西宮から神戸にかけての沿岸部に広がる灘五郷。
この地域で酒造りが盛んになったのは、江戸後期から。六甲山系から流れる伏流水が湧き出た宮水や、優良な酒米があり、背後の山がもたらす気象条件と、丹波杜氏や但馬杜氏らの技によって、全国屈指の酒どころとして発展してきました。今でも全国日本酒出荷量の約3割が、製造されています。
そんな歴史ある灘の地も、1995年1月の阪神淡路大震災で多大なる被害を受けました。灘は御影郷にある(株)神戸酒心館の福寿蔵では、震災で木造酒蔵がすべて倒壊。「タンクも倒れて、ビンづめ工場も全壊しました」と、同社副支配人の湊本雅和さん。寒い冬の朝のこと、仕事を始めていた時刻でした。幸い、当時の杜氏をはじめ、蔵人はすべて無事で、「がれきの中から声が聞こえたときは、泣くほどうれしかったと、聞いてます」
- 製麹室。酒づくりの要となる麹を作っています