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情報誌「瀬戸マーレ」

地元通と歩く瀬戸内 【しまなみ海道エリア】西条の美酒鍋

酒蔵から生まれた美酒鍋 蔵人が伝えた名物料理を堪能

東広島市西条には、情緒ある酒蔵が点在する美しい景観が残っています。
その酒蔵で働く蔵人たちが伝えた「美酒鍋(びしょなべ)」の魅力に迫ります。

赤い煙突がシンボルの酒蔵の町で蔵人たちが作りだした美酒鍋

広島市から東へ約30㎞にある町、西条。赤レンガの煙突と、白壁、なまこ壁といった、酒蔵特有の風景が美しい街並みです。
広島は、灘、伏見と並ぶ酒どころ。中でも西条は、江戸時代には宿場町として栄え、大正時代に醸造蔵が出来始めました。その後、次々と酒蔵が建ち、現在では8つの酒蔵が残っています。

この西条で、知られているのが、名物料理「美酒鍋」。酒蔵で働く蔵人が伝えてきたものです。
賀茂鶴酒造の野代信幸さんは、「男たちの料理ですね。酒造りの繁忙期には、24時間張り付いて働かなければなりません。冬の初めから3月まで、手を抜けない厳しい状態のなか、きき酒に影響が出ないように、食材を塩・こしょうで味付けし、酒で煮ています」と話します。

鳥の内臓や、野菜などを入れる美酒鍋は、「賀茂鶴の初代営業の石川和知という人物が、蔵の中に入って、職人たちとより良いコミュニケーションをとるために作ったものだと、聞いています」。
手早くスタミナのつく料理としてだけでなく、蔵人たちの思いが詰まった名物料理と言えそうです。

酒蔵の並ぶ、西条の街
酒蔵の並ぶ、西条の街

塩・こしょうと酒で味付ける
おいしい美酒鍋の作り方

気になる美酒鍋の作り方は、シンプルです。
和洋食レストラン佛蘭西屋の和食マネージャー蔵本晴司さんは、「鍋を火にかけて、鶏肉・砂肝・豚肉を炒め、塩・こしょうとニンニクに、肉がかぶるくらいの酒を入れます」。同店ではニンニクは乾燥したものを使っていますが、家庭では酒量と共に好みで入れてよいようです。
「次に、シイタケに白菜、ニンジン、タマネギ、こんにゃく、白ネギ、ピーマンの順に入れ、厚揚げも加えて、再び酒を入れ、野菜の水気が少なくなるまで炒め煮します」。
最後に塩・こしょうで味を整えて出来上がり。
水分をしっかり飛ばすのが特徴の同店では「そのままでも召し上がっていただけますが、ほぐした生卵をつけてもおいしいです」。蔵出し原酒や、店オリジナルの日本酒と一緒に、旅の思い出を彩ってくれます。

西条名物の美酒鍋
西条名物の美酒鍋
佛蘭西屋

京都町屋をイメージした佛蘭西屋。
1階は洋食、2階が和食。


住所/広島県東広島市西条本町9-11
TEL/082(422)8008
営業時間/
午前11時30分~午後2時30分、5時~10時
休み/水曜、第一月曜
※美酒鍋は一人前1,800円で、コースもあり。

京都町屋をイメージした佛蘭西屋。1階は洋食、2階が和食

酒蔵通りを散策
試飲や酒蔵グッズも

「日本酒の銘柄に多く使われる字は、一番が山、二番が鶴、次いで正、宗、菊と続きます」。楽しいエピソードと共に、酒蔵通りを案内してくれるのは、ボランティアガイドの吉田義和さん。西条では、毎月10日に「酒蔵のまち てくてくガイド」を行っています。

8つの酒蔵を歩いて回れるのも、西条の魅力。各酒蔵の門前では、仕込み水の「井戸」を一般に開放し、地元の人から観光客まで、自由に水を汲むことができます。

賀茂鶴酒造では、「見学室」を設けて、手造りの酒造り用具や酒米を展示。10銘柄もの飲み比べができます。

亀齢酒造では、酒蔵を改造した「万年亀舎(まねきや)」で、酒蔵グッズも販売しています。手造りの酒粕石けんや清酒を練り込んだ手延べうどん、酒粕を使った豆菓子、前掛けなどを販売。蔵それぞれで展示に趣向が凝らされています。また、賀茂泉酒造の酒喫茶「酒泉館」は、レトロな雰囲気の中で酒フルーツケーキや酒ゼリーなどがいただけ、ゆっくりと歩いて見て回れば、酒文化通になれるかもしれません。

県の醸造試験場だった施設を改造した「酒泉館」

県の醸造試験場だった施設を改造した「酒泉館」


酒泉館(賀茂泉酒造)

住所/東広島市西条上市2-4
TEL/082(423)2021
営業時間/
土・日曜と毎月4日・10日のみの午前10時~午後5時

賀茂鶴見学室(賀茂鶴酒造)

賀茂鶴見学室(賀茂鶴酒造)

試飲のできる賀茂鶴酒造の見学室。


住所/東広島市西条本町4-31
TEL/082(422)2121代表
営業時間/午前8時30分~午後5時
不定休

万年亀舎(亀齢酒造)

万年亀舎(亀齢酒造)

亀齢酒造。グッズを販売する万年亀舎はこの中に。


住所/東広島市西条本町8-18
TEL/082(422)2171
営業時間/平日=午前9時30分~午後4時、
土日祝=午前10時30分~午後4時
不定休

遠方からも駆け付ける
西条の盛大なる酒まつり

西条では、毎年10月の第2日曜とその前日に「酒まつり」が開かれています。広島県を代表する大規模な酒と食の祭典で、1990年から、市民参加型の祭りとして始まりました。
当日は、県内からだけでなく、京阪神からも多数の人が訪れます。酒蔵の開放や利き酒、コンサートやフリーマーケットも開かれて、2008年には24万人もの人が集まりました。

このまつりで人気イベントの一つが、「美酒鍋」。設営テント内に用意された食材を、レシピに従って自分たちで作り、たっぷりと味わうことが出来て、毎年たくさんの人で賑わいます。事前予約もできますが、当日券を求めて並ぶ人が出るほどの盛況ぶりです。

酒まつりで美酒鍋を味わう人たち
酒まつりで美酒鍋を味わう人たち
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見どころ

●御茶屋(本陣)跡

JR西条駅前にあった宿場町が現在の酒蔵通り。ここに江戸時代に大名が泊まったという御茶屋の跡があります。
御門のみが復元され、石垣は江戸期の乱積みと現代の谷積みが並びます。



御茶屋(本陣)跡
 
●鏡山公園

桜の名所。33種の桜があるほか、鏡山城跡は国史跡に指定されており、戦国時代の中世山城跡です。


住所/東広島市西条鏡山2丁目



鏡山公園
 
●元祖樽煎餅(平田屋本舗)

大正時代から続く老舗の菓子店で、東広島市西条名物。
西条の酒樽の焼印が押されています。


住所/東広島市西条本町14-13
TEL/082(422)2400


元祖樽煎餅(平田屋本舗)

地域情報通から

●東広島市観光協会・ボランティアガイドの吉田義和さん

西条の歴史を聞きながら、街を案内してもらえます(事前に要予約・有料)。ただし、繁忙期の2~3月は、蔵見学は外からのみ。

※「酒蔵のまち てくてくガイド」は、毎月10日午前10時~11時受付で随時スタート。3コースあり、所要時間は約1時間30分~2時間。
参加無料。10人以上は要連絡


TEL/082(421)2511
JR西条駅前観光案内所

東広島市観光協会・ボランティアガイドの吉田義和さん
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