に行われるメロン祭りの風景
毎秋に行われるメロン祭りの風景。
イベントや、足守メロンの購入目的でたくさんの人が訪れます
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見どころ

●吉井郷土資料館

旧仁掘小学校の木造校舎を移築した資料館、国登録有形文化財です。小枝2号噴出土陶棺などの文化財、昔の小学校に関するものや、生活道具などを展示。


住所/岡山県赤磐市周匝136
TEL/086(954)1379(吉井公民館)
開館時間/午前9時~午後5時 休み/土日祝・年末年始


吉井郷土資料館
●鬼ノ城(きのじょう)

標高約400mの鬼城山に、高さ6mもの土塁や石塁が約2.8㎞にわたりめぐらされた古代朝鮮式山城の遺跡。
桃太郎伝説で有名な吉備津彦命の温羅退治伝説でも、名を知られています。


住所/岡山県総社市黒尾・奥坂



鬼ノ城(きのじょう)
●近水園(おみずえん)

旧足守藩主木下家の庭園。
足守川の水を引く池泉回遊式庭園。この地ゆかりの歌人・木下利玄の歌碑や、マリア灯篭もあります。


住所/岡山県岡山市北区足守803
TEL/086(295)0981


近水園(おみずえん)
●備中国分寺

田園風景にそびえる五重塔は国の重要文化財。
奈良時代、聖武天皇の勅願で諸国に建てられた国分寺の一つで、江戸時代に再建されています。


住所/岡山県総社市上林1046
TEL/0866(94)3155(国分寺観光案内所)


備中国分寺
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